呆然としながら、普通の車いすをレンタル。
呆然としながら、車いすを押しながら進みます。
しかし、進む先には数段の階段。どうやら方向をミスった?でも戻る気力もなく階段をさけて進むと、人だかり。
人、ひと、人。
何かと思えば、ドナルドです。
フリーグリーティングってやつですね?
うちは娘が写真を撮られるのを嫌うので、グリーティングにはあまり行きません。さっさと通り過ぎたい。
そして、この瞬間の私はとっっっっっても人間不信。
ドナルドに夢中で、車椅子になど気づいてくれない人たちに、思わず叫びます。
「車椅子通ります!後ろ、車椅子通ります!」

娘は車いすの上で、身を縮めて、小さく小さくなっています。
誰も気づいてくれません、それどころか、ドナルドを良い画角で取りたいのかじりじりと後ろも見ずに、私たちの方へみんな下がってきます。
車椅子に当たっているにもかかわらず、花壇でもぶつかったと思っているのか、気にもしてくれません。
私はさらに叫びます。
「お願い通らせて!車椅子通らせてください!通りたいの!お願いだから避けて!」

ドナルドの方見てるので、誰も気づいてくれません。

とうとう見知らぬ人たちの背中を押し返しましたが、信じられないことに、それでも気づいてもらえないのです。ドナルドに夢中なのにもほどがありすぎです。

車椅子の方へ人の群れがぐいぐいじりじりと下がってきます。

娘はますます身を縮めて、うつむいて、頭を隠しています。泣いているのかもしれません。

私は何もかもが嫌になってきました、なぜ、こんなせせこましいところで、グリーティングなどするのだろう、地球儀の広いところでやってくれればいいのに!ほぼ八つ当たり気味なことまで思うほどでした。

キャストさんに目で訴えてみましたが、キャストさんもドナルドや他のゲストの方を見ていて、こちらに気づいてくれません。

ところが、ただ1人気づいて助けてくれた人がいます。


私たちの進行方向、妨げている人の群れを抱き止めて、ぐいっと道を開けてくれた人がいます。

やっと通り道ができて、私はやっとのことで通り抜けました。
誰が助けてくれたんだろうと思って振り返ると、なんと!

誰あろう、ドナルドです。

白い大きな手が、下がっていく人たちの背中を止めてくれていました。
そして、
「行って、行って」と言わんばかりに、その白い大きな手を振ってくれました。

娘も振り返って、「ドナルドってかっこいい」とつぶやいていました。


ドナルドだけが、こちらを見ていたのです。