今や日本株の命運はトランプ大統領が握っていると言っても過言ではなく、たった一言、「パウエル議長は辞任する。次期議長は恐らくケビン・ハセットだ。」と言っただけで外為市場ではショックが起き、かなりの円高・ドル安になるのだろう。
トランプ大統領はFRB議長を解任することはないようだが、自ら辞任するように促しており、任期満了を前に辞任することになったクーグラー理事と同様に辞任しろと言っている。
(クビにすると独立性など、いろいろと問題があるため、自分の方から辞めろとプレッシャーをかけ続けている)
円高になると非常に弱くなる日本株は、1ドル130円台になれば去年の8月や今年の4月のようにまた急落することになるが、もし1ドル120円かそれをさらに下回る水準にまでドルが下落するようなことがあれば、日経平均株価の下落は27,500円では止まらないだろう。
もし、「パウエル議長は辞任する。次期議長は恐らくケビン・ハセットだ。」という発言の後に「しかし、ジュディ・シェルトンも候補として検討している」などという余計な一言が加われば、その真のダークホースによって市場は非常に動揺し、想定外のドルの大暴落が引き起こされるのかもしれない。
実際にジュディ・シェルトン氏がFRB議長にならなくても、その名を大統領が口にしただけでかなりのインパクトがある。
最近の相場はトランプ大統領の発言1つで大きく動くため、今後もそのような展開になることが予想される。
ジュディ・シェルトンという人物は金本位制支持者であり、「極めて異端」とされていることから、常識的に考えればFRBから程遠い存在のはずだが、ポリマーケットでは次期FRB議長候補者として名を連ねており、可能性としてはゼロではないらしい。
今も日本株に強気の投資家はそのような爆弾を抱えていることにも留意しなければならないのだろう。
しかし、FRB議長は上院で承認される必要があるため、ジュディ・シェルトン氏が議長に就任する可能性は低い。
また、FRB理事であっても議会承認が必要であり、トランプ政権1期目でジュディ・シェルトン氏はトランプ大統領からFRB理事に指名されたことがあったが、バイデン政権下で否決されたことがある。
【参考】2025年8月2日 の記事
理事は大統領が指名し、議会の承認を経て就任する。トランプ氏は利下げに慎重なパウエル氏への批判を繰り返しており、利下げを容認する人物を議長に据える意向を示している。
米FRB理事が任期途中で辞任 議長の後任含みで人選に注目(共同通信) - Yahoo!ニュース
直近の値動きを見ると、米雇用統計やISM製造業景気指数の悪化を受けてリセッション懸念の強まりによって株価はやや大きめに下落しており、FRBの早期利下げ観測から米2年債利回りは低下し、日米金利差縮小傾向が続くことからドル円も一気に3円以上円高方向に動いている。
これに加えてトランプ大統領が主張しているように、FRBが次期FRB議長の下で3%以上の利下げをすることになったり、FRBの独立性が弱まっていくことになるのであれば、1ドル139円を大きく下回ることになるのだろう。
米労働市場はこの3カ月で激変、雇用者数は月平均3.5万人しか増えず - Bloomberg
7月ISM製造業景気指数、5カ月連続50割れ 工場雇用5年ぶり低水準 | ロイター
米金融・債券市場=利回り急低下、9月利下げ観測高まる 雇用統計悪化で | ロイター
トランプ氏、FRBに3%利下げ要求 パウエル議長「頑固者」と改めて非難 | ロイター
ダウ平均株価、米雇用統計受け一時800ドル近く下落…終値542ドル安の4万3588ドル : 読売新聞
※ジュディ・シェルトン氏は恐らく最も市場から警戒されている人物の一人なのだろう。
【参考】2025年6月29日 の動画
米政府が公式に候補を発表しているわけではありませんが、市場に候補として挙がっているだけでもちょっと驚きです。なぜこのシェルトン氏が候補に挙がっているのか?ですが、2019年に実はトランプ大統領の1期時にトランプ大統領本人がシェルトン氏をFRB理事に指名しています。残念ながら2020年のバイデン政権下での上院でのFRB理事指名承認投票で否決されており、FRB理事にはなっていませんが、トランプ大統領に直々に指名され、2016年8月に大統領選直前にトランプ氏の経済顧問チームに加わっています。こちらは2016年当時のタイム誌の記事ですが、ジュディ・シェルトン氏がトランプ陣営への経済顧問チームに加わることが記載されてます。「ドナルド・トランプ氏にジュディ・シェルトン氏もアドバイザーとして助言を行う予定です。シェルトン氏は国家委員会の経済アドバイザーを務め、最近ではトランプ氏のFRBを批判する論説を執筆した人物です。」 このように2016年のトランプ陣営の経済顧問チームに入り、さらに2019年にトランプ大統領からFRB理事に公式指名されているという経緯から見ると、トランプ氏本人から「信頼に足る存在」と見なされていたのは間違いないです。