クラウドとAIが急速に普及していることでデータセンター需要は旺盛だが、建設しても電力不足によって数年間稼働できないと言われている。

以下のBloombergの記事によれば、一般的に、電力確保までに3年程度は待つことになるが、シリコンバレーような電力需要の高い地域ではもっと時間が掛かると書かれている。

(2019年にデータセンター建設の申請をしたものの、電力不足を理由に6年経過した現在もまだ空き施設となっている例もある)

クラウドの方はどうしてもデータセンターが必要になるが、今後、3年から5年程度の間にAIがデータセンターを必要としないものへと変化している場合、AI向け巨大データセンターに関してはそもそも不要になるのかもしれない。

仮にAI向け巨大データセンターや電力施設が完成したとしても、その頃にはAIブームが終わっている可能性もある。

 

近いうちにAIバブルが崩壊するのだとしたら、恐らくその原因は主にデータセンターにあり、それには膨大な電力供給が必要になるが、その供給体制が整うまでに3年以上掛かり、さらにAI自体の進歩や使われ方などにより、そもそもAI向け巨大データセンターが不要になる可能性がある。

そういったことによって巨額投資を続けてきたAIに変調が生じ、まずはデータセンター関連で投資の失敗が表面化することになるのかもしれない。

今はデータセンターの建設ラッシュとなっているが、肝心の電力供給がしばらく出来ないのだから、データセンターだけ建設しても何にもならないことになる。

 

 

【参考】20251111日 の記事

エヌビディア本社のあるカリフォルニア州サンタクララで、大手データセンター開発企業2社の進めるプロジェクトが、地元電力会社の供給準備の遅れにより、数年間稼働できない可能性がある

  デジタル・リアルティ・トラストは2019年にデータセンター建設を申請したが、6年経った今も電力供給を待つ空き施設のままだ。また、スタック・インフラストラクチャーも近隣に48メガワット規模の未稼働プロジェクトを抱えている。市所有の電力会社シリコンバレー・パワーは供給能力の増強に苦戦している。

  この2施設の停滞は、米ハイテク業界が直面する電力不足の深刻さを浮き彫りにしている。クラウドと人工知能(AI)の急拡大により需要は過去最高だが、老朽化したインフラと遅れている送電線の整備などが足を引っ張る。ブルームバーグNEFによると、AIコンピューティングの電力需要は2035年までに米国だけで2倍以上に増える見通しだ。

  不動産仲介大手CBREグループでデータセンターソリューションを担当するエグゼクティブバイスプレジデント、ビル・ドハティ氏は「需要はかつてないほど高く、電力供給の問題に直面している」と語る。ドハティ氏は「一部のデータセンターは、人口密集地の近くでの設置に需要がある。カリフォルニア州はまさにそうだ。ただ、同州では電力供給能力が限られており、稼働が難しい」と説明した。

  サンタクララ市議会が5月に説明したところによれば、稼働中または建設中のデータセンターは57施設あった。シリコンバレー・パワーは「追加需要に対応するため45000万ドル(約690億円)のシステム拡張を進めており、2028年完了予定だ」という。

  デジタル・リアルティの広報担当者ジョーダン・サドラー氏は電力確保まで3年待ちは「一般的」だが、シリコンバレーなど需要の高い地域ではさらに長いと述べ、「サンタクララでは今敷地を見つけ、新たに電力を確保しようとしても、数年かかる可能性がある」と語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-10/T5IAPMKK3NY900

 

 

 

以下の記事によれば、アメリカの大手テック企業(meta,oracle,xAI)は社債の発行だけではなく、「オフバランスシート」という表に出にくい形で資金調達しているらしい。

これはペーパーカンパニーのような存在を作り、自らのバランスシートの負債に計上しないで済む資金調達法であるため、信用格付けの維持、財務健全性の見せかけ、リスクの隔離といったメリットがあるという。

