「建築主に報酬の考え方を説明できる機会」、重要事項説明の義務化で国交省 |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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■建物検査■


「建築主に報酬の考え方を説明できる機会」、重要事項説明の義務化で国交省


 1128日の改正建築士法の施行まで1カ月を切った。

建築士事務所業務に対する法規制として、施行日から新たに義務付けられるのが、

管理建築士などによる重要事項説明だ。設計・工事監理契約の締結前に、

建築主に対して重要事項について書面を交付して説明することが必須となる。

国土交通省建築指導課の宿本尚吾企画専門官は、


1025日に開かれた建築士会全国大会の講演で、

重要事項の記載など運用の考え方を明らかにした。

 重要事項を説明する建築士は、建築士免許証を提示することが求められる。

改正後の建築士法第24条の7で説明が義務付けられた主な重要事項は、

1)作成する設計図書の種類、(2)工事と設計図書との照合の方法、

3)工事監理の実施の状況に関する報告の方法、(4)従事することになる建築士の氏名、

5)報酬の額および支払いの時期、(6)契約の解除に関する事項――などだ。

 1031日に公布される建築士法施行規則の一部を改正する省令では、

さらに(7)建築士事務所の名称および所在地、(8)建築士事務所の開設者の氏名、

9)設計・工事監理の対象となる建築物の概要、

10)再委託する設計・工事監理の概要――などの項目が追加される。

日本建築士事務所協会連合会など建築関係4団体が、

書面の様式例の作成を進めており、関係省令の公布に併せて公開する予定だ。

 宿本氏は、重要事項説明の義務化について、

「消費者保護の観点があるが、建築士から見ても報酬の考え方を説明できる機会となる」と語った。

建築設計や工事監理の業務報酬基準を定める告示1206号を契約とリンクさせることで、

実効性を持たせようという国交省の意図がある。

宿本氏が明らかにした重要事項の記載の考え方は次のようなものだ。
 
 まずは、報酬の根拠となる業務内容を伝える。設計受託契約の場合、

建築主に納品することになる図書を記載する必要がある。

図書の種類は、告示1206号に記述している成果図書の項目などを参考にしてもよい。

工事監理契約の場合、立ち会い検査、抜き取り検査の別など、

工事と設計図書との照合方法を具体的に記入する。

工事監理終了時の工事監理報告書による報告など、

工事監理の実施状況に関する報告の時期や方法も具体的に記す必要がある。

担当する建築士名は、予定でかまわない。

 報酬額は具体的な金額を記載する。支払い時期の具体的な時期や回数についても記す。

重要事項説明の時点で報酬の額が確定できていない場合、

告示1206号に基づいて算定するなど、目安となる金額を記すように求めた。

その一方で、「未定」「実費」といった、金額の範囲が明らかにならない記載は不適当だとした。

 宿本氏は、「重要事項説明は、あくまでも契約の判断材料として使うものだ。

実際の契約額までは求めていない。変更のたびに説明せよという規定もない。

建築士事務所サイドの主張だと思ってほしい。実質は契約のときに決まる」と語った。



日経アキテクチュア ]10月29日号