消費者契約法 |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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消費者と事業者との間で締結される消費者契約は、契約当事者である消費者と事業者との情報や交渉力が対等ではないことなどから恒常的に発生しています。そこで、消費者が契約を適正に選択できるような環境を整備する必要があるということが、消費者契約法の制定がすすめられた大きな理由です。契約の内容も、契約当事者で協議した上で双方納得の上で定めたものでなく事業者が決めた取引条件で販売されるために、消費者の利益を不当に害する条項が定められる危険があります。
賃借人が、賃貸借契約の締結に当たって、明け渡し時に負担しなければならない自然損耗等による原状回復費用を予想することは困難です。この点において、賃借人は、賃貸借契約締結の意思決定に当たっての十分な情報を有していないといえます。集合住宅の賃貸借において、入居申込者は、賃貸人または管理会社の作成した賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるような交渉力は有していないから、賃貸人の提示する契約条件をすべて承諾して契約を締結するか、あるいは契約しないかのどちらかの選択しかできないことは明らかです。

総合考慮すれば、自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させることは、契約締結に当たっての情報力および交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害するものといえるし、又賃借人に必要な情報が与えられず、自己に不利益であることが認識できないままにされたものであって、消費者契約法10条により無効であると解するのがこれまでの裁判の流れです。つまり、契約での合意は確認ができるけど、不等条項として消費者契約法第10条により否定されているのです。

横浜市港北区の男性〔35歳〕から「契約書には入居期間の長短関わらず、畳の張替え・襖の張替え、クロス全面張替えは必ず行い、金額は大家とこちらで折半負担」との契約書にサインをして入居ましたが、消費者契約法の不等条項及び国土交通省の「ガイドライン」の指摘をしたところ、実費精算での計算方式で清掃代の50,000円の負担額となり残りは返還されました。
このようなトラブルを防ぐ手立てとして、契約時に重要事項説明書若しくは契約書の特約欄に原状回復費用負担は国土交通省「ガイドライン」を準拠する旨の記載要求をすることも方法かもしれません。