日本株は外国人投資家が7割を占めると言われているが、恐らく入れ替わりもあるのだろう。(常に同じ外国人投資家が取引しているわけではなく、退場したり新規参入したりしている)

東証、金融庁、経産省などが証券業界などと結託して国策として投資を促すようなことをしているが、外国人投資家であれ、国内個人投資家であれ、当然全員が儲かるわけではないし、勝ち組も負け組も出てくる。

〈好調は続くのか?〉手綱を握る外国人投資家から見えてきた「日本株の見通し」【株式ストラテジストが解説】 - The Gold Online

今は明らかにバブル相場になっているのだから、尚更ババ抜きの様相を呈している。

また、「日銀が株価を買い支える」といった神話も未だに囁かれているようだが、日銀は買っているのではなく、売っているのだし、ETF買い入れも正式に停止している。

(過去に銀行から買い取った株式を毎年3000億円分売却している。 https://www.tokyo-np.co.jp/article/315637  )

中央銀行であれ誰であれ、自分が損をするようなこと(高値で買い支える行為)を積極的にやる者などいない。

特に先物でそれをやった場合、確実に破滅する。

少なくとも長期投資をしている人物が高値で上値追いをしたり買い支えをするといったことは絶対にやらない。

日銀のようなインパクトのある名前を出して多くの参加者がそのような幻想を抱くと特定の銘柄に人気が出て、株価が上昇することがある。

それも一種のバブルなのだろう。

 

【参考】2024331

日銀、株は売りに専念 ETF売却につながるか

長年、巨額の上場投資信託(ETF)買い入れで事実上の株価下支え策を手掛けてきた日銀が、株式について売却に専念する姿勢に転じた。新規のETF買い入れの終了を319日に決めた一方、かつて銀行から買い取った株式の処分(2016年度から実施)は小規模ながら続けているためだ。この状態は25年度まで続く予定だが、その後保有ETFの売却にもつながっていくのか、関心を集めそうだ。

24年度はETFの買い入れ自体が止まるので、株式に関する限り日銀は売却だけ手がける局面に入る。今後、ETF買い入れを再開することがない限り、銀行から買った株の処分が終わる25年度までこの状態が続く。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD293660Z20C24A3000000/

 

 

 

以下の動画によれば、証券会社のラップ口座残高がこの半年間で急激に増えたとのことだが、やはり証券会社が顧客から預かる資金が急増したことで株価が暴騰していた面があるのだろう。

 

【参考】

【金融】NISAの恩恵で証券会社が爆益!メディアが報道しない証券業界で起こっていること!

https://www.youtube.com/watch?v=NK59aDakkMw

 

一部ではアメリカで利下げがあれば株価急落のトリガーになると言われていたり、それとは逆に、利下げは株の買い材料と言われていたりするが、今となってはアメリカの金利がどちらに動けば株価がどう動くのか誰も正確に予測できない状況になっている。

利下げは株価急落のトリガー!? - トウシル

いずれにしても資産バブルになっていることはほとんどの人が認識しているのだし、今は「グランドフィナーレを迎えている」とも言われているが、FRBや日銀が今更何をしようともまたこれまでと同じようにバブル崩壊を経験することになる。

日銀が円安を放置しているのは株価や不動産価格を下げたくないからだが、いつまでも利上げせずにそういうことをしていることで結局、後になってから自らが望まない形で大幅な利上げをせざるを得ない事態になると指摘されている。

どの道、1年以内に日本か海外で何らかの有事や金融危機が起きる可能性が高いと思えるため、日銀が現時点で市場に振り回される形で利上げを急ぐ必要はないのかもしれない。

しかし、そのような方針になっていることで円安が急激に進行し、止まらなくなっている面もあるため、やや強めの利上げが必要になる可能性もある。

 

下記の記事によれば「現在、1980年代後半のような資産バブルが起きつつある」と書かれている。

日本でバブルと言えばその頃のことを意識するようだが、今の日本はバブルではないのかと言えば、当然、資産バブルになっている。

ごく一部の株価と不動産価格だけがそのような状態にあり、市場全体がバブルになっているといった感じではない。

そもそも投資というのはその国に魅力的な企業や資源があれば勝手に資金が集まってくるものなのであって、国策で株式にばかり資金が集まるように制度を作ったり、カネをばら撒いたり、低金利政策を続けたり、中央銀行が直接介入したりすることは明らかにバカげている。

