賃貸経営シリーズ  <入居者が転落死した賃貸住宅の家主に賠償命令>  |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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賃貸経営シリーズ 

 

 

<入居者が転落死した賃貸住宅の家主に賠償命令>

福岡高等裁判所は、入居者が窓から転落死した賃貸住宅の家主に、約350万円の損害賠償を命じる判決を下した。窓に手すりがないのは瑕疵であり、家主が窓に手すりを設置しなかったのは安全配慮義務違反だと訴える入居者の遺族の主張を認めた。遺族も家主も上告せず、4月4日に判決は確定した。

事故が起こった賃貸住宅は、1973年に完成した木造2階建ての建物だ。
入居者は50歳の女性で、2002年11月、2階で窓の外に洗濯物を干していたとき転落死した。
洗濯物を干すには物干し竿まで身を乗り出す必要があったが、窓に手すりはなかった。
福岡高裁は判決で、窓には民法上の瑕疵があったと認定した。
さらに、家主が入居者の洗濯物の干し方を知りながら手すりを設置しなかったことは、入居者に対する安全配慮義務に違反すると判断した。

その一方で福岡高裁は、入居者にも過失があったことを理由に、家主が支払う損害賠償の金額を請求額の1割に抑えた。
身を乗り出さないと洗濯物を干せなかったそもそもの原因は、竿を受ける金具の不具合だ。にもかかわらず、入居者が金具を修理したり、不具合を家主に訴えたりしなかったことは、転落死事故の発生に大きく影響したと判断した。
家主側は、窓の腰壁の高さが床から約73cmあることを理由に、手すりはなくても窓は安全だと主張していた。

福岡高裁は判決で、建築基準法は窓の腰壁の高さを規定していないものの、建設業界には一般に65~85cmの高さならば安全と見なす考えがあると指摘した。


この考えに基づいて約73cmという高さ自体の危険性は否定したが、窓から日常的に身を乗り出す入居者のためには手すりが必要だったと結論付けた。
05年に福岡地方裁判所小倉支部が下した一審判決は、住宅の完成から30年近く転落事故がなかったことなどを理由に、入居者の遺族の訴えを棄却した。そのため遺族側が控訴していた。