株というのは安く買って高く売らなければ利益にならない。

わざわざ高く買って上昇させ、その後、高値を維持するために買い支えるようなことをしていれば後で必ず大変なことになる。

昔からそういうことをしていたようだが、今もまた同じことをしている。

本当に強い銘柄であればそのような仕掛けや相場操縦などをする必要はないが、正当な理由なく暴騰している銘柄というのは、それだけ弱い銘柄だからこそ相場操縦の対象にされている。

バブルで上昇した資産にも、実力を伴う銘柄とミーム株のような銘柄がある。

ミーム株の場合は、面白がって参加していた者がいなくなって元の水準まで戻ってからは、もう爆発的な上昇になることはない。

チャートだけで株式市場を見ているとすぐに騙されるため、歴史を見る上で参考にすることはあっても、分析で利用することはしない方がいいように思える。

 

今はゴールドが上昇しているのにドルも上昇している。

また、ゴールドを好む者は株式を嫌い、株式を好む者はゴールドを嫌うが、それらも両方とも上昇している。

実物資産はゴールド以外にも、一部で不動産価格も上昇しているし、高級機械式腕時計なども上昇していた。(商業用不動産に関しては欧米を中心に壊滅状態になっている)

スイス高級時計、「輝かしい」ブームにお別れ-消費者心理に変化 - Bloomberg

24年路線価は2.3%上昇、3年連続プラス 人流回復と観光需要で=国税庁 - Reuters

マンション価格上昇率、東京・大阪が世界首位- 日本経済新聞

暗号資産、銅やカカオなどの商品なども上昇していた。

なぜエブリシング・バブルが発生したのかというと、日本の超低金利政策とアメリカの急激な利上げによって誘導されている円キャリートレードが主な原因だが、恐らくアメリカの都合でそうなったのだろう。

円キャリートレードは約20兆ドル(約3000兆円)規模にまで膨らんでいる。

日本を滅ぼす20兆ドルの円キャリートレード!? - トウシル

本来であればゴールド、不動産といった実物資産の価格だけが上昇するべき時なのに、アメリカでは大統領選や金融機関などの都合でAI関連銘柄を牽引役にして株高を演出し、日本ではわけもなく積極的に「投資を」といった流れで預金口座から証券口座への資金移動を促し、バブルになった。(円安バブルにもなっている)

つまり、化けの皮を被っているのはドルと株式の方であり、ゴールドの方ではない。(日本のバブルは日銀の都合で発生させた可能性もある)

 

既に円の投機的ネットポジションは歴史的な水準に達しており、かつて2007年に記録した18万枚に匹敵する売り越しになっている。

これも「円売りバブル」と言われていて、2007年に円売りバブルになった時はサブプライムショックによってバブルが崩壊し、一転して円買い方向になり、2007年6月には1ドル124円だったのが2008年3月には1ドル95円まで円高が進行し、2010年10月には1ドル80円になった。

さらに、2011年3月の東日本大震災で1ドル76円まで円高は進んだ。

2007年当時と比べて、今のドルは割高になっているために円売りバブルにはなりづらいのではないかと言われていたが、実際にはドルが割高であるにもかかわらず円売りポジションは拡大し続け、為替レートとしても、ポジションサイズとしても天井が意識される水準になっている。

現時点でエブリシング・バブルは崩壊しつつあり、まだバブル崩壊していないのは為替、株式、不動産、暗号資産だが、これらはいずれも今年の後半から来年にかけて暴落する可能性が高い。

不動産には「2025年問題」があり、2025年以降、相続による不動産売却が増えることで空き家が増加し、空き家が不動産市場に出回ることで価格が下落しやすくなる。

また、不動産を購入する世代である30代の人口が減っていき、東京都の例を見ると、2015年から2025年までの間に29万人以上の30代の人口が減ると言われている。

相続による空き家の増加、若い世代の減少、地方から都心への移住、などの要因で不動産価格の下落は特に地方で顕著になり、それが相場全体にも影響することになるらしい。

不動産の2025年問題とは?大暴落はするの?不動産や住宅価格は今後下がる? - お家のいろは

恐らくゴールドが暴落することはなく、ゴールドはバブル的な上昇をしているのではなく、様々な信用不安や地政学的リスクなどから保有額を増やしている。

もしゴールドが暴落気味に下落したとしても必ず買われることが予想されるため、またすぐに上昇が始まることになる。

 

