九代目無駄話

全盲のピアニストである辻井伸行さん(20)が

アメリカで行われた「第13回バン・クライバーン国際ピアノコンクール」で

7日19歳の中国人ピアニストと並んで優勝した。


バン・クライバーンといえばチャイコフスキーやショパンと同じぐらい

ピアニストで大変権威のある国際コンクールである。

バン・クライバーン氏は健在で第一回チャイコフスキー国際コンクール

優勝者でもある。


辻井さんすごいなあ。日本人どころかアジア人初だ。


クラシック界のみならずサッカーに続き日本にとって

明るいニュースだ。


僕が大好きなラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が決勝の曲だった。

辻井さんは指揮者の佐渡裕さんとこの曲のCDも出している。


ベートーベンの「皇帝」とこのラフマニノフは僕の高所恐怖症も

治したすばらしい曲(笑)

話がそれるが渡辺淳氏が日経新聞で書いていた

リトル官能小説「愛の流刑地」のHなシーンでも

「2人の愛はまるでラフマニノフの曲のように・・・」

みたいな内容で書いてあったがとにかくラフマニノフの音楽は

ロマンチックだ。

(昨年は東急文化村でラフマニノフの映画をしていた)


出張の飛行機で聞くのは大体、モーツァルトの魔笛、

ベートーベンのエグモント、レオノール、皇帝、

そしてドボルジャークのアメリカとラフマニノフのピアノ

協奏曲である。


いつも心地良くなってしまう。空で聞くクラシックは

本当に別格。


辻井さんは生まれつきの全盲。

父は産婦人科の先生で出産数日で盲目と気づいた。


2歳のときに、母が口ずさんでいた「ジングルベル」を突然聞き出し

おもちゃのピアノで弾いて驚いたという。水泳も得意だとか。


音大で声楽をしていたカミさんは

「ピアニストにはなぜか水泳が得意な人が多いのよ」と教えてくれた。

奏でる、心地よく泳ぐ・・・リズムの波長が脳の何かに関連があるのかなあ・・・・。


とても感激したのがバン・クライバーン氏がメダルを渡す

直前、辻井さんが満面の笑みで、頭を揺らし両手を震わせ

ていたこと。


そしてクライバーン氏が自らメダルを首につけた瞬間・・・

クライバーン氏が何ともいえない表情で抱きしめた。

氏も涙を堪えているように見えた・・・・。


辻井さんは震えた手で抱き応えたいた。


「全盲というハンディは関係ない。一人の音楽家として

評価したい」と今回言われていたという。


そして・・・さらに感動したのが

母親(すてきな方だなあ)がインタビューで

「私の息子になってくれてありがとう・・・」

と言ったことだ。


僕は夫婦でこれを見た瞬間、リモコンを持ったまま

泣いてしまった。涙が止まらないよ・・・・。


親にこれを言われるのは最高の宝物。

全盲でも音への才能を捨てずに懸命に応援した

両親。素晴らしい。そしてその結果がこうして実った・・・。


辻井さんは「両親に感謝しています」と言っていた。

素晴らしい青年だ。


両親にとっても最高の最高の恩返しである。

僕がいいなと思ったのは彼の恩師がそれぞれ

「ようやくスタート。これからも一流になるには大変だが

頑張ってほしい」と決して彼を褒めちぎっていないことだ。

心の中では彼を褒めちぎっているだろうがここで彼が終わらないで

さらに進化することが出来ると信じた発言。


久しぶりにすごい感激のニュースだ。


子供はすごい。育児の苦労を親に百倍の恩返しで返すのだ。

喧嘩もあれば、いじめもあれば、褒められることもあれば

なにかで1位になることもある。ビリにもなる。


2児の父として毎日感激、悲しみ、不安が繰り返されるが

「育児」は「育自」と言う人がいるが辻井さんを見て

親の愛情がいかに大切か教わった・・。


染五郎君の息子・金太郎ちゃんも今日も明日も

楽日が来るまで獅子を踊る。父と祖父の横で

沢山の観衆の前で踊る。


でも日々稽古場で僕らに見せてない苦労の

連続だったのだろう。染ちゃんのメールには

それが本当に伝わってきた。


4歳の子供が大舞台で「松本金太郎でございます!」

と言うのだ。彼も伝統芸能人としてスタートしたのだ。


話が戻るが辻井さんは立派だしすごくいい笑顔だった。

決勝のときに観客が皆スタンディングオべーションで拍手

を続けていたが


「拍手の音が今まで以上に感激した」


と話していたのが印象的だった。

目が見えないけど見える僕らより感じる感動の

情景。辻井さんしか見えない素晴らしい世界が見えたのか。


月曜からすばらしいニュースだった。