しかしその一方で、2001年に破綻したEnronも同様の手法で巨額損失を隠蔽し、問題となったことがあるとのことであり、やはりこのAIバブルは後になってから大変な損失や負債が明るみに出てくることになるのだろう。

https://xenospectrum.com/ai-investment-war-hidden-debt-off-balance-sheet-finance/

 

 

 

以下の動画によれば、データセンターに巨額投資をしているOracleのCDSが急騰しており、破綻するリスクがあるのではないかという。

 

【参考】2025年11月8日の動画

オラクルはOpenAIと3,000億ドル規模のクラウド契約を締結しました。オラクルがデータセンターを建設し、OpenAIが将来的にそれを利用するという契約です。このニュースに株式市場は一時的に熱狂し、株価は急騰しましたが、債券市場の投資家の反応は正反対でした。なぜでしょうか?この契約を履行するためには莫大な資金が必要ですが、オラクルには資金が不足していました。オラクルは2025年9月、実に180億ドル(日本円で約2.5兆円相当)規模の新規社債を発行しました。金利は4.45%から6.1%と非常に高く、信用格付けもBBB(投資適格の中でも低い方)でした。オラクルはこれに留まらず、今後4年間で毎年250億ドルずつ、合計1,000億ドルの追加負債をさらに負わなければ、この契約を守ることはできないと予告しました。問題はオラクルの財務構造がすでに脆弱であるという点です。オラクルの現在の純資産に対する負債比率は378%に達しています。今すぐ破綻すれば、債権者は一銭も回収できない可能性がある水準です。競合他社であるAmazon(50%)、Microsoft(30%)と比較しても、負債水準はあまりにも高いです。これにさらに1,000億ドルの借金を上乗せすれば、投資家としては当然、貸し倒れの懸念が大きくなるのは避けられません。

【AIバブル崩壊の予兆】オラクルのCDS急騰!ウォール街が恐れるAI投資の「致命的な欠陥」とは2025-11-8

 

 

 

現在、S&P500PBR(株価純資産倍率)5.53(2025/10/28時点)となっており、これはドットコムバブルの時のピークを上回っている。

https://stock-marketdata.com/pbr-sp500.html

 

https://www.youtube.com/watch?v=Rd2_fcrYaKY

 

PBRが非常に高くなっている場合、市場は企業の将来性や収益性を高く評価していることになり、株価が企業の資産価値を大きく上回っていることを意味する。

NVIDIAPBRは約44倍であり、S&P5005.53倍よりもかなり高くなっているため、いくら将来性や収益性を評価されているとはいえ、やはり異常な水準ということになるのだろう。(マイクロソフトのPBR10.41倍、トヨタのPBR1.4)

PBRは株価をBPSで割ったものであり、BPSとは企業の解散価値(企業が事業を停止して資産をすべて売却し、負債を返済した後に株主に残る資産の価値)のこと。

NVIDIAの株価はBPS44倍となっており、NVIDIAへの成長性や期待が非常に高く評価されていることが分かる。

通常、株価の割高と割安を判断する上で用いられる指標はPER(株価収益率)の方ではあるが、PBRが急激に高くなっている場合は注意が必要になるようだ。

NVIDIAPBRの高さは「今後もAI関連の事業を継続し、我々投資家の高い期待に応えて欲しい」という意味になり、逆にPBR1倍割れの企業は「誰も貴社に期待している者などいないため、さっさと清算していくらかでも株主に資産を残せばいい」という意味になる。

AIエージェントがうまく機能するまでにあと10年はかかると言われており、AGIの実現はそれよりも先になるのだろうから、投資家の期待先行で株が買われ過ぎていることに疑いの余地はない。

OpenAIの共同創設者が「AGIの実現にはまだ10年はかかる」との見解を示した真意とは? - GIGAZINE

NVIDIAの異常なまでの好業績は、AI向けのデータセンター特需によるものと、循環取引によるものであると言われているが、そういったハイリスクなビジネスが頓挫すれば、業績の大幅下方修正もあるのかもしれない。