しかし、トランプ氏に評価されている一方で、主流メディアやエコノミスト、ワシントン主流派からは警戒され、極めて異端とされ、最終的に上院で承認否決されています。私からすると主流メディアが必死に否定するなら、逆に一考の余地があると思います。当時のエコノミスト誌なんかは、「シェルトン氏を否定するべき理由」と特設記事まで書いてます。なんか必死さが異様に感じますね。他のメディアなんかでも「エコノミストの常識から外れた異端者」「時代錯誤なクワックリー(インチキ)政策提案者」 当時トランプ氏自身もメディアなどからボロクソに叩かれていましたが、シェルトン氏も同じようにボロクソに叩かれていたということです。しかし、なぜこれほど叩かれていたのでしょうか?理由は3つあります。1つ目はドルをゴールドに連動させる金本位制への復帰、2つ目はFRBの独立性そのものに疑問を呈した点、3つ目はトランプ政権下で「ゼロ金利が必要」と主張した点です。
【金担保米国債とは?】金本位制支持 ジュディ・シェルトン氏 FRB議長候補に?金裏付け米国債でゴールドは2万ドルに再評価されるのか? - youtube
【参考】2025年8月2日 の記事
【速報】トランプ米大統領、FRB議長に辞任要求
【ワシントン共同】米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事の辞任表明を受け、トランプ米大統領は1日、自身の交流サイト(SNS)に「パウエルFRB議長も辞任すべきだ」と投稿した。
https://www.47news.jp/12954823.html
※トランプ大統領はパウエル議長を解任する可能性は「ほとんど」ないと言っているが、「辞任すべきだ」とも言っている。
また、6月30日に「クーグラー氏の後任に、将来的にFRB議長に昇格させる人物を指名する案がある」というベッセント財務長官の発言もあり、その空席に座る人物が「影の議長」になるのではないかという記事もある。
FRBのクグラー理事が辞任 トランプ氏、「影の議長」の指名可能に - 日本経済新聞
クーグラーFRB理事、任期途中で辞任-トランプ氏に後任指名の機会 - Bloomberg
【参考】2025年8月1日 の記事
トランプ米大統領は1日、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長について、今月8日付で辞任するとの発表があったクーグラーFRB理事に倣って辞任すべきだと表明した。パウエル議長との対立をエスカレートさせた。
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、「『遅過ぎ』のパウエル氏は、バイデン前大統領が指名したアドリアナ・クーグラー氏と同様に辞任すべきだ」と投稿。その上で、金利についてパウエル議長が誤ったことをしているのをクーグラー理事は知っていると主張し、議長も「やめるべきだ」とコメントした。
FRBは1日、クーグラー理事が2026年1月の任期満了を前に辞任することを発表した。トランプ氏にはクーグラー理事の後任として、自身の利下げ要求に前向きな人物を指名する機会が前倒しで訪れることとなった。トランプ氏はパウエル議長率いる金融当局に対し、利下げを強く迫っている。
トランプ氏はまた、保守系メディアのニューズマックスとのインタビューで、パウエル議長の今後について、任期が終わる前に解任する可能性は「ほとんど」ないと述べた上で、そのような行動は「市場を混乱させる」との助言を受けたと明らかにした。
「すぐにでも彼を解任したいが、市場が混乱すると言われている。彼の任期はあと7-8カ月で終わるので、その後任に別の人物を起用する」とトランプ氏は語った。パウエル議長は来年5月に現行任期満了となる。
トランプ氏は1日に記者団に対し、FRB理事ポストが一つ空くことについて「非常にうれしい」と述べ、クーグラー理事が辞任を決めたのは金利政策を巡ってパウエル議長と「意見が合わなかった」からだと考えていると語った。しかし、クーグラー理事の政策金利に関する公の立場は、パウエル議長と一致している。
トランプ氏はこれに先立ち、パウエル議長が金利を引き下げないならFRBが実行するよう迫っていた。「『遅過ぎ』のパウエル氏は頑固な愚か者だ。今すぐ、大幅に金利を引き下げる必要がある。パウエル氏が拒否し続けるなら、理事会が実権を握り、誰もがやらなければならないと分かっていることを実行すべきだ」と投稿した。
この発言について、ホワイトハウスはコメントの要請にすぐには応じなかった。
