民法(債権法)改正 連帯保証人の極度額
2020年4月に施行される民法(債権法)改正によって、建物賃貸借契約の連帯保証人になる場合には、極度額(連帯保証人が支払義務を負う限度額)を書面等で定めなければ、その連帯保証契約は無効になる
Q
賃貸アパートの借主がたばこの不始末によってアパートを全焼させてしまい、借主の保証人がアパートの建て替え費用5000万円の支払いを求められた。保証人に支払い義務はある?
A
今年4月1日以降に結ぶ保証契約では、契約時に極度額(保証の上限額)を定めていない限り、保証契約は無効となる。また、極度額を定めている場合は、その額を上回る部分については支払う必要はない。
民法の改正法では、個人が建物賃貸借契約の連帯保証人になる場合には、極度額(連帯保証人が支払義務を負う限度額)を書面等で定めなければ、その連帯保証契約は無効になるとして、連帯保証人の責任に歯止めをかけました。
この民法の改正法が、今年の4月1日から施行されるため、今、大家さんは、主に次の2点で悩んでいます。
① 極度額をいくらにしたらいいか。
② 今年の4月1日以降に賃貸借契約を更新する場合、連帯保証人の責任について、極度額の定めをしなければならないか。
まず、①ですが、法律上は、特に規定はありません。極端に多額でない限り、いくらとしても良いのですが、あまり大きい金額となると、連帯保証人になろうとする人が尻込みしてしまい、連帯保証人を確保できなくなる恐れがあります。
ネット上の記事などを見ると、賃料の12ヶ月分から24ヶ月分までの間が多いようですが、賃料滞納で契約を解除して明け渡しを求める場合に想定される損害あるいは費用は、おおよそ次のとおりですから、大家さんとしては、賃料の24ヶ月分は確保したいところです。
滞納家賃 4ヶ月分
賃料相当損害金 賃料の12ヶ月分(解除から明け渡し完了までを6ヶ月とした場合)
執行費用 賃料の6ヶ月分
原状回復費用 賃料の2ヶ月分(敷金で賄えない部分)
次に、②ですが、上記の民法の改正法が適用されるのは、令和2年4月1日以降に締結された連帯保証契約ですが、この日以降に、既存の普通建物賃貸借契約が更新される場合、更新前の普通建物賃貸借契約の締結時に締結した連帯保証契約についても、極度額を定める必要があるでしょうか。
この点については、いろいろ意見がありますが、まず、普通建物賃貸借契約が法定更新となった場合は、連帯保証契約について特に新たな合意があるわけではありませんので、新法の適用はありません。
また、普通建物賃貸借契約が合意によって更新された場合でも、改めて連帯保証契約を締結したような場合を除いて、極度額を定める必要はないという意見が多数派です。
(・エコノミスト2020.2.25・三井住友信託銀行から一部引用)
■第三者委員会