賃貸住宅経営シリーズ<更新>家主が、「建物が古く建替えるので契約更新はしない」と言ってきた |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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賃貸住宅経営シリーズ(賃借人編)


<更新>(4)

(質問)

家主が、「建物が古く建替えるので契約更新はしない」と言ってきた。
まだまだ十分住めると思うのだが、家主の言うとおり退去せざるを得ないのか?

(回答)

まず、家主から、入居者の退去を求める場合、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、正当事由が必要とされています。
従って、家主が通告してきた時期が問題となります。

もし、通告時期が、「契約終了の1年前から6ヶ月前までの間」でなければ、そもそも正当事由の有無に関係なく、契約更新の拒絶そのものが認められなくなります。

通告自体が、適法に行われた場合には、正当事由があるかどうかという判断をすることになりますが、「建物が古く建替える」というのは、一見すると、正当事由に見えるのですが、単に、「古い」というだけでは正当事由とは認められていません。

通常、建物が古くなり、「朽廃(きゅうはい)」とみなされるような場合には、正当事由としてみなされますが、「朽廃(きゅうはい)」という状態は、室内から青空が見えるようなぼろぼろの状態ですので、現代においては、「朽廃(きゅうはい)」に近い建物を貸す家主もないでしょうし、借主もいないと思います。

従って、「朽廃(きゅうはい)」を理由にした正当事由が認められるケースは、ほとんどないと思います。「朽廃(きゅうはい)」までには至らない場合でも、自身による倒壊が非常に強いと判断されるような場合には、正当事由として認められる可能性はあります。

また、まともな生活を送れるようにするためには、大修繕が必要でありながら、大修繕しても、居住用の建物として利用できる期間が短い場合には、大修繕する意味がないため、大修繕が必要になった場合には、正当事由として認められる可能性が高くなります。

そこで、借主が、(大修繕を行わなくても)「まだまだ十分住めると思う」のであれば、家主としての正当事由が認められる可能性は非常に低いと思われます。
それでも、家主が退去を求める場合には、立退き料の支払いが条件となるでしょう。

従って、家主からの「建物が古く建替えるので契約更新はしない」という主張をそのまま受け入れる必要はなく、契約更新することが可能です。
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