2022年9月に財務省が1度目の為替介入を行った際は、145.91円から140.35円まで円高になったが、すぐにまた円安方向に動いた。

そして2022年10月に再度介入し、その2度目の介入の際に151.96円で天井を打ち、127.22円まで円高が進んだ。 

2022年に財務省が2度目の介入を行った直後からなぜかドル円は約25円程度も円高が進行したが、その主な理由は「行き過ぎた米ドル買い・円売りの反動の影響が大きかった」と言われている。(当然、介入だけでそこまで円高になったわけではない)

そして今回も投機筋のポジションは「行き過ぎ」と言われる17万枚を超える売り越しとなってきており、しかも日米金利差も縮小している中での円売り進行となっているため、いつドル円の一方的な動きが崩壊してもおかしくない状況になっている。

 

2024年4月29日に160円付近で、5月1日に158円付近で財務省は介入を行ったが、現在、ドル円は161.77円まで円安が進行している。

恐らく、財務省は4月29日と5月1日に介入を行う際に、博打的な感覚や我慢の限度といった理由で挑んだわけではなく、2022年に介入した時と同様に、何らかの自信があって160円付近で介入したのだろう。

そうなのだとすれば、年内にドル円が170円といった水準まで行ってしまう可能性は低く、近いうちに(恐らく半年以内に)かなりの円高になっている可能性が高い。

 

また、政府がレパトリ減税を実施すればそれだけでも円転をかなり促す効果があると言われているため、もしそのような政策を打ち出すのであれば、それなりにドル円は円高になるらしい。

【為替】財務省、経産省共通の問題意識から、レパトリ減税の可能性はあるのか?- マネクリ

 

さらに、トランプ前大統領は自分が大統領だった時、FRBに対して利下げを強く要求していたことがあり、もし今回の大統領選でトランプ政権が復活するのであれば、やはり利下げを要求し、ドル安に誘導するのではないかという予想もされている。

本来であれば政治が中央銀行に圧力を掛けて金融政策に影響を及ぼすというのはあってはならないことらしいが、バイデン大統領もFRBのことを「金利を決定するあの小さな組織」などと言い、利下げを期待しているような発言をしていたこともあった。

結局のところ、誰が次期大統領になるのだとしても、来年にFRBが利下げしないということは非常に考えづらいため、大方の予想通り、来年は4回程度の利下げをし、大なり小なり円高ドル安になっているのだろう。

 

来年に予想通りの利下げをしていくのであれば、円キャリートレードの巻き戻しも大なり小なり起きることになるため、これも円高要因になる。

 

来年は様々な面で円高になる要素があるため、今の円安の流れがいつまでも続くことは考えづらく、今は、かなり投機的でハイリスクなラリーをしているのかもしれない。

 

※日銀は国債買い入れについて減額する方針を示しているが、これによって日銀とFRBのバランスシートの差が縮小することになるため、それも円高要因になるらしい。

現状「毎月6兆円」購入しているが…国債買い入れ減額方針の日銀、今後1~2年の“ビジョン”は【マクロストラテジストの見解】 - The Gold Online

 

 

【参考】2024年5月1日

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トランプ前大統領の側近らが、同氏が再選する場合、いわゆる「もしトラ」に備えて、同氏が望んでいるFRBの独立性を弱め、金融政策決定において大統領の権限を強める改革案を策定している、と報じている。

現時点では、トランプ前大統領は、「バイデン大統領の再選を助けるために利下げを行おうとしている」と、FRBのパウエル議長を批判している。しかし、トランプ政権期には、同氏はパウエル議長に利下げを強く要求していた。それには、利下げによる景気浮揚効果を期待するとともに、ドル安を通じて国内産業を輸入品から守るという保護主義的な考えもあった。トランプ前大統領が再選されれば、再びFRBの金融政策への介入を通じてドル安誘導を行う可能性は高いだろう。 

トランプ前大統領は、日ごろから低金利を支持しているとアドバイザーらに述べる一方、大統領がFRBの政策に影響を及ぼすことができないことに強い不満を表明していた、とされる。今回のFRB改革案は、そうしたトランプ前大統領の考えを強く反映したものだろう。

もしトラでFRBの独立性が大きく脅かされるリスクが浮上:中央銀行の独立は人類の英知の産物 - NRI

 