安倍や岸田はそのようなことをしていたからまたバブルになってしまった。

(「過去の日銀ETF買いで、日経平均は4000円ほどかさ上げされているという試算もある」という話も出ているが、株式市場への介入というのは相場を支配できるほどの威力はないようだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL1420Z0U4A310C2000000/ )

 

【参考】2024328日の記事

歴史的に2つのことが起こりやすいことがわかっている。

第一に、「資産バブル」に続いて、「最悪の経済的結果」が生じる傾向があること。

第二に、私たちの業界の大きな原則は「連邦準備制度と戦うな」ということである。私は今、これまで見た中で最大かつ最も広範な資産バブルを見ている。それは10年から11年続いており、今やグランドフィナーレを迎えている。 私はここに座って、おそらく最大かつ最も広範な資産バブルを目の前にしている。これまで見てきたことや、これまで研究してきたことは忘れてほしい

出所:YouTube『キリル・ソコロフ、スタンリー・ドラッケンミラーと対談』

この人工的な円安が継続するかぎり日本株や日本の不動産は上昇する傾向にある。現在、1980年代後半のような資産バブルが起きつつある。

しかし、この物語には、「低金利と円安によって日本の資産バブルがこのまま進めば、貧富の差が社会問題となり、日銀は予想外の大幅な利上げに追い込まれる」という落とし穴がある。資産バブルに続いて、最悪の経済的結果が生じる傾向があることを頭に入れておくべきだろう。

資産バブルの後は最悪の経済が待っている!? - トウシル

 


 

どうやらアメリカは既にリセッションに入っているらしい。

 

【参考】

https://nofia.net/?p=20441

 

【参考】2024531日の記事

5月シカゴ購買部協会景気指数(PMI)は35.4と、437.9から上昇予想に反し低下し、パンデミックにより経済が封鎖した205月来で最低となった。 米4月コアPCE価格指数がインフレが依然鈍化基調にある証拠となったことに加えて低調な結果を受けて利下げ観測がさらに強まり、米国債相場は続伸。ドル売りも一段と強まり、ドル・円は15720銭から15656銭まで下落。ユーロ・ドルは1.0850ドルから1.0882ドルまで上昇した。ポンド・ドルは1.2707ドルから1.2766ドルまで上昇した。

https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/d4551a9858f58c17cb4acd7d89930a7e3101ca4e

 

【参考】

シカゴ購買部協会景気指数

米シカゴ購買部協会が毎月公表する製造業の景況感を示す経済指標。米イリノイ州・シカゴの購買担当者にアンケート調査を実施し、結果を指数化。指数が50を超えると景気拡大、50を下回ると景気後退を示していると判断できる。全米をカバーする米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数の前営業日に公表されることから、ISM製造業景況感指数の先行指数とされる。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/si/A02868.html

 

【参考】

州都はスプリングフィールド市、最大都市は北東部のシカゴ市で、大規模な工業地帯を持つシカゴ都市圏に人口の8割が住む。州の中部や西部には小さな工業都市と生産性の高い農業地帯があり、南部には石炭、木材および石油など天然資源に恵まれ、幅広い経済基盤がある。シカゴの港はイリノイ川を経由して五大湖とミシシッピ川を結ぶ交通の要衝である。イリノイ州は国内における商工業、交通、政治、財政の中枢的存在ということもあってアメリカ合衆国の縮図と言われる。

AP通信が行った21項目の人口動態解析に拠るとイリノイ州は「最も平均的な州」であり、州の中央にあるピオリア市は「ピオリアでうまく行くかい?」という疑問文が、アメリカ大衆の主流に訴えるものであるかどうかの隠喩になってきており、新しい商品、サービスおよび世論調査では市場調査の場所として使われることが多い。

https://ja.wikipedia.org/wiki/イリノイ州

 

