株式がインフレヘッジにならない理由は、多くの人々にとって、いくら株価が暴騰しても巨額の配当金が入ってくるわけではないため。
また、株式というのは安全資産ではないのだから、問題が起きればいつ暴落してもおかしくない。
基本的に株式投資というのは、余程の資金力を持つ者が優良銘柄を安く買って長期保有することが本来の在り方なのであり、誰彼構わず「貯蓄から投資へ」などというスローガンに煽られて暴騰している時に飛び乗るようなものではない。
【参考】
Q.リスク資産とは何ですか?
A.値動きが大きく、収益が期待できる反面、損失を被る可能性もあり、将来の収益の予想が困難な資産、あるいは投資した元本を割る恐れがある資産のことをいいます。一般的に株式や社債、不動産などの投資商品のことを指します。
リスク資産に対して、預貯金や国債など、予め将来の収益が目減りする可能性が低いものを、安全資産と言います。
https://support.matsui.co.jp/faq/show/18021?site_domain=guide
物価が上昇し続ける中で株式の含み益が増えていっても、それは利益確定しなければ収入にならないのだから、結局、いずれは売ることになる。
投資ブームによって株価が暴騰している場合、それはバブルであり、短期間であまりにも上昇率が高くなってしまった銘柄というのは値下がりする前に売ってしまおうと皆が思うようになるため、やはりいずれは売ることになる。
暴騰している銘柄を買って利益を上げるには、さらに高値で買い続ける者が存在しなければならないが、そういう動きは長く続くことはない。
これは約400年前のチューリップバブルから変わっていない。
【参考】
転売益を目当てに買う人々で球根の値はどんどん上がった。しかしこれは球根を高値で買い求める人物が現れ続けない限り持続不可能である。1637年2月、チューリップの売り手は、高騰した球根代金を支払おうとする買い手をもはや見つけることができなくなった。そうと知れ渡った途端、チューリップに対する需要は崩壊し、価格は暴落した。投機バブルが破裂したのである。ある者は今となっては相場の10倍の価格でチューリップを購入する契約を結んだまま取り残されていた。またある者は手持ちの球根の価値が支払った対価のほんの欠片しか残っていなかった。マッケイは、オランダの人々は、動転して取引相手を告発したり非難したりするようになったとしている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/チューリップ・バブル
だからバブルや仕手で株価が暴騰しても、ハイパーインフレで株価が暴騰しても、いずれにしても暴騰した株価というのは必ず暴落することになる。
日銀は年に1兆2000億円もの分配金が入ってくるため、ETFの処分をするつもりはないらしく、政府と結託してなるべく多くの国民が投資に関心を持つように誘導し、株高を続けようと思っていたようだが、この相場に参加したほとんどの投資家は巨額の配当金など入ってこないのだから、すぐに売り抜けることになる。
日銀は自分達の都合を重視してきたことで判断を誤り、バブルにしてしまったのだろう。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/0529_2
いくら日銀が円安誘導政策を続けてもバブルが崩壊したり世界経済がリセッションに陥るのであれば、企業業績の悪化によって配当金が減ることになり、日銀が受け取る分配金も減っていくことになる。
https://nextfunds.jp/semi/article3-2.html
株式は基本的にバブルにでもならない限り暴騰したりしないのだし、企業業績というのは安定しているわけではないのだから、分配金目当てに金融政策を考えていたのであれば中央銀行として普通ではないし、根本的に間違っていたことになる。
ETFの分配金は個別銘柄の配当金の減配や無配よりもリスクが低いといわれているが、これから起きるバブル崩壊やリセッションなどにより企業業績が低迷していけば分配金は確実に減るのだし、株価指数も大きく下がることになる。
(政策目的で自国株式を大量保有しているのも日銀だけだと言われている)
【参考】2024年3月17日
日銀が抱えるもう1つの「爆弾」、きれいに後始末できるのか?