・米国商品先物取引委員会 円 投機的ネットポジション

https://jp.investing.com/economic-calendar/cftc-jpy-speculative-positions-1614

 

・ドル円 為替チャート


https://jp.investing.com/charts/forex-charts

 

【参考】2024年2月21日の記事

CFTC統計の投機筋の円売り越しの最高は2007年6月に記録した18万枚。これが極端に行き過ぎた円売り、円売り「バブル」の代表例だろう。 

当時とは大幅な金利差など類似点があるため、今回も円売りの「バブル化」リスクは要注意。しかし、今回はすでに米ドルが割高など当時との違いもある。

これまで見てきたように、今回はすでに米ドルの割高リスクが強いことなどから、円売りの「バブル」拡大も2007年ほどにはならないと考えられる。しかし、大幅な金利差などを理由に、2007年に近づく可能性はあるだろう。円売り「バブル」が膨らめば膨らむほど、それが破裂した後の円高への反動リスクも大きくなる可能性には注意が必要になりそうだ。

【為替】円売り「バブル化」、2007年との類似と違い - マネクリ

 

 

 

The Gold Onlineの記事によれば、日銀は現在、毎月約6兆円程度の国債買い入れをしているが、それを減額していく方針を示している。

国は毎月約6兆円程度の国債を日銀に償還しているため、日銀が国債買い入れ額を減らすと日銀のバランスシート(純資産額)は減っていく。

(某議員は「日銀は政府の子会社だから借金を返さなくてもいいの」と言っていたが、実際にはちゃんと償還されている)

日銀が保有する国債(資産)が減ると負債である当座預金も減ることになり、それは量的引き締めに該当する。

今後、日銀が量的引き締めに向かっていくことでFRBと日銀とのバランスシートの差が縮小することになり、いくらか円高方向に向かいやすい環境になっていく。

現状「毎月6兆円」購入しているが…国債買い入れ減額方針の日銀、今後1~2年の“ビジョン”は【マクロストラテジストの見解】 - The Gold Online

日銀は利上げを予定しているが、利上げに伴う当座預金への付利の増加によって0.6%で経常赤字になり、2.8%で債務超過になると言われている。

そのため、それほど大幅な利上げをすることはできず、日銀は利上げの過程で保有する資産を減らす必要もある。

日銀の令和5年度決算:利上げによる逆鞘の発生が近づき、日銀の財務の安定性が試される局面に - NRI

(利上げによって企業の倒産、住宅ローン問題、政府の利払い増もあるため、なおのこと利上げしづらい。)

日銀は利上げし、FRBは利下げしていくことは確かなのだから、これから日米金利差は縮小していくことになる。

日米のバランスシートの差が縮小し、日米金利差も縮小していくことになるのだから、大なり小なり、今後は円高方向になるはずだが、円キャリートレードの魅力が続く限り、現在の円安方向はなかなか変わらないのかもしれない。

また、日本株が上昇すると円売り為替ヘッジによって円安になる分もあるらしい。

日本企業の海外への直接投資によって得た利益を円転せず、そのまま海外事業に外貨を使ってしまっていることも円高になりにくい要因だと言われている。

日銀は保有するETFによって毎年約12000億円もの分配金を受け取っているが、企業側が減配すればその額は減っていくことになるため、かなり長期にわたってETFを保有するつもりはないのだろう。

そもそも中央銀行が37兆円もの自国株式を保有していること自体、異常なことなのだから、遅かれ早かれ正常化していくはず。

少なくとも、保有しているETFで高く買った分は早期に処分し、安く買った分は保有し続けるだけでも取得平均を低くでき、ポジションサイズも小さくできるのだから、その場合は長期保有もしやすくなるため、それぐらいはやれば良さそうなものだが、未だにやっていないらしい。

 