【参考】2024425日の記事

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24EQL0U4A420C2000000/

 

【参考】2024531日の動画

アメリカの1月から3月期の実質GDP=国内総生産の改定値は前の期から1.3%の増加となり、速報値から下方修正されました。GDPの改定値は市場予想と一致していて、7四半期連続でプラス成長を維持したものの、伸び率は前の期から大きく縮小し、速報値の1.6%増加からは下方修正となっています。GDPのおよそ7割を占める個人消費が、速報値の2.5%の増加から2.0%の増加に下方修正されたことが響きました。一方、設備投資と住宅投資は上方修正され、景気の底堅さが示されました。

https://www.youtube.com/watch?v=j0ggvOunHsQ

 

【参考】

逆イールド

短期金利が長期金利を上回り、イールドカーブ(利回り曲線)が右下がりの曲線となっている状態のこと。市場関係者が将来的に金利が下がるとみている場合に起こる現象で、一般的に景気後退の兆候として捉えられる。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ki/A02007.html

 

https://jp.investing.com/rates-bonds/usa-government-bonds

 

 

 

投資先の国の通貨が下落し続ける場合、自国に資金を戻す際に損をするのだから、外国資本は当然、撤退することになる。

日本の株式市場は約7割が外国人投資家が占めると言われているため、このまま自民党や日銀による円安誘導政策を続けていれば、株高のために円安にしたことが裏目に出て、日本の株式市場から外国人投資家が誰もいなくなる。

それは株式に妙に拘る自民党にとって不都合になるのだから、やはり何らかの形で円高方向に戻す政策にしていくことが予想される。

遅かれ早かれ、利益確定売りや資金の引き上げというのはあるが、それが緩やかに出れば調整局面入りし、一気に大量に出れば暴落になる。

どうやら日本株は調整入りせず、歴史的大暴落の方に向かっているようであり、このままラリーを続けていればそれは不可避になるが、当の本人は暴落を阻止するため、あるいは暴落などあり得ないと思って今も資金を投じている。

永久に日本株を保有し続ける外国人投資家などいないのだし、利益確定して日本円でいつまでも持っていてもしょうがないのだから、いずれは自国に資金が戻ることになる。

しかし、日本円が下落し続けるのであれば資金を自国に戻す際に損をするため、今は本格的な資金引き上げが出ていないのだろう。

もしこのまま円高にならずに日本円が暴落し続けると判断されれば、日本市場から外国人投資家がどんどん離れていく動きが出ることになり、円安進行と共に株安が続き、その後は誰も株を買わなくなるのだと思われる。

一部では「152円超える円安は日本株のマイナス要因になる可能性」が指摘されており、既にそれを大きく超える水準が定着しつつあるため、これは自民党、日銀、証券業界にとって由々しき事態と言えるのだろう。

円安好き日本株の変節、慢性化でデメリット警戒-コスト増す内需打撃 - Bloomberg

 

今後、日銀がいくらかの利上げをしても円キャリートレードの需要は衰えず、まだまだ取引の規模が拡大していくらしい。

つまり、日銀はバブルの阻止に失敗し、少しの利上げでは通貨の下落も止めることができなくなっているということなのだろう。

このバブルは日本国内だけではなく、アメリカでも起きているが、それは円キャリートレードが止まらないためだと言われている。

日本国内で起きているバブルの資金源は当然円キャリートレードによるものではなく、77兆円ものコロナ予算、低金利政策、円安、新NISAやメディアなどの煽りによる参加者の増加がバブルの原因になっている。

 

【参考】

https://www3.nhk.or.jp/news/special/covid19-money/

 

今のままでは日本円の暴落に伴うインフレを抑制することもできず、「マイルドなインフレと賃上げの好循環」など不可能であり、日銀は本来の役割から逸脱し過ぎたことで中央銀行としての評価を落とすことになりかねない。(ごく一部の大企業でのみ例の好循環は起きているが、99.7%の企業ではそのようになっていない)

「バブルは弾けて初めてバブルだとわかる」と言われているが、今回もそうなるようだ。(日銀としては今はまだバブルではないという認識になっている)