◆「まっとうな投資家の投資機会を奪った」
そもそも政策目的で株を買っている中央銀行は、日銀だけ。まねをする国がないのは、問題が多すぎるためだ。
井出さんは「まっとうな投資家の投資機会を奪ったことが一番の問題だ」と強調する。
株価は本来、企業の業績や景気予測などに基づいた投資家の売買で決まる。将来の株価が上がると思ったら買い、下がると思えば売る。需要と供給によって適正な株価が決まっていくのが市場メカニズムだ。この原理を近代経済学の父アダム・スミスは「見えざる手」と呼んだ。
しかし、市場原理と無関係に、日銀は株安になると、ほぼ自動的に買い入れてきた。井出さんは「もう少し下がったら買おうと思っていた投資家は、目の前で機会を日銀にかっさらわれてきた。34兆円の含み益は、投資家からかすめ取ったものだ」と批判する。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/315637
バブルや仕手というのは初期の段階で乗ってすぐに逃げるということをしない限り大損する動きなのだから、そのままそういう状況で株式を長期保有してしまったら暴落に巻き込まれて含み益を全て失うどころか、巨額の含み損に転落してしまう。
バブルや仕手化した銘柄というのは高く買うことしかできないため、長期投資目的でそういう銘柄を買うことはあり得ないことであり、全員、短期売買目的で取引しているに過ぎない。
それはハイパーインフレで暴騰している株式も同様。
日本の投資環境が今後改善していくとは思えず、日本政府がこれからどのような経済政策を打ち出そうとも、既に安倍や岸田が食い尽くしてしまった感がある。
今後、日本企業の大幅な業績改善、大幅な成長、日本株の人気、投資人口のさらなる増加、といったことが起きることは考えづらく、どう見ても日本株は天井を打っているようにしか思えない。(金融セクターに関しては業績改善の可能性がある)
世界経済が今後、好景気になっていくと予想している者もほとんどいないし、それどころか中央銀行の金融緩和が限界に達し、経済が崩壊するといった予想が多い。
欧米は利下げ余地がかなりあるが、恐らくそれによる景気浮揚効果はあまり期待できないほど雇用や需要が悪化している。
量的緩和や質的緩和に関しては限界になっている。
【参考】
金融機関からの国債買い入れで、市場に大量の資金を供給することを「量的緩和」と呼びます。それに対し、買い入れる国債の期間を伸ばしたり、国債以外の元本保証がされていない資産を買い入れたりすることを「質的緩和」と呼ぶことが一般的です。
https://money-bu-jpx.com/news/article043237/
いくらでもインフレになっても構わないというなら、またリーマンショックやコロナショックの時のように大規模緩和策で株価を暴騰させることもできるが、そろそろインフレも許容範囲を超えてきている。
これまで、なぜ「~ショック」で株価が暴落した時にすぐ暴騰して上昇し続けてきたのかといえば、中央銀行の大規模緩和策によるところが大きく、それはインフレが深刻化すれば限界になる。(インフレをコントロールできなくなることは、中央銀行が自らの存在を否定しているような状態に陥る)
そもそも、日本株はこの1年で異常な上昇をしており、この時期にさらなる上値追いをし続ける者などいないはず。
(ゴールドを保有していても巨額の配当金が入ってくるわけではないが、ゴールドは株式のようなリスク資産ではないため、基本的に長期低迷することがない。値下がりしてもまた上昇するという安心感もある。中央銀行が大規模緩和をしなければ上昇しないものでもない。経済不安やインフレによって確実に値上がりするため、いつでも希望の額で現金化できる。仮に自国がハイパーインフレになったとしても資産を保全することにもなる。事実上、ゴールドを保有する以外に資産を保全する方法はない。)
【参考】
もし中央銀行が大きな損失を出し続けると、物価安定に関係なく、お金を発行し続けることになります。これでは、物価はどんどん上昇してしまいます。物価が上昇すると、同じ金額で買えるモノが少なくなっていきますので、お金の価値が下がってしまいます。価値が下がっていくお金なんて誰も持ちたくなく、中央銀行がお金を発行している意味がなくなってしまいます。政府とは異なりますが、これが中央銀行が潰れるということです。
・中央銀行は潰れない?