トランプ氏はその後の投稿で、7月の雇用統計が低調だったことを受け、自身のチームに労働省労働統計局(BLS)の局長を解任するよう指示したとし、「パウエル氏も引退させるべきだ」とコメントしていた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は7月29、30両日に開催した定例会合で、主要政策金利を据え置くことを決定した。一方で米経済に対する認識を下方修正し、利下げに近づいている可能性がうかがわれた。米金融当局者の多くは、年内の利下げを見込んでいると示唆している。
7月の金利据え置き決定には、いずれもトランプ政権1期目にFRB理事に指名されたボウマン副議長(銀行監督担当)とウォラー理事が0.25ポイント利下げを支持して反対票を投じた。両氏は1日、その理由を個別に説明する声明を発表し、労働市場で弱含みの兆しが強まっている点を強調した。
政策金利の判断は、パウエル氏が議長を務めるFOMCで行われ、7人のFRB理事と5人の連銀総裁が投票権を持つ。FOMCは年に1度、議長と副議長を選出する。
トランプ氏は一時的にパウエル氏に対する攻撃を控えていたが、30日の政策決定を受けて厳しい批判を再開。金融政策に加え、FRB本部建物の改修費用膨張についても、パウエル氏の管理能力のなさが原因だと非難している。
パウエルFRB議長はクーグラー理事に倣い辞任を-トランプ氏主張 - Bloomberg
【参考】2025年7月16日 の記事(一部抜粋)
経済の領域でトランプ米大統領に最も長く仕えている側近の1人、ハセット国家経済会議(NEC)委員長が、来年5月に任期満了となるパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の有力後任候補の1人に浮上している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
トランプ氏は、パウエル議長が金利をあまりにも高く維持しているとして繰り返し非難し、利下げを望む人物を次期議長に指名すると発言。次期議長選びの重要性が一段と増している。
こうした発言を受けて、 インフレ抑制やドルの価値維持に重要な連邦準備制度の政治的圧力からの独立性を巡り、それが損なわれる危機が深まっていると投資家は懸念を抱いている。
ハセット氏は、トランプ氏のFRB批判に同調している。今月のFOXビジネスでのインタビューでは、連邦準備制度が独立機関であることを認めつつも、昨年の大統領選前に利下げし、その後は関税によるインフレ再燃リスクを理由に金利を据え置いている点を挙げ、大統領の批判は当然だとの見解を示した。
「それは連邦準備制度が不偏不党でも独立でもないという疑念を生じさせる」と、ハセット氏は述べた。
以前は穏健な右派系エコノミストと見なされていたハセット氏だが、過去約10年にわたりトランプ氏のそばにいた。NEC委員長としてのハセット氏のアプローチは、関税に対するトランプ氏の衝動を抑えようとした政権1期目当時のコーン委員長とは大きく異なる。
ハセット氏は「MAGA(米国を再び偉大に)」路線を鮮明にし、貿易や税制、インフレ、連邦準備制度に関するトランプ氏の本能的な主張を、数多くのテレビ出演などを通じて積極的に後押ししている。
ブッシュ(子)政権時代の財務省当局者で、現在はビーコン・ポリシー・アドバイザーズのマネジングパートナー、スティーブン・マイロウ氏は「トランプ政権で長く生き残っている者は推し進めたいイデオロギーがあるわけではない」とし、「彼らは特定の金融理論に奉仕するためではなく、トランプ氏に奉仕するためにいるのだ」と解説した。
次期FRB議長選考レース、ハセット氏が現時点でポールポジション - Bloomberg
※クーグラー理事が任期満了前に辞めてくれるおかげで、トランプ大統領は近日中に新たなFRB理事を指名できる空きポストを確保できることになった。
【参考】2025年6月20日の記事
[ニューヨーク 18日 ロイター] - トランプ米大統領は、パウエル連邦準備理事会議長(FRB)の任期が終了するまであとほぼ1年あるにもかかわらず、間もなくパウエル氏の後任を指名すると述べている。投資家たちは、金融市場にとって危険な状況が生じる可能性があると語った。
トランプ氏は1月の2期目就任以降、政策金利を引き下げないという理由でパウエル議長とFRBに対する不満をあらわにしてきた。大統領はパウエル氏を解任しようと思えば実行できるとした今年初めの発言を撤回したが、今月初めになって後任議長をやがて選ぶだろうと述べた。
「影の」FRB議長が存在することになれば、現職議長と金融政策を巡って見解が対立する可能性が浮上し、そうすれば市場に混乱を引き起こし得るだろう。FRBが適正に機能する上でその独立性が欠かせないとの見方が広まっている以上、トランプ氏の意のままになる人選となれば、ウオール街を警戒させる面もあるだろう。
「誰が議長後任の指名を受けるにしても、監視するべき重要な点は政治的な配慮に基づいた人選と見なされるかどうかということだ」とアライアンスバーンスタインのエリック・ウィノグラード主席米国エコノミストは述べた。「つまり(要注意を)意味するのは大統領の気まぐれで見解を改めるような人物だ」