1990年代のIT株ブームも、今起きているAI株・半導体株ブームも「根拠なき熱狂」そのものだが、今回はバブルを阻止するどころか意図的にバブルにし、もっと膨らませると報われるといった誤解でもしているのではないかといった気味の悪い熱狂となっている。(株式市場全体としての熱狂はなく、一部の者による不審な動きがある)

この気味の悪さは、やはり素人のような連中がバブルというものを理解せず、資産価格が上がればそれでいいとだけ思っているような感じがあり、自分が置かれている状況が何も分かっていないのかもしれない。

資産価格というのは、ただ上がりさえすればいいというわけではなく、それがバブル的な上昇なのであれば必ず崩壊することになる。

 

【参考】2024年5月28日の記事

日本の金利が上昇しても低迷する円相場の支えにはほとんどならないだろうと、トレーダーらはみている。外国為替取引の中で最もリターンの大きい取引の一つへの需要がなくならないためだ。

円は、いわゆるキャリートレードの一環として売られるマクロ資産の一つであり続けている。ほとんどゼロの金利で借りた円で高金利のドルを買い入れ、5%を超えるリターンを得るという戦略だ。

「人々はキャリーに夢中だ。 仮に6月に日銀が利上げをしたとしても、キャリー取引はなくならないため、市場は円ロングに非常に消極的だろう」と野村インターナショナルのG10スポットトレーディング責任者アントニー・フォスター氏(ロンドン在勤)は述べた。

円相場は1ドル=157円付近となっている。スワップ市場ではすでに、今年中に日銀がさらに27ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げをすると織り込んでおり、早ければ7月にも10bpの利上げが実施される確率は90%となっている。

しかし、トレーダーがすでに利上げを想定しているため、日銀が来月、タカ派的なシグナルを発したとしても、円安を止めるには不十分かもしれない。   

ストーンXファイナンシャルの為替トレーダー、呉明賾氏(シンガポール在勤)は「市場の勢いに照らして、日銀が何を言っても不十分で遅過ぎる可能性が高く、キャリートレードの需要は円ショートを促す」との見方を示し、「ドル・円のリスクは介入前水準へのドル高へと傾いている」と話した。

キャリー取引に「夢中」のトレーダー、円安巡り日本当局との対決迫る - Bloomberg

 

【参考】202421日の記事

外国人投資家は日本株の約3割の株式を保有し、東証の売買代金の67割を占めています。日本株式市場の動向は外国人投資家次第であるといっても過言ではありません。

〈好調は続くのか?〉手綱を握る外国人投資家から見えてきた「日本株の見通し」【株式ストラテジストが解説】 - The Gold Online

 

【参考】

「日本円のトルコリラ化」の続きを申し上げると、トルコリラ安が続くなか、外国資本の大半がトルコ株から撤退しました。だから、いまのトルコ株はトルコ人が買っているだけです。

日本の場合も、今後も円安政策を続ける、あるいは加速させるならば、外国から日本に資本が来なくなります。 なおかつ日本人の資本が外国に逃げます。ただ置いておくだけで2115兆円の資本が目減りするのなら、少なくともドルを買うでしょう。もしくはドル建て資産になる債券や株を買う。 ただ、ここで老婆心ながら申し上げておきたいのは、外貨を買うことは基本的に投資ではないということです。

米ドルは米ドルでインフレリスクを常に抱えていますし、米国における財政問題も深刻です。外貨に換えて、外貨で何かに投資をするのであればいいのです。これならば、私は賛成します。 その一方で、岸田政権の目も当てられない支持率を見ると、もう間もなく政権交代がなされ、円安放置が無くなる可能性もあります。外貨への投資をするには、このようなことも見込んでおく必要があるのです。

無力の中小企業を苦しめ、借金だらけの大企業を助けている…異常な円安を日銀が放置する「隠れた目的」 - president online

 

