家族とは

リバが骨盤底リハに来たのは私が専門のセラピストになりたての頃でした。会う患者さん一人一人の症状がまだ自分にとっても真新しく感じ、患者さんから聞く話を一生懸命聞いてリハビリに取り組む毎日でした。

 

リバは初回のEvauation(初診検査)のみに訪れた方でした。でも彼女がシェアしてくれた話は悲しくて今でもそのままの状態で私の心に残っています。

 

リバの症状は骨盤のあたりの痛みと頻尿でした。初回の検診の時はまず体全体を見て、姿勢、腹筋、背筋のバランス、骨盤の位置、体重の移動の仕方、呼吸や踏ん張り方などから始まり、口頭での質問:食生活、排便のリズム、性生活や、痛みのあるなし、の質問をします。

 

そして患者さんの合意でInternal Exam(内部検査)骨盤底筋肉のパワーやコーディネーションをセラピスト自身の手で調べる検査があります。これはとてもプライベートな検査なので初診でやってもいいですよという方もいれば、そんなことするなんて知らなかったのでまた今度治療に来た時でいいですかという方といろいろです。

 

リバの話を聞いていました。ベッドの横に座ってリバは自分の症状を少しづつ話してくれました。初対面の私でしたが私の目を真っすぐ見て時には涙しながら、たくさんのことを教えてくれました。

 

リバはメキシコから難民としてアメリカに来たこと。

リバの息子は成人しているけど現在、統合失調病で家に引きこもっている状態だということ。

毎日の仕事と家族を養っていくので精一杯だということ。

この骨盤底のリハビリに来ることをずっと迷っていたこと。

 

色々話してくれるうちにリバの骨盤底の痛みについて話し始めました。

 

”私は性転換手術をして今は男性としていきているの”

男性のような服装と髪型のリバでしたが、話し方は普通の女の方のようでしたので私は性転換までしているとはその時まで分かりませんでした。

 

リバは続けて

”私がなぜこんなに骨盤に痛みがあるのか自分ではわかってるの”

 

私は”それは何だと思うの?”と聞きました。

 

リバは ”私がメキシコにいたころ、家がとても貧しくて叔父のところに住まわしてもらっていたの。私の叔父はとてもやさしかったけれど私が人生において一番最悪なことをしたのよ。”と。

 

リバが叔父さんから何度も性的虐待を受けたこと。

リバの叔父から、近くの教会の牧師さんまでもがリバに性的虐待を行ったこと。

リバの兄弟姉妹も同じ扱いをされたこと。

リバが叔父の子供を身ごもってしまったこと。

 

私は言葉を失って、こんな話をしてくれたリバも涙があふれていました。

 

リバが子供を産んだ後難民としてアメリカに移住した後、生活保護を受けながら子供を育てたそうです。

 

このトラウマを忘れようと性転換して男性になったものの、骨盤の痛みは今までずっと続いているのだと言っていました。

 

リバと私はその後Hugをしました。私はありえないようなリバの過去を聞いて本当に心が痛く、Hugする以上にどのようにその気持ちを伝えていいか分かりませんでした。

 

リバにとって今日このリハビリのクリニックに来ることは本当に勇気がいることだったでしょう。

 

リバは”話を聞いてくれてありがとう”といいました。

 

その時点で予約していた時間をもうとっくに超えていたのに気づき、リバに一緒に骨盤の痛みを治して(Healing)いこうねといいました。

 

リバは笑顔でうなづいてくれました。

 

でもそれっきりリバがクリニックに訪れることはありませんでした。

 

電話したところ、仕事が忙しすぎて時間が取れない、本当に申し訳ないとのことでした。

 

あの時の会話、リバの涙、心の中で感じた悲しみと怒り。I will never forget.

 

骨盤底のリハビリを行うにあたりこのような過去を持つ方に何人も会いました。悲しいことですが私と同じ専門のセラピストの方もこのような話は珍しいものではないと言っていました。

 

骨盤の痛みと心の痛み、過去のトラウマ、考えられないような痛みを経験している方々の力に少しでもなれたらと、話を聞くだけでも、たったの一回だけのセッションだったとしても。

 

どうにかして助けになれたらと今でも思っています。