私は毎朝悔しい思いをしていた。
毎朝毎朝悔しい小爆発を起こしていた。
というのは・・・。
毎朝同じバスに乗り込むある男の行動にだ!
いつカチ切れてやろうか!!!
と思っていたからだ。
私は毎朝45分に来るバスに乗車するため、大体、40分にはバス停にて並んで待っている。
バスは気まぐれで、大体2,3分遅く最寄りバス停に到着する。
バスはすでに乗車している人がいて、イスは残席2,3席しかない。
分かっているが、万が一を考えて少し気持ち早めに並ぶ。
私のバス停には大体7,8人の同じ顔ぶれが並んでいる。
皆様、朝からお上品に本を読んだり、きちんと整列して並んでおられる。
そして私もその人たちにまぎれてバスを待っている。
静かで素晴らしい。
というか当たり前の光景だ!!!!!
そうだろ!?
道路の端っこをずーっと見ていると、バスの頭が見える。
最終コーナーを曲がって直線距離へ入る。
「あっ。来た来た!」
そう思って、乗り込む準備をする。
バスが見えてからバス停までの直線距離は約30秒だ。
どんどん近づいてくる。
どんどん。
後15秒
14
13
12
11・・・・・
10のカウントが始まったその時、
どこからともなく奴は現れる。
その名も「平川修平」(仮名)28歳。独身。
このくそ餓鬼はバスが止まると同時にピントを合わせたかのように現れる。
物静かで最近小洒落たのか色気づいたか知らんが、黒ぶち眼鏡をかけている。
口数の少なそうな控えめな男に見えるのだが・・・。
この平川。
その面構えとはかけ離れた根性をしている。
この男。
何を思ったか、毎回私の存在を全否定したかのようにバスのドアが空いた瞬間にありえない角度で私を抜き去り乗り込むのだ。
全員を見事に抜かして乗り込み、ちょこんと涼しい顔をして椅子に腰かけている。
そのドヤ顔が異様に腹が立つのだ
この餓鬼!!!!
何をしゃーしゃーと!!!!!
この野郎!!!!
と思いながら毎日悔しい思いをしていた。
しかし毎回おたまはトホホホ・・・。
と思っては諦めて毎日バスに乗り込んでいたのだ。
周りの人達も半ば諦めている。
それに調子を乗った平川は毎回毎回、驚くべきピンポイントで見事な鋭角で切り込みのある先頭打者になり、椅子に座るのだった。
ゆ!!!許せん。
その静かな装いからは想像もつかない自己中心的な行動に私はめちゃくちゃ腹を立てていた。
しかし、私も毎朝顔を合わせる訳だから、余計なことはしたくない。
私は黙っていた。
しかし、ある日、平川に思ってもみないアクシデントが勃発するのである。
それがあの有名な
「平川、しばかれる」事件である。
私はその目撃者となってしまったのだ。
平川はその日も当たり前のように私を抜かしてバスに乗り込もうとしていた。
その日、いつもバス停に並ぶ顔ぶれの中に27歳くらいの女性が紛れ込んでいた。
彼女もまた、とても静かそうな控えめな人に見えた。
おかっぱ頭で、何故か事務服を着ていた。
事務服で通勤する彼女も彼女で相当おもしろいが、
私はそんなことよりも平川が現れるカウントダウンをしていたのだ。
バスが来た。
カウントダウン開始。
15秒
14
13
12
11
10・・・
平川がきた。
今にも口笛を吹きそうな飄々とした表情だった。
張り倒したい表情だぜ。
平川は私の前でいつも乗り込むのだが、その日は何故か私の前にいる事務服の女性の前に乗り込もうとした。
その時だった。
その物静かな女性が
「おい、お前、並べや」
と信じられない罵声を浴びせた。
乗り込む全員が一瞬目を点にした。
平川はイスに座ることに必死で自分が言われていることにも気づいていない。
平川がバスの手すりに手をかけた瞬間、
事務員の女性は手すりにかけた手をはたいて
「お前じゃ。」
と言って平川を突き飛ばしたのであった。
私は平川がぶっ飛んで行くのを正面から見てしまった。
あまりにもおもしろかったので噴き出しそうになったのだが、
いかん。いかん。
ここは大人の対応。大人の対応。
と思って噴き出すのを堪えた。
平川は一瞬場の状況を読めなかったのか、
吹っ飛ばされた事にすら気づかない表情できょとんとしていた。
事務服の女性はいつも平川が座るイスに堂々と座り、平川を見下ろしていた。
平川は黙って違うイスに腰掛けた。
座るんか~い。
そう思ったが、胸がスカッとしすぎたおたまはバス内で小躍りをしそうなくらい軽快なステップをきかせていた。
でかした事務服の女!
翌日から平川は列の意味を要約理解したのか、きちんと整列するようになっていた。
おたまの朝のストレスはフリーになったのであった。
平川、あんたが悪い。
しっかし世の中には平川のようなとんでもない人間がゴロゴロしている。
次は死ぬ程臭い女
俵静子(仮)について
いつか話そう。