【参考】

著者は18年間にわたって米国FRB(連邦準備制度理事会)議長を務めた。優れた政策手腕を発揮したことで知られ、マエストロとの異名を取ったカリスマ的人物である。 1990年代のIT株ブームを「根拠なき熱狂」と呼び、ITバブルに警鐘を鳴らしたことでも知られている。だが、バブルを阻止するために有効な手段を取らず、バブルは弾け、米国経済は不況に突入した。「バブルは弾けて初めてバブルだとわかる」という名言を残している。

ITバブルが弾けた後、米国経済がデフレに陥るのを防ぐために超低金利政策を採用。それが後に住宅バブルを招く結果となった。だが、在職中、住宅バブルを認めることはなかった。サブプライムローン問題などが顕在化したとき、FRBは十分に金融機関を監督しなかったと批判され、著者の名声も一時地に落ちた感があった。

『リスク、人間の本性、経済予測の未来』『検証 バブル失政』 - 東洋経済

 

【参考】20231218日の記事

日銀が未曾有の金融緩和に打って出てからすでに10年以上が経過しますが、その間ゼロ金利からさらにマイナス金利へとシフトチェンジが行われたため、世界的には円で資金調達を行いその資金を欧米の金融市場で株や債券の投資にあてる動きが目立つようになりました。 ZeroHedgeの最新の記事によると、その額は20兆ドル(日本円にして2,800兆円)を超えるレベルに達していると見られており、ここからドル円、株価ともに大幅に下落することになれば、一気に円の巻き戻しが出るのではないかとの観測が高まっています。

円キャリートレードと言うと、その名のとおり金融機関から日本円で資金を調達したり、ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社であるバークシャーのように、円債を発行して資金を集めることが思い浮かびます。 しかし実際は、日本から円をドル転、ユーロ転するなどして欧米の市場に投資する資金も円キャリーとしてカウントされており、20兆ドル(日本円にして2,800兆円)という数字は、それらすべてを合計した金額になっています。 この金額は、円キャリーの大幅巻き戻しが起きた1998年や2008年よりもはるかに巨額であることがわかります。

大暴落時のように一気に円高となる場合もあれば、順次円高にシフトしていく動きとなる場合もあり、どちらにせよ相当な注意が必要になります。

2024年は年初から激しい円キャリートレードの巻き戻しに注意 - taritali.com

 

 

 

日本の対外純資産は2023年末時点で471兆円となっているが、これは「円安で外貨建て資産の評価額が上昇したのが主因」だと言われている。

https://www.sankei.com/article/20240528-67JNGC3HSBJRTCUB6SHZPUCYVQ/

しかし、内訳を見ると直接投資が長期的に見て明らかに増え続けている。

日本政府、日本企業、個人投資家は米株式と米国債(特に米国債)を大量保有しているが、実際にはそれら「証券投資」だけではなく、外国企業の買収や合併を意味する「直接投資」が2012年ぐらいから非常に伸びている。

この直接投資に関しては「有事の円買い」は起きないと言われている。

それは「(直接投資の対象である)買収した外国企業を手放して、円建て資産に戻す」という動きは出ないというごく普通の考えに基づいている。

もし、買収した外国企業に何らかの重大な問題が起きて手放した方がいいという経営判断があれば、直接投資でも有事の円買いが絶対に起きないとは言えないが、可能性としては低いのだろう。

 

【参考】

https://www.businessinsider.jp/post-287945

 

また、最近行った財務省による為替介入は「5月分(426日~529日)の為替介入の金額が97885億円だった」ことが明らかになったが、「2022年9-10月の約9兆2000億円」を上回っている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/330745

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-31/SEBJ6BT0G1KW00

2022年の為替介入ではその後、25円程度の円高になったが、今回はほんの僅かな間、9円程度の円高になっただけで今では既に介入前の円安水準に戻ってしまっている。(2022年にドル安方向に動いたのは為替介入の効果だけではなく、世界的にそのような動きが出ていた)

もしかすると、日銀が余程の利上げに動かない限り円安が止まらなくなっている可能性があり、もし何らかの有事や金融危機などが起きて有事の円買いがあったとしても、それほど円高にはならないこともあるのかもしれない。