AI向けのデータセンターで使われているNVIDIAのGPUは5年程度で陳腐化すると言われているが、5年ごとに非常に高額で非常に膨大な電力消費をするGPUを全部入れ替え続けるというのは、やはり無理があるようにも思える。(そもそも電力不足で建設中のデータセンターは数年程度稼働できないらしい)

 

(東証が2023年に全上場企業に対して資本効率の改善を要請したことで、自社株買い、増配、政策保有株の売却といった動きが出て、日本の株式市場でもPBRや株価が上昇しているが、これはPBR1倍割れという割安で放置されている企業を問題視していたことによるものであり、PBRと株価が上昇すればするほど良いということではない。現在のアメリカの大手テック企業や日本のAI関連銘柄のように、短期間で極端な暴騰をしている状況は一部の企業に過度な期待をしていることになり、一般的にそれはバブルだと言われている。)

https://www.sankei.com/article/20240115-NCFRILZJRVMGJOXWSH37ZUZNDM/

 

 

AI による概要

NVIDIA PBR」は、**NVIDIAの株価純資産倍率(Price Book-value Ratio**を指します。これは、株価が企業の純資産の何倍で評価されているかを示す指標で、202510月時点では、複数の情報源で約4349倍、実績ベースでは約44倍とされています。 

意味:一般的にPBRが高い場合、市場が企業の将来性や収益性を高く評価しており、資産価値を大きく上回る株価が付いていることを示します。NVIDIAの高いPBRは、AI市場などにおける高い成長期待を反映していると考えられます 。

 

 

【参考】

PBR(株価純資産倍率)とは、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍であるかを示す指標です。

純資産とは、企業の資産から負債を差し引いたものです。仮に企業が解散した場合、純資産は株主に分配されるため、「解散価値」とも呼ばれます。 「PBR 1倍」は、株価と企業の解散価値が同じ水準にあることを示します。一般的に、PBRの数値が高いほど株価は割高であり、低いほど株価は割安だと判断されます。

https://www.bk.mufg.jp/column/keizai/b0053.html

 

【参考】

PBR1倍割れは、株価が純資産を下回り、投資家から企業価値が慎重に評価されている状態です。この状況では株価が解散価値より低いため、理論上、株主にとっては「今後事業を継続するより、会社を解散したほうが資産価値は高い」と考えられています。つまり、PBR1倍割れは、現状では企業の成長性に対する市場評価や投資家の期待が低いことを示しています20233月、東京証券取引所(以下、東証)は、プライム市場およびスタンダード市場の全上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。当時のデータによると、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場企業がPBR1倍割れの状態にあり、欧米に比べて低水準であったことが問題視されたからです。 この東証の要請により、多くの上場企業がPBR1倍割れの解消に取り組んでおり、株価やPBRの数値に改善の傾向が見られます。

https://www.bk.mufg.jp/column/keizai/b0053.html

 

 

 

 

 

資産価格の吊り上げをやり過ぎると必ずバブルになるが、簡単に言ってしまえば次の言葉にある通りなのだろう。

 

「人間はいつでも、より多くを求める。強欲が市場を駆り立てるのだ」

https://www.businessinsider.jp/article/2510-stock-market-bubble-andrew-ross-sorkin-1929-crash-book-ai/

 

一度、火が付いてしまうとそれはどんどん燃え広がり、しかも火に油を注ぐようなことをする者が出てくる。

その結果どうなるのかは歴史が証明している。

政府・日銀は恐らく火消しや正常化などをする気など全くなく、このように考えているのだろう。

 

「せっかく投資の流れが出来たのだからこの流れを止めるなんて絶対駄目だ」

「さあ、皆で貯蓄から投資の世界へ船を漕ぎ出そう」

 

しかし、その船がまもなく沈没することは目に見えている。