https://kwansei.repo.nii.ac.jp/record/30384/files/11.pdf
バークシャー・ハサウェイがこのところ株式を大量売却し、現金の保有比率を高めているが、これも今後、株式市場が上昇を続けると予想しているのであればやらないことだろう。
バークシャー・ハサウェイは円債の発行もしているが、これは上値追いのために資金調達しているのではなく、日銀の利上げ期待から「銀行や保険会社といった高配当バリュー株」を購入することが目的なのではないかと言われている。
しかし、実際には日銀が利上げに対してどのような方針を取っているのかが不透明であり、このまま0.25%という低い政策金利のまま終わり、円安が止まらなくなるリスクもある。
(自民党はあからさまに利上げ阻止の圧力をかけており、その上、貯蓄から投資へを加速させるなどと言っている。しかし、日銀が利上げしないのであれば円安は止まらないのだから、海外投資家に為替差損が生じ、最終的には撤退することになってしまう。そうなれば日本株の投資人口は激減することになり、最悪の投資環境になる。)
・追記
(為替ヘッジなしで日本株を買っている海外投資家がどの程度いるのかは分からないが、その場合は止まらない円安によってかなりの為替差損が生じる。しかし、実際には止まらない円安になっているのであれば、ヘッジをしようがしまいが、そういう国からは海外からの投資はなくなる。bloombergの9月時点での記事によれば、為替ヘッジを外した日本株投資が推奨されており、その後、急激に円安になってしまったため、損失が出ているはず。日米金利差が縮小していくことが既定路線になったのに、その後、要人発言や金融当局の方針転換などによって短期間に10円以上も円安になってしまったことで、投資家は為替に振り回される形で損失を被った可能性が高い。2024/10/25)
【参考】2024年9月10日の記事
BNPパリバ・アセット・マネジメントのマネーマネジャー、ウェイ・リー氏は低金利の円を売り、高金利のドルを買う「円キャリー取引の解消が進んだため、さらに円高が急激に進み、日本株に悪影響を与えるリスクはかなり後退した」と分析。現時点では、円高によりドル建てでのリターンが高まることが期待でき、「為替ヘッジなしで日本株に投資することを推奨している」と言う。
7月までの円安は、海外勢が日本株に投資する際の悩ましい問題の一つだった。円安は日本の輸出セクター企業の業績を押し上げる半面、ドル建てベースの日本株の資産価値は目減りするためだ。この悩みを和らげる一つの手段が為替ヘッジ付きの投資で、一般的に円を外為先渡し取引(フォワード)で売却し、円安による影響を相殺するケースが多い。
ドル建て投資家の場合、この為替ヘッジ取引で近年は年率5-6%のプレミアムを稼ぐことが可能だったため、キャリー収益面の魅力も大きかった。ヘッジプレミアムと東証株価指数(TOPIX)の配当利回りを合算すると、昨年のピーク時には8%超と、配当利回りが1%台の米S&P500種株価指数と比べ優位性があった。
ヘッジプレミアムは日米金利差が大きければ大きいほど拡大するが、ここにきて金利差は縮小方向にあり、プレミアムも低下傾向だ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-10/SJIUROT1UM0W00
【参考】2024年4月5日の記事
証券会社を通じた委託の取引全体に占める売買代金シェアは、海外勢が6〜7割にのぼる。日本株の相場動向に与える影響が大きい。2023年春以降は企業の資本効率改善を期待した海外マネーの流入が膨らみ、日経平均株価が史上最高値を更新する原動力になった。3割近くを占める個人も24年初からの新NISA(少額投資非課税制度)開始で存在感を高めている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB049XE0U4A400C2000000/
【参考】2024年7月2日の記事
東京証券取引所など国内の4証券取引所は2日、2023年度の株主分布状況調査を発表した。金額ベースでみた外国人の日本株の保有比率は31.8%と、比較可能な1970年度以降で過去最高になった。22年度は30.1%だった。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB022T70S4A700C2000000/
【参考】2024年5月22日の動画
「株価が高騰し続け、企業の評価額が過剰になっているため、バフェット氏は適切な価格での買収が難しいと感じています」