【参考】

「日経平均株価(日経225)」は、東証一部に上場する225銘柄の平均株価指数(配当を含まない)です。したがって、各銘柄の権利落ち分だけ平均株価を押し下げることになります。多くの日本の企業は、3月決算、9月中間決算で月末が権利確定日のため、39月末近くの権利落ち日には日経平均株価が下落しやすい傾向にあります。

配当は予想ベースで基準価額に反映されます。例えば、3月決算の企業が決算短信等で減配を発表した場合、当該銘柄を保有していて既に未収配当計上しているETFの基準価額は、速やかに予想配当額の減額修正が反映されます。ちなみに、対象指標である日経平均株価指数も、配当額確定の翌営業日に修正されるため、ETFの基準価額の修正タイミングとほとんど差異がありません。

日経平均株価の配当落ちによって、ETFの値動きはどうなるの?【深掘りETF⑦】- NEXT FUNDS

 

【参考】 

日本銀行が資金供給オペを実行すると、負債サイドの「当座預金」が増加します。 

一方、日本銀行が資金吸収オペを実行すると、負債サイドで「当座預金」が減少します

日本銀行のバランスシートについて - 日本銀行

 

 

 

過去にアメリカで大規模なレパトリエーション(本国への資金還流)が起きた際にドル円は103円から118円に円安が進行したという記事がある。

現時点で日銀が大幅な利上げをすることは考えづらいため、政府がこの異常円安を止めるためにレパトリ減税を実施し、日本企業の海外資産が円に戻る動きを促す可能性がある。

また、アメリカでは今年は利下げを1回だけにし、来年に4回の利下げをすると予想されているが、その通りの金融政策になるのであれば、今年の年末ぐらいから円キャリートレードの巻き戻しが起きることになる。

元々、アメリカでの利下げは株価の暴落を引き起こすと言われているが、それは円キャリートレードの巻き戻しが大規模に起きた場合にそうなるのだろう。

本来であれば今年、3回の利下げをするはずだったが、「金利を決定するあの小さな組織」は大統領選に配慮して利下げを来年に先送りしたようだ。

さらに、もしトランプ政権が復活すれば円安ドル高を問題視し、FRBの利下げが加速する可能性もある。

左派のメディアであるThe New York Timesですらバイデン大統領に出馬競争から撤退するように求めているため、恐らくバイデン政権に2期目はなく、仮に別の民主党の候補者が出てきても支持を拡大できなければもう一度トランプ政権が誕生することになるのだろう。

民主党の幹部達も今回の討論会を受けてパニック状態に陥っていると言われている。

バイデン大統領をこれまで支持してきたリベラルメディアからさえも総スカン 日曜日(アメリカ時間)に撤退か否かを家族会議の予定【石川雅一のYOUTUBEシュタインバッハ大学】

 

【参考】 2024年4月19日の記事

ここで思い出されるのが、米国ブッシュ政権が2005年に実施した「レパトリ減税」。海外子会社の利益(外貨)を国内に還流させる際の税率を1年限りの期間限定で35%から5.25%に引き下げました。これを機に米国へのレパトリエーション(資金還流)が起こって米ドルが全面高となり、米ドル/円相場は2004年末の103円台から118円台に円安が進行しました。 もし、日本でもこのレパトリ減税が導入されたらどうなるのでしょうか。6月に発表される骨太の方針「経済財政運営と改革の基本方針」にレパトリ減税が盛り込まれれば、企業はこれを機に海外資産を円に戻すのではないでしょうか。日米金利差が縮小しない中にあっても、為替市場へのインパクトはかなり大きくなると考えられます
【為替】財務省、経産省共通の問題意識から、レパトリ減税の可能性はあるのか?- マネクリ

 

【参考】

低金利通貨である円で借り入れをして高金利国の金融資産等で運用し、運用益に加えて金利の利ざやを獲得しようとする取引です。円で借り入れをするため「円借り取引」とも呼ばれます。円キャリー取引を行う場合、まず日本の短期金融市場で調達した円を外貨に替えて(つまり円売り)運用するため、円キャリー取引が増えることは円安要因となります。そして、海外の金融当局が利下げを実施した場合、海外資産で運用利回りを上げることが難しくなることから、円キャリー取引を行っている投資家は、運用していた海外資産を売却して得た外貨を円に替えて返済することになります。これは円高要因となります。

