補聴器をした方がよいですか?

 

難聴で困ることがありましたら、まずは、補聴器を数ヶ月、適切な調整の元で、視聴してみましょう

 

難聴で困るようになった方が、補聴器はどうでしょうか、と相談に来られます。

医院では、診察、聴力検査を行い、医学的に補聴器装用が妥当かを判断し、妥当である場合は、補聴器を勧めます。しかし、結局のところ、補聴器が有用かどうか、最後は、自分で判断する必要があります。その理由は、生活において、聴覚がどの程度インパクトがあるのかというは、個人個人の生活スタイル、人生観が関わってくるからです。私としては、一度、ていねいな調整を行った上で、数ヶ月視聴してみて、補聴器が有用かどうかの判断材料にしていただきたいです。当院では、まず、一般外来に受診していただいた後、月曜午後に補聴器外来に通っていただいて、補聴器の視聴、調整を行っています。7割くらいの方が補聴器を購入されています。

 

補聴器というものは色々デメリットがあります。

①    まず、高価です。片耳10万から40万円もします。高価な補聴器は、より自然な音に増幅してくれますので、確かによいです。しかし、値段相応の価値があるかというと、個人の捉え方になります。ロードバイクと同じです。

②    両耳装用が基本的に勧められています。価格が倍になるわけです。両耳からしっかり音が入ると、言葉を聞き取りに非常に有利になります。片耳装用した方に比べて、両耳装用した方のほうが、聞き取りの満足度が高く、長く補聴器を使っている傾向があります。

③    補聴器は壊れます。生涯使えるものではなく、5年から8年で部品が劣化して再度購入する必要がでてきます。

④    補聴器を耳にいれるということで不快感やこもった感じがでます。ただし、この不快感は、多くの人は、慣れてきます。

⑤    高価な補聴器でも、調整がうまくできていないと、全く使えない補聴器になってしまいます。できれば、認定補聴器技能者という資格を持った方に、調整してもらうことをおすすめします。

 

補聴器に否定的な方もおられます。しかし、難聴というものは、放置すると、生活していく上で、いろいろな問題を引き起こします。聴覚障害は、機能的能力と社会的、感情的な幸福感を衰弱させます。また、難聴によって、コミュニケーション能力が低下している場合は、孤立感、孤独感を感じてしまうことがあります。特に、高齢者においては、①運動能力の低下を感じている、②車の運転を中止した、③パートナーと死別した、④一人暮らしである、といったことが難聴による心理的な悪影響を及ぼしやすいといわれています。1)

 

また、医学的介入によって認知症発症を予防できる因子として難聴がもっとも大きな因子であったことが報告されています。2)

*2)認知症発症の40%は医学的介入が可能であったことがlancet誌で報告されました。危険因子としは若年期の教育が7%、中年期以降では、難聴が8%、頭部外傷が3%、高血圧2%、アルコール、肥満が1%、高齢期では、喫煙が5%、うつ4%、社会的孤立が4%、身体非活動が2%、大気汚染2%、糖尿病が1%でした。

 

1)Ciorba et al、The impact of hearing loss on the quality of life of elderly adults; Clin Interv Aging 2012

2)Livingstone G, et al. Dementia prevention, intervention, and care, Lancet 2020

4月に伊吹山ヒルクライムという、自転車で山を登るイベントに参加してきました。例年は、雪のため、全長10kmのコースでしたが、今年は15kmでした。なぜ、しんどい思いをして登るのか、自分でもよくわかりませんが、コツコツ自転車乗ってます。