「バフェット氏は、巨額の現金を保有することで、相場の急変時に大規模な投資機会を逃さないよう備えています」
・市場への警告? バフェット氏の現金戦略を読み解く
https://www.youtube.com/watch?v=xqye_Cy6QHU
【参考】2024年10年10日の記事
フィリップ証券の株式部トレーディング・ヘッド、増沢丈彦氏は、今年の発行額の大きさから日本株上昇へのバークシャーの期待がうかがえると指摘。市場は次にどのような銘柄が投資対象になるかに注目しているとし、銀行や保険会社といった高配当バリュー株が最有力候補との見方があると述べた。
・米バークシャーが円建て債発行、2818億円調達 3─30年債の7本
https://jp.reuters.com/markets/bonds/N4IK4XVHXBP4VEI2JI556FKLVY-2024-10-10/
「円安は国益」などと言っている者はハイパーインフレになっている国と同じ発想になっている。
これはつまり、「俺は外貨で稼いでいるからいくら自国通貨が暴落したって構わないの」と言っているのと同じことであり、自分の富のためなら自国をいくらでも潰してやるといった態度を取っていることになる。
確かにハイパーインフレになってしまったら強い外貨を持つことが最も安全になるのだから、自分の利益を追及することが善であるとするならそれが正しいことになるが、そのために国を潰しても構わないというのはさすがに異常だろう。
輸出企業や海外展開している企業、強い外貨を持つ者(外国人観光客や海外のハゲタカなど)、海外に資産を持つ者、はドル円が200円、300円、あるいは500円にまで大暴落することを願っているのかもしれないが、実際にそうなってしまうと現在、日本株に投資している外国人投資家や日本市場でビジネスをしている外資系企業は巨額の為替差損が生じるため、それだけでも大混乱に陥る。
当然、内需系企業も打撃を受ける。
・追記
(為替ヘッジは極端な通貨安に対応できることではない。2024/10/25)
【参考】
「為替ヘッジをしても短期的で急激な為替相場の変動には対応できない場合もある」
https://www.dlri.co.jp/report/macro/351060.html
【参考】
「主なリスクヘッジの期間は3か月としている企業が多く、この為替ヘッジ期間を超えた為替変動の収益への影響を回避できるわけではない」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202206/202206k.pdf
【参考】2024年2月2日の記事
円安は、外資系企業や海外の製品・素材で商品を展開するNB企業を直撃している。コスト高を受け、各社は厳しい状態が続いている。特に、原材料費・物流費の高騰による、製品価格の値上げが23年から相次いでいる。
https://www.bci.co.jp/nichiryu/article/14356
最近、トルコの株価指数が下落傾向にあるが、そろそろ限界に達したのかもしれない。
株式を売却して現金化し、金、銀、ビットコイン、不動産、外貨などに資金をシフトする動きが始まっている可能性がある。
通貨の暴落を伴う株価の暴騰をしているのは、アルゼンチン、トルコ、日本ぐらいだが、いずれも同じような動きになるのかもしれない。(日本はまだハイパーインフレにはなっていないが、ハイパーインフレ的な発想で政策を進めている。)
通貨が紙くずになってしまった場合、そもそも自国通貨建て資産を持っていても貧しいことに変わりはないため、どうしても外貨を稼ぐ必要が出てくる。
そうして、企業や富裕層は自国を見限り、どんどん国は衰退し、貧しくなっていく。
実態としてはインフレ率2%という数字には違和感があり、どういう数字の出し方をしているのかが分からない。
多くの食品、日用品、エネルギーなどの価格が短期間に数十%程度は上昇しているため、かなり生活に問題が出ている。
それ以外にもあらゆる物・サービスの値段が高騰しており、この物価高は消費全般に悪影響を及ぼしていることは間違いない。
2%というのは「変動が大きい生鮮食品を除いた消費者物価指数」(コアCPI)での数字ということになっているが、生鮮食品を除いても、とても2%台で推移しているようには思えない。
結局、政府・日銀としては内需はどうでもよく、海外でビジネスをしている者や株価のことが最も重要だということになるのだろう。
つまり、政府・日銀は国内経済(内需)よりも「投資の国、ニッポン」を経済政策の柱にしており、虚業で稼ぐことを念頭に置いているかのような態度を取っている。