円キャリー取引は、日本の超低金利により内外の金利差が拡大したことから、海外のヘッジファンドを中心に近年盛んに行われるようになりました。その後は、海外で利下げがあるたび円キャリー取引解消のための「巻き戻し」と呼ばれる円買いで急激な円高が何度か起きています。また、近年では円キャリー取引を行う投資家の動向が為替相場の方向性を予測する上でも注目されるようになっています。

円キャリー取引 - SMBC日興証券

 

【参考】2024613日の記事

FOMC参加者の予測中央値によれば、25年に4回の利下げを予想。利下げ回数は従来予想(3回)から増えた。

FOMCは金利据え置き、24年利下げ予想1回に減少-来年は4回 - Bloomberg

 

 

 

日銀は株式の購入を停止し、国債の買い入れも減らすことにしたが、これは何でも日銀にやらせてきたこれまでの中央銀行のあり方を是正する一方で、緊縮路線(政府支出の抑制や増税といった手段で、財政赤字の削減や財政黒字の拡大にしていくというわけではなく、民間の方で株や国債を買ってくれればいいという方針を取っているという理解で間違っていないのだろう。

日本やアメリカに限らず、また今回もバブルになったが、バブルとバブル崩壊というのは必ず起きることであり、どちらも防ぐことはできないらしい。

恐らく最も重要なのはどこまでバブルが膨らむのを許容するかということだが、本来であれば中央銀行がバブルが膨らみ過ぎるのを防ぐ役割を担っている。

しかし、その中央銀行があえてバブルを発生させ、しかもバブルが崩壊しないように努めている。

どの市場であれ、投資目的で購入した資産を永久に保有するというのは基本的にはないはずであり、長期投資であれ短期投資であれ、ほとんどの場合、どこかで撤退して現金化することになる。

投資に対して非常に前向きな人物だとしても、現金の比率がそれなりに多いからこそ投資したい時に投資できるのであって、常に全力で何かの資産に余力を突っ込み続け、いつまでも回転売買し続けていたり、保有し続けていたりすることはできない。

(バフェットの場合はコカ・コーラの株式は永久保有すると言っているがそういう投資家はあまりいないはず)  

誰かが「売るな」と言ったところでそれは無意味であり、投資の仕組み上、多額の資金を投じて購入した資産をそのまま放置するということはできない。

少額で投資し、資金に余裕を持たせるのであれば超長期で保有することも可能だが、巨額の資金を投じて資金に余裕も持たせず、非常に強気に攻め続けるといった姿勢で相場に参加するのであれば、長期保有することなどできない。

(資産運用会社は多額の資金を投じて様々な資産を購入しているが、同じ銘柄をそのまま放置しているわけではない)

だから必ず利益確定なり、損失確定なり、ポジション整理なり、現金の比率を高めて再投資の機会を待つなり、様々な理由で撤退の動きというのは出る。

「みんなで買って、みんなが売らなければバブルではないし、絶対に下がることもない」といった態度ではもろにバブル崩壊の影響を受けることになる。

ほとんどの参加者はバブルであることを承知の上でチャンスに乗り、最後にババを掴まないようにどこかで降りることを考えているが、大抵は「まだ大丈夫」と思っていつまでも続けてしまうのだろう。

プロというのはリターンを得なければならない立場にあり、仮に失敗したとしてもクビになるだけで済むのだから、いくらでもリスクを取ろうとする。

だから誰も止めることはできないし、同じことを繰り返すようにできている。

個人的にはバブル相場になったとしても、調整で済むか、大暴落になるか、どちらかを選ぶことができると思っているが、これまでのところ、調整で済んだことはないらしい。

少し下げて、またすぐ買われてバブル相場継続では調整とは言えず、そのままバブル崩壊するまで資金を突っ込み続けるはず。(単なる押し目買いは調整を経た買いではない)