【参考】2024613日の記事

FOMC参加者の予測中央値によれば、25年に4回の利下げを予想。利下げ回数は従来予想(3回)から増えた。

FOMCは金利据え置き、24年利下げ予想1回に減少-来年は4回 - Bloomberg

 

【参考】

海外の金融当局が利下げを実施した場合、海外資産で運用利回りを上げることが難しくなることから、円キャリー取引を行っている投資家は、運用していた海外資産を売却して得た外貨を円に替えて返済することになります。これは円高要因となります。

円キャリー取引は、日本の超低金利により内外の金利差が拡大したことから、海外のヘッジファンドを中心に近年盛んに行われるようになりました。その後は、海外で利下げがあるたび円キャリー取引解消のための「巻き戻し」と呼ばれる円買いで急激な円高が何度か起きています。また、近年では円キャリー取引を行う投資家の動向が為替相場の方向性を予測する上でも注目されるようになっています。

円キャリー取引 - SMBC日興証券

 

【参考】

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-24/SBTEGUT1UM0W00

 

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-31/SEBJ6BT0G1KW00

 

【参考】2023年7月7日の記事

米ドル急落はそれまでとは異なり、米金利と大きくかい離する形で広がった。 

では、なぜそれまでと異なり、米金利からかい離する形で米ドル急落が起こったのか。それは、行き過ぎた米ドル買い・円売りの反動の影響が大きかったのではないだろうか。ヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、当時10万枚以上の売り越しとなり、経験的に円の「売られ過ぎ」懸念が強い可能性を示していた。それが逆流、米ドル売り・円買いとなったことで、米金利との関係を超えた米ドル急落が起こったのではないか。


【為替】円安終了後、円急騰となった2022年 - マネクリ

 

【参考】2024年7月2日の記事

円売り越しが17万枚以上を記録したのは、これまでは2007年の2月と6月、そして2024年4月の3回しかなかった。この3回は全て、円売り越しが17万枚以上で拡大が一巡し、その後は比較的大きく縮小に向かった(図表2参照)。この背景には、極端に米ドル買い・円売りに傾斜したことへの懸念も一因としてあったのではないか。

普通は円売り越しが10万枚以上に拡大すると「行き過ぎ」懸念が強くなるということだろう。そうした観点からすると、円売り越しの17万枚以上というのは、極端な「行き過ぎ」が懸念される水準と考えられる。 

このような米ドル買い・円売りの極端な「行き過ぎ」が、2007年とこの2024年に起こったのは、この両年の日米金利差米ドル優位・円劣位が突出して大幅なものだったことの影響が大きかっただろう。日米政策金利差で見ると、2007年と2024年はともに、米ドル優位・円劣位が5%程度と大幅な状況が長期化していた。これは短期売買を行う投機筋にとっては、円買いに不利な一方で円売りには圧倒的に有利だろう。   

そうした中で、2007年と2024年に投機筋の円売りは極端な「行き過ぎ」、いわばバブル化に向かった。ただ円売りバブルも、CFTC統計の投機筋のデータを見ると、これまでは17万枚以上に拡大したところで縮小に転換してきた。以上のように見ると、先週17万枚を超えてきたことで、行き過ぎた投機円売りが転換に向かう可能性も徐々に近づいてきたのではないか。 

米ドル/円は、5月以降日米金利差から大きくかい離して上昇傾向が続いてきた(図表4参照)。これを正当化してきたのは、日米金利差縮小にもかかわらず続いた投機円売りが大きかったと考えられる(図表5参照)。投機円売りが「行き過ぎ」懸念も強まる中でさらにどこまで続くかは、米ドル高・円安の行方を考える上で鍵を握ることになりそうだ。

 

【為替】「行き過ぎ」懸念強まる投機円売り - マネクリ

 

 

 

 

 

・おまけ

カカオの生産はこのところ壊滅状態になっており、カカオの先物価格が暴騰していたが、これも投機的な面があったらしく、ある日突然暴落し、「カカオクラッシュ」と呼ばれる投資家の撤退の動きがあった。

上がる理由があるのだとしても、それに投機が絡むと異常な暴騰や暴落が起きることになるようだ。

以下のnoteの記事によれば、カカオ豆の先物価格は1日に16%や21%も下落した日があり、非常に荒い値動きになっていたらしい。

カカオクラッシュでも終わりそうにないカカオショック - note

 

https://jp.investing.com/commodities/us-cocoa-streaming-chart