インフレは失業率を低下させるというフィリップス曲線というものがあるが、実際にはインフレによって好景気=失業率の低下になるのではなく、賃金構造・労働市場の改革による賃金上昇がデフレ脱却や消費行動の改善になり、いわゆる「好循環論」には誤りがあるのではないかと言われている。
非正規雇用、引きこもり(社会から抹殺された層)などの問題が経済に深刻な影響を及ぼしているのであって、インフレになれば好景気になるという認識は現実からかけ離れている。(当然、人口減少にも拍車が掛かるし、安い外国人労働者にもっと頼ることになる)
円安になればインフレになるが、それで豊かになっているのは海外でビジネスをしている者と巨額の海外資産を保有している者だけであるはず。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77849?pno=2&site=nli
【参考】2024年10月18日の記事
新米が登場しても、コメの価格の上昇が止まりません。
モノやサービスの値動きを測る9月の消費者物価指数は、変動が大きい生鮮食品を除いた指数が2023年の同じ月と比べて2.4%プラスで、37カ月連続の物価上昇が明らかになりました。
上昇した品目数は522品目中394と拡大しました。
在庫不足が続いていたコメは44.7%の上昇で、1975年9月以来、49年ぶりの上げ幅です。
新米が出ても、生産コストや運送費が上がり価格の高騰は続いていて、おにぎりも4.9%アップしています。
https://www.fnn.jp/articles/-/77454
【参考】
・日本のインフレ率の推移
https://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html
【参考】2024年3月11日の記事
独占や規制がない限り消費者は、効用を満たす価格を支払う。消費者が値上げを受容しないのは、価格が効用に見合わないからである。価費者が値上げを受容するのは図表の破線のように需要曲線が上方シフトする場合であるが、通常はこれは所得が増加し予算制約も緩和した場合に実現する。これは消費者がデフレマインドをあらため値上げを受容するのは、インフレではなく所得の増加であることを示している。
所得増加の展望のないなかでデフレマインドの脱却を訴えることは生活実感から批判も浴びよう。一方企業行動も、ステルス値上げのような歪んだ対応がある一方、新製品等による高付加価値化なのどの望ましい対応もみられ、そうした製品は総じてマークアップの上昇に成功している。インフレによる既存品の値上げではなく高付加価値化による収益率のアップこそが重要である。日本企業には伝統的に「良いものを安く供給する」という経営哲学がありそれを批判することにも慎重さが求められるように思う。
現在のわが国の消費不振は、所得の増加の停滞とともに、円安による輸入物価の高止まりなどいわゆる交易条件の悪化による影響もある。政策的には円安の是正も必要であろう。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77849?pno=2&site=nli
※現在、日本とアメリカが行っている政策は1920年代の状況と酷似している。
日本の投資ブーム、20兆ドルにまで膨らんだといわれる円キャリトレード、アメリカのAIバブルによる過剰投資、アメリカの各種ローン問題(無理のある信用販売)、中国に対する半導体輸出規制、などと重なる点が多い。
【参考】(世界史の窓より)
アメリカ発の世界恐慌
アメリカの投資家(株主)たちは、湯水のようにつぎ込んでいた資金を回収できないのではないかと不安になり、株価の値下がり前に売ってしまおうという心理が一斉に働いて、1929年10月24日(木曜日)に、ニューヨークのウォール街にある株式取引所で一斉に株価が暴落した。企業に投資していた銀行に対し、預金者は一斉に預金を引き出しに殺到し、支えきれなくなった銀行が倒産。融資のストップした企業は倒産し、工場は閉鎖され、労働者は解雇されて失業者があふれた。有効需要はますます低下し、さらに不況が続くという悪循環に陥った。当時のアメリカ共和党フーヴァー大統領は不況は周期的なもので、景気はまもなく回復すると考え、また「自由放任主義」、つまり市場原理に任せておけばいいという従来の共和党の基本方針を守ったため対応が遅れることとなった。
アメリカの経済不況の要因と背景
アメリカの恐慌発生の要因と背景としては次のようなことが考えられる。
・1920年代の戦後好況の中で資本・設備への過剰な投機が行われ「生産過剰」に陥った。
・農産物も過剰生産のために価格の下落する農業不況が起こり、農家収入が激減、国内の有効需要が低下した。