過熱した相場を冷やしたり、適正価格になるまで時間をかけて下げたりするような動きにならない限り、調整とは言えない。

そのような調整を経て、また多くの参加者が買うというのであればバブルを崩壊させず、バブル縮小、バブル拡大のようなサイクルを実現することが可能なのかもしれない。

バブルを極限まで膨らませ続けた結果、崩壊させ、大暴落ということになれば実体経済にも大なり小なり影響するのだろう。

長期投資をしている人物は余計なことをせずにバブルが崩壊するのをひたすら待ち、大暴落時に優良銘柄がバーゲンセールになるチャンスを生かして積極的に買うが、多くの投資家はバブルに乗り、バブル崩壊でダメージを負う。

 

日本株が割安で放置されていた理由は、基本的に日本人は株をやる人があまりいなかったためであり、最近になって急に盛り上がるようになったのは、バフェットがどうとか騒いだり、新NISAで「貯蓄から投資へ」が実現したり、超低金利政策でカネ余りになっていたり、円安で外貨の価値が高まっていたり見かけ上の業績が良くなったことなどが影響したため。

つまり、日本株というのは元々、人気がない資産であり、流動性が低いためにリスクが高かった。

しかし、最近になって急に株式市場に資金が大量に流入したことで株価が異常に上昇するようになり、皆がその流れに乗りたいと思うことでバブルになった。

以下の記事に「最初にリスクのある資産に対して,リスクを取って投資した人は,それを売れば,リスクなしにもうかることになった.」と書かれているが、それをやっているのがバフェットであり、バブルに乗って株価を上昇させているのが国内の個人投資家や証券会社や今も先物で買いポジションを増やしている超ハイリスクな取引をしている人物ということになる。(現時点でバフェットはまだ日本の商社株を売っていないが、コカ・コーラの株式のように永久保有するつもりはないのだろう)

 

【参考】2009年9月開催のディスカッション

まず,バブルとは何か.櫻川先生も広い定義ですが,私の場合,経済はすべてバブルという立場を取っていますので,基本的にすべてバブルです.どういう意味かというと,成長経済というか,流動性のある資産市場というのは常にバブルにならないといけない.つまり,資産市場ですから,将来のものを折り込んで価格が形成されているのに,値上がりをみんな期待しているという,もともと非常に矛盾しています.流動性があるということは誰かに売ってもうけるということですから,そういうマーケットにおいては必然的にバブルが起きるということです.

それは「①バブルはなぜ繰り返すか」につながりますが,これはみんなバブルが好きだからということです.好きだからというのはどういう意味かというと,必ずチャンスがあるということです.バブルは早めに乗って早めに降りれば必ずもうかるということは,基本的には時期を限れば,回収率がプラスの宝くじというか,全員が勝つくじのようなものなので,取りあえず乗る.ですから,チャンスがあれば乗る.その背後にあるのは,(池尾先生がまとめてくださっているように,)個別に言えばエージェンシー問題で,プロのファンド・マネージャーであれば,アップサイドはもらう,ダウンサイドは首になるだけなので,怖くも何ともない.アップサイド20億円,ダウンサイド0であれば,基本的には乗る.そういうエージェンシー問題があるところへ,そういうプロがたくさん市場に集まれば戦略的相互依存になって, みんなが乗るのであれば乗った方が得だということになるので,バブルは繰り返すということです

ですから,プロのマーケットであればあるほどバブルは起こりますし,金融市場が高度化することによってプロが増える.つまり,資本と頭脳の分離と呼んでいますが,プロの運用者が増えれば増えるほどエージェンシー問題は激しくなって,かつ競争も激しくなるということで,現代においてはより一層バブルが頻繁に激しく起こるということだと思います. 未然に防止する方策については,バブルは把握できるかできないかということですが,個人的に,投資家として言うと,そのマーケットにいれば必ずバブルは分かりますが,分かっていても乗った方が得だと.そして,バブルは壊れたら困るので,バブルだと一般には言わないというのが基本です.なぜそれが防止できないかというと,つぶすと怒られるので,つぶすインセンティブが誰にもなくなり,つぶせないということです.ですから,防止するためには,つぶしても怒られない立場に立った人がつぶす権限を持つということですが,これは本来,中央銀行の役割だと思います.今回のアメリカのケースでは,それを嫌がってバブルをなかなかつぶさなかったということです