(それでも、よく言われている円キャリートレードの巻き戻しがあればさすがに2030円程度の円高にはなるのだろう。しかし、その後でまた円安になる可能性もあるが、その円キャリートレードの巻き戻しが何によって引き起こされるのかによる。) 

行き過ぎた円安は投機筋以外は誰も望んでいないのだから、もう財務省も日銀も追い詰められた感が否めない。

日銀としては欧米の利下げが始まるまでなるべく小幅な利上げをしながら時間稼ぎをするしかないのだろうが、今となっては投機筋がどの程度まで円売りをするのか分からなくなっている。

財務省の方も介入は今回限りではなく、あと12回は大規模な介入余地を残している可能性が高い。(あまり乱発はできない)

 

【参考】2024年5月31日の記事

円買い介入の主な資金源となる外貨準備金残高は4月末時点で1兆1400億ドル(約1787400円)となっている。ただし、世界的な経済危機や緊急事態などに備え外貨を確保しておく必要があり、介入に投入できる規模は限定的にならざるを得ない。さらに、為替レートの決定は原則市場に委ねる国際的な合意への配慮も求められ、介入の乱発も難しい。   

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-31/SEBJ6BT0G1KW00

 

安倍政権以降、日本政府と日銀は自ら円安に強く誘導する金融政策を行ってきたが、ここに来て行き過ぎた円安に悩まされる事態に陥っている。

ごく一部の大企業と株高のために円安が望ましいとされてきたが、このまま円安が進行し続け、止まらなくなることは恐らく株価にプラスにはならず、国内経済にも悪影響を及ぼすため、財務省が1ドル160円で為替介入を行ったこと自体は間違いではなかった。

しかし、これからどのようにして適度な円高にしていくのかということが分からないため、今年から来年にかけての外為市場と株式市場は安定性のある動きにはなりづらいように思える。

「円安にならないと株高にならない」「円高にしてしまうと株安になってしまう」といった一部の政治家や業界の強い思惑が金融政策に直接結びつき、市場を大きく動かしてきた。(安倍にしても岸田にしても、株式に対する執着心が強く、円安やインフレが善であるような主張をしているが、ほとんどの国民はそれを歓迎していないようだ。)

それが今となっては円安が止まらなくなっていることで、最悪の場合、外国人投資家が日本市場から撤退する動きが出てもおかしくない事態になってきている。

そもそも、これまでも必ずしも円安になると株高になっていたわけではなく、むしろ逆相関にあった時期もある。

もしかすると円安というのは株式市場全体にとって好都合なのではなく、単に一部の大企業にとって好都合だったということなのかもしれない。

下図は日経平均とドル円の相関チャートであり、日経平均構成銘柄は海外展開している大企業が多いのだから、円安の恩恵を受けやすいが、それでもドル円と完全に連動しているわけではない。

 

【参考】

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-23/SCD89RT1UM0W00

 

 

投資先の国の通貨が下落し続けるのであれば、利益確定したとしても自国に資金を戻す際に損失が出てしまうのだから、通貨が暴落気味に下がり続ける国に対しては外国からの投資はなくなってしまう。

欧米では過度なインフレ、高金利、住宅価格高騰によるホームレス問題、高額な保険料、米商業用不動産問題、リセッション、クレジットカードや自動車ローンのサブプライム問題、などの爆弾を抱えており、いずれそれは爆発すると思われるが、今年はアメリカで大統領選があるため、バイデン政権は巨額のバラマキをし続けていることでアメリカの株式相場に関しては今もなお、妙な粘り強さを見せている。

住宅ローン金利7%で“家がない”アメリカではホームレス65万人 日銀総裁「利上げ」示唆で日本はどうなる - ピンズバ

欧州財政再建に暗雲 米S&Pがフランス国債格下げ - 日本経済新聞

最近では「今の市場は『ノーランディング(着地なし)』シナリオを描いている」「つまり高い金利が長期化しながらも経済成長は力強さを維持するという見方だ」などとさえ言われているが、今の経済状況を見ればそれは過度な楽観論であり、あり得ない話としか思えない。