FRBはクーグラー理事の任期が来年1月に終わるまで、トランプ氏が当面指名できる空きポストがない。
オンライン予測市場ポリマーケットによると、国家経済会議(NEC)のハセット委員長、FRBのウォーシュ元理事、トランプ氏が1期目で指名した後で後任のバイデン大統領(当時)が人事案を取り下げたジュディ・シェルトン氏、ベセント財務長官が後任議長として有力候補とされる。
<影の議長>
投資家はFRBの後任議長が早い時期に指名されれば、金融政策について混乱したメッセージを伝えることになる可能性があると懸念している。
トランプ氏はここ数カ月間、FRBが今年に入ってから利下げしていないことについて、自らが2018年に指名したパウエル議長の批判を続けている。
FRBは昨年、政策金利を1%引き下げたが、直近の利下げは昨年の12月だ。FRBは、政策金利を現行水準の4.25─4.5%に維持する理由として、インフレ高進と失業率上昇の両面でリスクを挙げている。
トランプ氏はつい先週もパウエル氏が利下げをしないことについてばか者だと批判したが「解任はしない」と述べた。
投資家によると、FRB議長は米上院で承認される必要があり、トランプ氏が指名してから手続き上数カ月間を要する可能性がある。
トランプ氏がパウエル氏の後任を近く指名するとは思わず、その代わりにパウエル氏の任期終了の間際になるまで様子見するのではないかと考える投資家もいる。
複数の投資家からは、最終的に指名されるのは現時点で最も幅広く取り沙汰されていたり予測されていたりする人物でないかもしれない、との声も聞かれる。
ウィノグラード氏は「私が賭けるなら(浮上している人々とは)別の候補に賭ける」と述べた。
焦点:FRB後任議長、トランプ氏が早期に指名なら市場混乱も | ロイター
※ジュディ・シェルトンまでは真面目に予想しているらしい。1%の予想ではロン・ポール、ハワード・ラトニック、イーロン・マスクといった人物の名前が上がっているため、グレーになっている1%の予想は全く真面目な内容ではない。ポリマーケットの現時点での予想は、1位がケビン・ウォーシュ元FRB理事、2位がケビン・ハセット国家経済会議委員長、3位がクリス・ウォラーFRB理事となっている。しかし、ブルームバーグの記事によれば、トランプ大統領に非常に近い人物であるハセット国家経済会議委員長が「ポールポジション」と書かれている。ウォーシュ元FRB理事は一部でタカ派であると言われているが、利下げに前向きとも言われており、政策スタンスがよく分からない。
(2025年12月31日までにトランプ大統領は誰を次期FRB議長として公表するか?)
【参考】2025年7月14日の記事
ウォーシュ氏は、2002年2月に米モルガン・スタンレー・アンド・カンパニーの副社長兼執行役員を退任し、ジョージ・W・ブッシュ大統領の行政チームに加わりました。その後、2006年2月から2011年3月までFRBの理事を務め、政策スタンスはタカ派とされていました。ウォーシュ氏は、スタンフォード大学の出身で、同大学のフーバー研究所の特別客員研究員などを務めています。
ハセット氏は経済学者で、2017年から2019年まで、第1次トランプ政権で経済諮問委員会(CEA)の委員長を務め、大型減税を推進しました。CEA委員長就任前は、保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)に所属し、FRBのエコノミストとしての経歴も有しています。2019年からは、スタンフォード大学フーバー研究所のブレント・R・ニクラス経済学特別研究員を務めていました。
https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2025/07/irepo250714/
【参考】2025年7月25日の記事
ウォーシュ元米連邦準備制度理事会(FRB)理事は、29、30日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で自分に投票権があれば、利下げを支持するとの考えを示した。FOXニュースとのインタビューで24日に発言した。
ウォーシュ元理事は、パウエルFRB議長の後任として、トランプ政権が検討している有力候補の1人と広く考えられている。
ウォーシュ氏は、トランプ大統領に求められれば、公務に就く用意がある述べ、「利下げは私が10年にわたり主張してきたことの第一歩だ。法改正の必要はなく、(FRBの)リーダーシップの交代が必要だ。米連邦準備制度が行う全ての体制転換だ」と発言した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-24/SZXD9WGPL3Y000