昨日、佐川前国税庁長官の証人喚問が行われました。多くの方がTV等でご覧になったと思います。参院予算委員会の委員として、その場で質疑を聞いた者としては、公文書の書換え、改ざんはあってはならないことですが、官僚としてやっかいな事案の着地点を目指し、徹夜で懸命に仕事をした結果、被疑者となってしまった佐川氏には、一定の同情を禁じ得ません。

    

私も、元経産官僚です、25年間奉職をしました。その間にどれだけの決裁文書を自ら書き、上がってきた文書に印鑑を押したでしょうか。大阪府知事時代を含めれば、恐らく何万という数になるだろうと思います。

   

決裁文書の書き換えについては、私も資料を全部読みましたが、公務員の経験からみて、書換え前の文書は公文書としての価値があるのか疑問があるのに対し、書換え後の文書は、まさに公文書の体裁を整えていると思いました。要は、結論に至る、不要なあるいは誤解を与える情報は省き、筋道を立てて、まさに骨太な情報をわかりやすく書く、これがオンザジョブトレーニングで学んだ起案の仕方であり、このことは今も不変です。  

   

また、書換え前の、例えば「いい土地ですから前へ進めて下さい。」との昭恵さんの言葉とされた部分は、籠池氏が間接的に近畿財務局に伝えたものであるということは、文書からも明らかで、本当に昭恵さんが言ったのか? 総理は言っていないとおっしゃっていました。これを含めて、書換え後の文書には、何ら新しい情報はなく、書換えという行為はゆゆしきことですが、前後で新たに不正や不当な点が見つかった訳ではありません。   

   

だから、どうして書換えたのか、書換える必要はなかった、という意見が周囲からは多く聞かれます。確かにそのとおり。無謬性を第一とする霞ヶ関のエース・財務省が、国会から要求のあった文書に完璧さを求めることは、当然の成り行きだった訳ですが、それが議会制民主主義を大きく揺るがすような今回の事態を招いてしまったことには、筆舌に尽くせない責任があります。    

   

財務省には、今はとにかく前を向いて真相を明らかにし、国民への説明責任を果たし、行政への信頼と組織の建て直しを図っていただきたいと思います。