「ハイテク7強」のリードは続く、景気後退の不安出現まで-BofA - Bloomberg

遅かれ早かれ、欧米の経済問題で円高になるはずだが、現時点では円安方向への圧力が強まっている。

日本円だけが異常な下落をし続けているため、アメリカの都合で円安になっているとは言えないようだ。

日本企業による外国企業への直接投資、円転せずに外貨のまま再投資、輸出の数量減による貿易赤字、日銀による低金利政策、円キャリートレード、といった構造的な問題を抱えているため、欧米の利下げまで時間稼ぎをしようと思っても上手くいかないかもしれない。

 

【参考】2024年5月31日の記事

みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「米FRBが利下げするまでは円安の流れは変わらない」と話す。円安の基調には、貿易赤字のほか、経常黒字が海外で再投資され日本に還流していないことがあると指摘。「日本国内に工場を作り、輸出を増やしていく必要がある」と強調する。(白山泉)

日本の為替介入、9兆7885億円だったと財務省公表 4月26日~5月29日の総額 月ベースで過去最大規模 - 東京新聞

 

【参考】2024525日の記事

注目されるのは、大幅な円安進行にもかかわらず、輸出数量が低下したことだ。4月のドル/円は151.66円と前年比14.7%の円安だった。通常、大幅な円安は輸出数量を押し上げ、輸出額を大幅にかさ上げする効果を持つ。ところが、4月の輸出数量は前年比マイナス3.2%と落ち込んだ。

コラム:円安メリット生かせぬ日本経済、競争力低下で続く貿易赤字 - Reuters

 

 

 

日本円だけが暴落しているのは構造的な問題だけではなく、やはり投機が絡んでいるように思える。

韓国ウォン、インドネシアルピアなどと比較しても日本円だけが異常な下落率となっている。

https://www.google.com/finance/quote/USD-JPY?sa=X&ved=2ahUKEwiR3Yfw37uGAxWYk68BHRNWDZcQmY0JegQIBxAw&comparison=USD-KRW%2CUSD-GBP%2CUSD-CNY%2CUSD-IDR&window=5Y

 

円安を放置するといつまでも円安圧力が続くことが予想され、しかも160円を大きく上回る水準で円の下落基調が続けば、日本株にとってもマイナスになるのだろうから、自民党と日銀は円安を軽視し過ぎていたように思える。

日本株の場合、通貨の暴落を伴う株高になっているため、正常な株式相場にはなっておらず、日経平均株価の推移の仕方を見ても理由もなく1年で54%も暴騰している。(1年で26,632円→41,087円。この1年で日本企業の製品やサービスで大きい変化があったわけではない)

このようなことはアルゼンチンやトルコを除けばどこの国にも起きていない現象であり、最近になって囁かれるようになった「インフレが進行していくのだから日本円で預金するのは危険」といった煽りもまんざらでもなくなってきている。

日本の場合は通貨当局(日銀)が自国通貨を暴落させ、政府(自民党)も「貯蓄から投資へ」を政策の柱にしてきたのだから、自ら招いた自国通貨安ではあるが、構造的な問題も抱えているため、それに拍車が掛かったのだろう。(日本政府が貯金するなと言い続けていたが、それによってドル建て資産を多く持つようになった。それも円安になる。)

もしかすると、キャピタルフライトや外国人投資家の撤退の動きは既に出始めている可能性すらある。

 

日銀は政策金利を0.6%にするだけで経常赤字になってしまうらしい。

「政策金利(付利金利)を+2.8%まで引き上げると、日本銀行は債務超過に陥る」と言われているため、今後、日銀が利上げするにしても、それほど大幅な金利上昇にはならないのだろう。

そして市場参加者からもそのように思われているため、安心して円売りができるようだ。

 

【参考】2024年5月29日の記事

日本銀行が政策金利を+2.8%まで引き上げて債務超過となる可能性は低いが、+0.6%までの引き上げであれば、来年前半にも考えられるところだ。その結果、日本銀行は今まで拡大してきた過去の遺産とも言える自己資本を、追加利上げの過程で取り崩していくことになる。

日銀の令和5年度決算:利上げによる逆鞘の発生が近づき、日銀の財務の安定性が試される局面に - NRI