リスクと思わない人が多数になればリスクではなくなります.それはどういうことかというと,お金がマクロ的に余っていて,国債の金利が下がり,何かもうちょっとリスクがあってもリターンが欲しいと思っているときでも,誰も投資していない資産はリスクが高過ぎて投資できない.そういうところへの投資は,流動性がなくてリスクが高いので割安になっている.そういう場合に,その資産をある一定規模以上の有力な投資家が買えば価格が上がってくる.世界全体でリターンの機会が少なくリターンが渇望されている状況では,特定資産にある程度の投資が流れれば,その流れにみんな乗りたいと思う.そうなると,最初にリスクのある資産に対して,リスクを取って投資した人は,それを売れば,リスクなしにもうかることになった.そうなると,マクロ的にお金が余っているときにリスク資産に投資するのは有利な戦略だということになり,リスクを取ることがはやった.それがリスクテイク・バブルです. これは現代金融市場の宿命と言えると思います.先ほども触れたように, 資本同士の競争,つまり投資先が枯渇してきて運用先を求めている状況で, 投資家に投資先・運用先の争奪戦が起こると,もうかる機会により一層殺到する.リスクテイク・バブルが起きた場合に,そのもうかる市場を見逃す手はないので,皆が入ってくることになります. ここでは先ほどお話しした資本と頭脳の分離も生じています.バブルだと分かって冷静に回避する投資家は,前半では必ず損をします.なぜなら,隣の人はバブルに乗って,自分はバブルに乗らないと,お金を預けた人から怒られる.つまり,みんな2倍にしているときに20%しか増やしていないやつは駄目ということで首になる状況ですから,まじめに運用して首になるのだったら,バブルに乗った方がいい.それがはじけてもたかだか首になるだけですから,勝負した方がいいということになるのです. そういう状況では,2倍になってみんなうれしいのですが,今度は出資者は2倍にしてもほめてくれない.なぜかというと,全員2倍にしているので, 普通という評価なのです.そうすると,ライバルに勝たなければいけないのでどうするかというと,レバレッジを効かせる.つまり,どうせ倍になるのだったらありったけ動員した方がいいということで,10億円預かっていて も,さらに50億円借りて60億円を投資して倍にすれば7倍にして返すことができるので,出資者は喜ぶという,レバレッジ競争になるのです. そうすると,さらにバブルは激しくなります.なぜかというと,全員がレバレッジを効かせるということは,ファイナンスができれば,デットの出し手があればということですが,トータルの投資総額は増えます.一方,投資対象は増えないとすると,投資対象資産は確実に値上がりする.つまり,このマーケットの構造を読めば,リスク資産に必ず投資した方が良くなって, バブルに乗れば乗るほどもうかる.それで先に乗った者勝ちということになるということです. ですから,プロであればあるほどバブルは起こりやすい.現代の金融市場においては,金融資本は構造的に自己増殖本能を持つことになり,それを止めるのは難しいということです.ちょっとメディアチックですが,私はこれをキャンサー・キャピタリズムと呼んでいます.

バブルの発生・崩壊とその教訓 - 経済社会総合研究所

 

 

 

ファーストリテイリングのような海外展開している企業も、商社も、現地で商品が売れた時に外貨を獲得することになり、その時に円安であれば円換算で儲けが大きくなる。しかし、そのような海外で事業を行っている企業も、円転しなければ見かけ上の好決算でしかない。日本の株式市場ではその見かけ上の好決算を非常に好感し、株が大量に買われている。この半年~1年で日本企業に何か劇的な変化があったというわけではなく、単にカネ余りと円安によって株式市場はバブル化してしまったようだ。

 

【参考】2023年7月10日の記事

日本の製造業はすでに国際競争力を失っており、円安による売上拡大よりも、仕入れコスト増加に悩まされており、企業業績は改善していない。円安になれば、見かけ上の売上高と利益は増大するため、新聞には「過去最高益」などという文字が踊るものの、製造業の営業利益率はむしろマイナスとなっており、円安で儲からない体質になっている。円安で企業が儲からず、経済が実質的に成長できない状況では、物価を上回る賃金上昇を実現するのは困難である。

