国政も大阪の政局も緊迫している時期ですが、平成の終盤にあたって、次の時代に持ち越してはならない問題について提起しておきたいと思いました。それは、1990年代のバブル崩壊から2000年代初頭の大不況で就職難に直面した氷河期世代に関する問題です。

 

最近、竹中平蔵先生が新刊『平成の教訓』を出版され、経済政策の視点から平成の30年を振り返っておられました。また、他にも有識者の皆さまの平成総括が佳境を迎えています。回顧録の数々でも指摘されるように、平成の日本が最も苦しんだのが90年代後半の経済危機。山一證券や長銀が倒産し、自殺者が3万人を超えたご時世で、その頃、経産省から岡山県に副知事として地方に出向していた私も、地元の経営者の皆様から痛烈な悲鳴をお聞きし、景気対策に苦慮した日々が記憶に残ります。

 

誰もが苦しみ、喘いでいた時代。1998年に有効求人倍率が1を割り込むなど、これから社会に希望を抱いて出て行こうとしていた若者たちにも、容赦のない就職難が襲いかかりました。何十社を受けても採用されないのは当たり前。大学を出てもフリーターや非正規雇用でなんとかやっていく方が続出しました。

 

しかし、これも多くの識者の方が指摘されていますが、かつては雇用の安定装置ともいえた新卒一括採用・終身雇用という昭和期からの横並び的な雇用慣行が裏目に出ます。新卒で正社員になれなかった若者たちは、再起の糸口をなかなかつかめませんでした。中には十分なスキルも身につけられないまま、40代に差し掛かってきた人たちも多いのです。「失われた20年」で特に過酷な運命を強いてしまいました。

 

 政治も決して無策だったわけではありません。小泉政権下の2003年には、厚労省、経産省、文科省、内閣府合同で「若者自立挑戦プラン」を打ち出し、当時約200万人のフリーター、約100万の若年失業・無業者に向けて、就業機会の創出などを図りました。また、近年、厚労省は「就職氷河期世代等正社員就職実現プラン」を作り、長期の不安定雇用者を正社員で採用した企業に助成金を支給するなどの取り組みは展開しています。

 

しかし、35歳以上のフリーターは今なお60万人と高止まりしています。さらには仕事があっても非正規雇用ばかりで、家族を持てるかどうかも大変、将来の貯金に回す余裕がない若者も依然として多く、固定化の懸念はますます膨らんでいます。社会保障政策の観点で見ても、数十年後の潜在的なリスクを抱えたままの状態で平成が終わろうとすることに、焦りは募ります。

 

そうした反面、40代は、まだ体も動くし、新しいこともなんとか身に付けられる年代です(人生100年時代のご時世、40代もだんだん「若手」の位置付けになろうとしています)。ここは前向きに考えて、近年、政府で力を入れる、学び直しの「リカレント教育」の重点ターゲットとして、氷河期世代をもっと巻き込み、スキルアップした彼らを雇用した企業を応援できるような体制にできないものでしょうか。

 

外国人労働者の受け入れ拡大の議論がされていた昨秋、ネット上で氷河期世代の人たちが「外国人を受け入れくらいなら自分たちは日本語も話せるし、やる気も負けない」といったことを訴えられているのを見て、ガツンと頭を叩かれたような思いでした。

 

もちろん、地方では外国人労働者なしに回らなくなっている業種もあるのが実情ですが、その問題と並行して、いま都会でチャンスを得られずに苦しんでいる氷河期世代の人たちに地方の担い手として活躍してもらう取り組みも必要です。

 

持続可能性を持たせる上で、時間はそうありません。今度こそ皆が奮い立つ強いメッセージを政治から発信していかねばなりません。