・各国とも自国産業の保護のため、高関税政策(保護貿易主義)に転換したので、世界市場の拡大も阻止されていた。
・同時にアジアの民族資本の成長、ソ連社会主義圏の成立などで、アメリカの市場が縮小していた。
・企業が生産を減少させたため失業者が増大、さらにそのため購買力は減退し、さらなる生産減少をもたらすという悪循環に陥った。
生産過剰
1920年代のアメリカ合衆国の戦間期で資本主義の矛盾が強まって起こった経済現象で、1929年に始まる世界恐慌の主要な原因と考えられる。アメリカは第一次世界大戦で高まった需要に対し、設備投資を続けた。自動車、住宅などからラジオ、洗濯機、冷蔵庫といった電機製品、さらに化粧品などの新たな消費財が大量に生産され、セールスマンと大量広告という新たな販売促進法と月賦販売という信用販売が使われるようになったことで大量消費(必要以上に消費する傾向)に拍車がかかった。1920年代後半には早くも商品は飽和状態となり、農業不況も加わって購買力も低下し始めた。しかし、企業は株式ブームという過剰な投機によって支えられ、さらに増産を続けた。このように1920年代のアメリカ経済の繁栄を支えていたのは、信用販売と株式による資金調達という、いずれも需給関係の実態から離れた手法によるものであった。
過剰な投機
1920年代のアメリカ経済の好況の中で進んだ株式投資ブームの加熱などの状況。1929年、その反動として起こった株価暴落が世界恐慌の引き金となった。第一次世界大戦後、世界の金はアメリカ合衆国とフランスに流れこんできた。特にアメリカは流入する金と、イギリス・フランスからの戦債の返済によって潤沢な資金を抱えることとなった。銀行はあまった資金を株式仲買人に貸し付け、仲買人はあらゆる人びとに株を買うことを勧め、株式投資ブームが起こり、1929年春から夏にかけての「大強気」相場がピークに達した。しかし、購買力の低下と過剰生産のギャップも一般人に知られることなく激しくなっていた。投機的な売買でつり上がった株価と、企業の経営実態は、人知れずかけ離れてしまっていた。ようやくそのことに気がつき始めた一部投資家が株の投げ売りを始めていた。株価はやがて「大天井」をうち、1929年10月24日の「暗黒の木曜日」に、一気に猛烈な売りが殺到し、世界恐慌が始まった。株式ブームの実態はつぎのようなことであった。
(引用)「コロンブスもワシントンもフランクリンもエジソンもみな投機家だった」ということばで人びとは投機の危険性を忘れ、「誰もが金持ちになるべきだ」という題名の文章でジョン=ラスコブは、人が一ヶ月にほんの15ドルを節約してこれを優良株に投資しすれば、配当金などを別としても、20年後には少なくとも8万ドルの金を手にすることができ、この投資から受ける収入は少なくとも月額四百ドルになる、と説いた。また会社どうしが株を持ち合い、実際の株の価値については誰もわからなくなった。投資信託も急増し(なかには詐欺まがいのものあった)、セールスマンが株を売りまくった。その投資会社の株も高値で売られ、資本の巨大なピラミッドが出来上がった。人びとは仲買人の言うことを信じるほかなかった。「雑貨屋、電車の運転手、配管工、お針子、もぐり酒場の給仕までが相場をやった。反逆しているはずの知識人さえも、市場にいた。」<F.L.アレン/藤久ミネ『オンリー・イエスタディ』1932 ちくま文庫 p.406-415>
https://www.y-history.net/appendix/wh1504-001.html
【参考】2024年10月22日の記事
【シリコンバレー=清水孝輔】米マイクロソフトは21日、人工知能(AI)が自律的に判断して業務を支援する機能を幅広い企業が使えるようにすると発表した。担当者が細かく指示しなくても、顧客とのやり取りといった作業を担える。AIの収益性に懐疑的な見方が出るなか、企業の業務改善に役立つ機能を示して利用を広げ、投資回収を狙う。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21CIJ0R21C24A0000000/
※日本経済はトルコ化しているのかもしれない。
【参考】2023年6月30日の記事
ポールさんが泊っているホテルに、オガワさんという方が2018年に旅行した際の体験記が、『地球の歩き方』という本に書かれていて、それを見ると、2018年の物価はなんと、今の10分の1未満だったそう。それだけモノの値段が上がっていることをポールさんは実感して、木村さんも「えーっ!」と悲鳴を上げていた。