今の日本経済は低金利にどっぷりと浸かった状況であり、ここで金利を上げてしまうと、企業の倒産が続出するほか、住宅ローン破産者を増やしてしまうリスクがある(変動金利の場合、金利が上がると返済額が増える)。何より金利が上がると政府の利払い費が急増するため、増税が不可避になることから、政府は金利を上げたくても上げられないのが実状だ。

「円安地獄」でも政府が何もできない理由、“貧困化する日本人”は見捨てられたか?- FinTech Journal

 

【参考】2022年6月3日の記事

ひとつの大きな問題は、円安で膨らんだ利益のかなりの割合が「見た目の利益」だということだ。今の日本企業の決算は「連結決算」が主体だ。海外の子会社がドルで稼いだ利益も、連結して決算する際は円に換算する。つまり、ドル建てでは利益が横ばいでも、円に換算した場合、大幅な増益になるという「マジック」が起きる。換算上利益が膨らんでいるだけで、実態は違う、という部分があるのだ。  

そのドル建ての収益を円に転換して日本に持ち帰るなら、円安は確かにプラスになる。もちろん、以前のように日本からの輸出が主体な場合は、円安はキャッシュの受取額が増えるので、リアルにプラスになる。焦点は、いくら「見た目」の利益が増えても、リアルに手元に入ってくるキャッシュが増えなければ、本格的な給与引き上げにはつながらないことだ。  

日本企業の多くは、過去の円高局面で製造拠点を海外に移している。そうした企業では円安がかつてのようにフルにプラスには働かないわけだ。つまり、連結決算で見た業績好調が、どれだけ「リアル」なのか。それを原資にどれぐらい賃上げができるのかが、日本経済の今後の復活に重要な意味を持つ。

「上場企業の3分の1が過去最高益を更新」それなのに"給与がちっとも増えない"本当の理由 円安で膨らんだのは「見た目の利益」にすぎない - President Online

 

【参考】

一般的に円安は、輸出企業にとって有利です。 商品を販売すると代金を外貨で受け取るため、円安になると円換算での売上高が増えるからです。 反対に、輸入企業にとっては不利です。円安になると商品を仕入れる際に、費用が増えて利益が減るからです。

外貨預金で円安になったら、円高になったら、どうなる? - 三菱UFJ銀行

 

【参考】

為替の影響が利益に直結するのが商社です。

例えば、海外の鉱山、油田などを商社が購入しようとした場合は円高の方が安く買うことができます。

そしてその鉱山や油田経営が軌道にのるとそこで得られた収益は円安の方が日本円で換算した収益としては拡大します

つまりすでに海外に投資をして軌道にのった事業については円安時のほうが収益を上げることができるようになります。

日本の大手商社が円安を追い風にしているのは、このためです。

円安で儲かる!? - 広告のbeans21

 

【参考】2024521日の記事

歴史的な円安水準が続く中、時価総額ランキング上位の国内企業の多くは今期(20253月期)業績予想の前提となる想定為替レートを大幅な円高方向で設定しており、現状のレートが続けば為替要因だけで今期の利益を大きく押し上げる余地を残している。

3月期決算の企業のうち、通期の想定ドルレートと為替感応度を公表している時価総額上位10社を対象にブルームバーグが調査。期初から515日まではドル・円レートの実績値を用い、16日から期末までは同日の水準であるが続くと仮定して算出した通期の為替レート(1ドル=155.25円)に各社の為替感応度を掛け合わせると、今期の利益の押し上げ額は10社合計で約9658億円に上る計算になる。

10社平均の今期想定ドルレートは142.6円と10円以上の円高となっている。計算にはユーロなどドル以外の通貨を含んでおらず、実際の増益効果はさらに大きくなる可能性もある。

この試算は、現在の円安が10社に代表される外貨建てでの稼ぎが多い大企業が享受する円換算での利益押し上げ効果の大きさを示している。一方、国内中心に展開する中小企業や家計は円安に伴う物価上昇などで打撃を受けており、輸出型の大企業からも国内事業環境の悪化を懸念する声が出ている。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは取材に対し、大企業の巨額の為替差益も、海外で回しているだけだったら「日本国内への恩恵というのは限られる」と指摘。国内の賃金や設備投資、取引先の価格改善や従業員教育などに生かせれば「国内経済の耐久力につながる。円安でマイナスの影響を受ける人にもプラスの影響が及びやすくなる」と述べた。