そして、ポールさんがバザールに行くと、3種類の店がほとんどだったそう。3種類の店というのは、バッグの店、金と宝石の店、ビットコインの店で、ハイパーインフレでも価値を保つモノを、トルコ人は好むのかなとポールさんは分析していた。
また、トルコリラは、米ドルを持っている人にとって特に安く、ユーロを持っている人にとっても安いとポールさん。そういった旅行者は、トルコの物価の安さを感じていて、買い物をするときも値段をそんなに見なくていいくらいだそうだ。 そして、それは米ドル/円が144円まで上昇した日本にも、同じことが言えるとポールさんは指摘した。 トルコの人がトルコの株とトルコの通貨しか持っていなかったら、大変なことになるというポールさんの意見に、渡部さんも深く納得。同じことが日本に起きてもおかしくはなく、日本は金利を引き上げることに企業や社会が耐えられるかは未知数で、そうなると通貨がもっと安くなるかもしれないとポールさん。その対策としては分散投資しかないと結論付けた。
https://diamond.jp/zai/articles/-/1018600
【参考】2023年09月03日の記事
トルコは世界有数のハイパーインフレ国家だ。あらゆる物の価格が急上昇する中、特に市民へのインパクトが大きいのは家賃で、最大都市イスタンブールでは過去2年間で3倍以上に急騰した物件も珍しくない。市民の悲鳴を受け、家賃の引き上げ幅を年間で25%に制限する法律が2022年6月に施行されたが、大家の多くは「インフレ率を大きく下回る値上げ幅にとどめられるわけがない」と訴え、法律を無視。借り手と大家の間にトラブルが絶えず、殺人事件に発展したケースもある。(時事通信社イスタンブール支局 吉岡良、ハジェル・セズギン)
・家賃急騰、2年で3倍 トラブルで殺人事件も 超インフレ下のトルコ【地球コラム】
https://www.jiji.com/jc/v8?id=202309world
【参考】2024年5月27日の記事
「日本円のトルコリラ化」の続きを申し上げると、トルコリラ安が続くなか、外国資本の大半がトルコ株から撤退しました。だから、いまのトルコ株はトルコ人が買っているだけです。 日本の場合も、今後も円安政策を続ける、あるいは加速させるならば、外国から日本に資本が来なくなります。 なおかつ日本人の資本が外国に逃げます。
https://president.jp/articles/-/81691?page=4
【参考】2024年3月15日の記事
円安・ドル高に終わりが見えません。円安は、日経平均株価が史上最高値を更新した理由の一つだといわれていますが、その分析は正しいとは言えません。直近では投資家のポジション調整に伴う円高がやや進みましたが、それでもこの水準の円安が続けば日本経済に深刻な悪影響をもたらすでしょうし、日本株の相場好調に水を差すことにもなりかねません。
そもそも、なぜここまで円安が進んでいるかを整理しておきましょう。背景には構造的な要因が1つと、需給面での要因が3つあると考えられます。
構造的な要因とは、今の日本が輸入に依存する内需型の経済になっていることです。従来のイメージと異なり、日本の輸出依存度は世界の中でも低く、15%程度です。一方で輸入依存度は高く、エネルギーの94%、食料の63%を輸入に頼っています。
それだけではありません。日本の各分野で今、急ピッチでデジタル化が進んでおり、AI(人工知能)やクラウドサービスなどの利用が急増しました。これらを手掛けるのは全て海外企業であるため、海外に流出する利用料が膨れ上がり、円安圧力となっています。
一方でインバウンド(訪日外国人)消費の増加は円高圧力であり、その規模は年間5兆円に達していますが、輸入の増加には及びません。日本は構造的に貿易赤字が定着していく可能性があります。
この構造的要因に、3つの需給的な要因が上乗せされます。まずは日米の金利差を背景に、機関投資家が円を調達して高利回りのドル資産を買うキャリートレードが増えていること。2つ目は、新しい少額投資非課税制度(NISA)の追い風もあって、日本人による海外投資が増えていること。
3つ目の需給要因は、日本株を買っている海外機関投資家が、円安による為替差損を避ける(ヘッジする)ために円を売ることです。ちまたでは「海外勢は円安で日本株が割安だから買っている」とする分析が多いのですが、実際の行動は順番が逆です。「株を買うからこそ、円を売っている」なのです。
政府や日銀が本気で通貨防衛の姿勢を見せれば、海外勢もこの水準から円売りヘッジをせず、円安トレンドは止められるでしょう。しかしその姿勢は見えません。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB13BC30T10C24A3000000/