今回の調査で円安による効果が最も大きいのはトヨタ自動車だった。円がドルに対し1円円安方向に動くごとに営業利益を500億円押し上げる同社の今期想定レートは1ドル=145円のため、現状の円安水準が続いた場合は5125億円の増益要因となる計算だ。トヨタ系の部品メーカーであるデンソー、さらにホンダを含めた3社で全体の7割以上を占め、自動車産業で円安による恩恵が特に大きいことが分かる。

メガバンクでは唯一対象となった三菱UFJ・フィナンシャルグループは業務純益ベースで1220億円の増益効果が見込まれ、10社の中でも恩恵が大きい部類に入る。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の総合商社にとっても円安が追い風になる一方、第一三共では205000万円のマイナス影響を受ける。

第一三共の海外売上高比率は現状で63%程度。広報担当の大場芙美香氏によると、製造原価や販管費、海外での研究開発費が円安によって増加する。海外での売り上げは増加傾向にあり、営業利益へのマイナス影響は減少しつつあるという。

伊藤忠の石井敬太社長は8日の決算会見で、円安は「総合商社にとってプラスの方向に働く」とコメント。円安で海外からの資金流入が活発になり、海外企業などが「日本の事業や株を買いにくるのでビジネス機会になる」と述べた。

実際の為替相場が想定レートより円高方向に動けば利益の押し上げ効果が縮小したり、マイナスとなったりする可能性もある。日米の金利差縮小が意識される局面で、企業サイドも為替相場が急転するリスクを警戒して円高方向に設定している側面もある。

ホンダの藤村英司最高財務責任者(CFO)は10日の決算会見で、1ドル=140円という同社の今期為替想定は少し保守的に見られるのは間違いないとした上で、日米の金利などを踏まえて決めたとコメント。日本の内需拡大や製造業の国内回帰で円の実需は「それなりに上がっていくのではないか」と考えていると述べ、長期的に150円、160円といった水準に落ち着くことは考えにくいとの見方を示した。

三菱商の中西勝也社長は2日の会見で、円安は国力が弱まることにつながる側面もあり、海外での企業の合併・買収(MA)で不利になることなどデメリットも多く、「われわれにとっては利益にプラスになるが、よろしくない」と表現した。

伊藤忠の石井社長も日本全体にとっては円安が長く続けばデメリットの方が多いのではないかとの見方を示した。

ニッセイ基礎研究所の上野氏は、円安による消費の弱含みで国内景気が減速すれば国内での売り上げに悪影響があり、輸出企業も「際限なく円安になればいいと考えているわけではない」と指摘。ただ、民間企業が常に日本経済を第一義に考えるわけではないため、政府が企業の国内投資を促す政策を推進する必要があるとした。

国内主要10社、円安継続なら「利益約1兆円押し上げ」の可能性 一方で事業環境の悪化を懸念する声も - 会社四季報オンライン

 

【参考】202457日の記事

記録的な円安相場が続く事態に、企業経営者から懸念の声が上がっている。輸出が強みの日本企業にとって円安は従来「追い風」と考えられてきた。だが、産業の変化もあって、そうも言い切れなくなっている。行き過ぎた円安が消費を冷やすとの心配も出ている。  

 海外で利益の7割を稼ぐ三菱商事。 20243月期の純利益は、最高益だった前年に次ぐ9640億円だった。豪州の原料炭事業の不振もあったが、円安が利益を700億円押し上げた。  

だが、2日の決算会見で中西勝也社長は円安進行は「よろしくない」と言い切った。海外での企業買収が多い同社では、「円安はボディーブローのようにきく。買収額が上がり、投資を慎重にさせてしまう。為替は安定していただかないと」と述べた。

円安、企業に「追い風」ばかりでない 商社「ボディーブローのよう」 - 朝日新聞DIGITAL