今年はアメリカでセミが大量発生することで、経済活動に何らかの影響が出る可能性がある。

2021年に東部で大量発生した時は

 

「大発生のたびに、セミが原因で何件も交通事故が起きている。」 

「ワシントン周辺は特にセミの発生数が多く、気象レーダーに映るほどだった。バイデン氏の初外遊に同行する記者団の飛行機も、セミの群れがエンジン内部に進入した影響で離陸できず、記者らは別の機体で遅れて出発する羽目となった。」

さようなら17年周期ゼミ、また会おう 大発生の狂騒に幕 写真7枚 国際ニュース:AFPBB News

 

といった問題はあったが、どうやらその時は経済活動に悪影響を及ぼすようなことはなかったらしい。

しかし、その時期に「数百羽の鳥が奇妙な症状を伴う謎の病気で死んでいる」という事例があった。

セミが大量発生すると鳥は毛虫よりもセミの方を捕食するようになるため、もしかしたらセミが原因なのかもしれない。(「相関関係はあるが、関連性はまだ判明していない」とのこと)

北米で小鳥の奇病が広がる…専門家にも原因分からず。周期ゼミと関連か | Business Insider Japan

北米東部の森林では、周期ゼミの出現によって食物網が分断され、植物への被害が増加する | EurekAlert!

 

2021年の大量発生時にセミを食べ物として提供していたことがあったが、「魚介類へのアレルギーがある人は食べないで」とFDAが警告していた。

最近は昆虫食をやたらと勧める動きがあるが、それは万人向けではないようだ。

大量発生の「17年ゼミ」気軽に食べないで、米FDAが異例の警告 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 
セミの大量発生によっていくらかは環境に変化があったり、交通事故が起きたり、人が食べることで健康被害が起きたり、といったことはあるようだが、物流や農地などに甚大な被害がないのであれば経済活動への大きい影響はないはず。

 

【参考】2021年5月29日の動画

・2021年にアメリカ東部で大量発生したセミ

 

 

 

今回は17年ゼミ(ブルード13)と13年ゼミ(ブルード19)が221年ぶりに同時発生することで、約1兆匹のセミがイリノイ州を中心に、中西部や南東部を覆い尽くすと予想されている。

しかし、2015年に17年ゼミ(ブルード4)と13年ゼミ(ブルード23)が同時発生した時は「大量発生」にはならなかった。

また、2021年は「数兆匹の大発生も」と言われていたが、実際にはそこまで多くはなかったらしく、今回もどの程度の規模になるのかはその時になってみないとはっきりしないようだ。

 

【参考】2024年2月3日の記事

同時発生した2015年と、今年2024年はどう違うのか? 吉村仁名誉教授は下記のように予測している。
今回の『17年ゼミ(ブルード13)』はシカゴを中心に非常に密度が高く大発生することに加え、『13年ゼミ(ブルード19)』は3つのブルードのうち個体数が最大で発生地域が広大のため、歴史的にも最大の数になる可能性がある
アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは「全米およそ16州にわたって1兆匹以上のセミが出現する可能性が高く、鳴き声は飛行機よりも大きな音になることもある」と報じている。
221年ぶりとなる周期ゼミの大発生は今年4月中旬から6月初旬にかけて予想されていて、13年ゼミと17年ゼミの生息地域が重なるイリノイ州では多くの個体を見ることができそうだという

 

 

 

予想されているように大量発生するのであれば、一時的ではあるが物流に影響が出るのかもしれない。

既に紅海危機によって(特に欧州で)物流に深刻な影響が出始めているが、アメリカ経済の中心地の1つであるイリノイ州も物流の一大拠点となっている。

日本通運の現地法人がイリノイ州で倉庫を所有しており、日本企業にもいくらか影響が出る可能性がある。

イリノイ州の近隣地域は自動車産業と医薬品産業の集積地域でもあるため、イリノイ州の倉庫に問題が発生すれば他の州にも影響が出ることになるのだろう。

米国日本通運、「シカゴ・ロジスティクス・センター」を竣工 | NIPPON EXPRESSホールディングス (nipponexpress-holdings.com)

欧州経済に影響を及ぼす紅海危機 | DTFA Times | デロイト トーマツ グループ (deloitte.jp)

 

イリノイ州は穀物メジャーの一角アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の本拠地でもある。

ADMは天然由来甘味料(コーンスイートナー、ブドウ糖、果糖、多糖類)、クエン酸、天然香料、果汁、スーパーフード素材(ナッツ、種子類、ドライフルーツ)、大豆タンパク、増粘剤、乳化剤、ビタミンE、大豆イソフラボン、食用油、などを日本向けに供給している。

さすがにこの企業がセミぐらいで大打撃を受けるということはないはずだが、もしかしたら一時的に供給に影響する可能性はあるのかもしれない。

ADMは自ら「買い入れ、集荷、保管、輸送を行う穀物商社」でもあるため、物流も担っている。

もしセミが物流に悪影響を及ぼすのであれば、この重要な企業からの供給も一時的に滞ることになる。

ADM Japan | ADM

アーチャーダニエルズ・ミッドランド(ADM) | マネックス証券 (monex.co.jp)

 

【参考】

州都はスプリングフィールド市、最大都市は北東部のシカゴ市で、大規模な工業地帯を持つシカゴ都市圏に人口の8割が住む。州の中部や西部には小さな工業都市と生産性の高い農業地帯があり、南部には石炭、木材および石油など天然資源に恵まれ、幅広い経済基盤がある。シカゴの港はイリノイ川を経由して五大湖とミシシッピ川を結ぶ交通の要衝であるイリノイ州は国内における商工業、交通、政治、財政の中枢的存在ということもあってアメリカ合衆国の縮図と言われる

イリノイ州の農業生産品はトウモロコシ、大豆、豚、牛、酪農製品、及び小麦である。大豆の生産高では通常国内第1位あるいは第2位となっており、2008年では4億2,770万ブッシェル (1,164万 トン) であり、アイオワ州に次いで第2位だった。トウモロコシでは毎年15億ブッシェル (4,000万トン) 以上を生産して、国内第2位である。州内の大学は代替収産品として他の農作物を積極的に研究している。

シカゴのオヘア国際空港 (ORD)は世界でも利用客の多い空港であり、2008年では国内旅行客5,930万人、海外旅行客1,140万人が利用した。ユナイテッド航空やアメリカン航空の主要中継点であり、空港の拡張計画が進行中である。ミッドウェイ国際空港 (MDW)がシカゴ都市圏第2の空港であり、2008年では1,730万人が利用した。

イリノイ州には広範な旅客と貨物の鉄道輸送網がある。シカゴは全国的なアムトラックの中継点であり、州内旅客はアムトラックのイリノイ・サービスを利用できる。北アメリカの鉄道線のほとんど全てがシカゴに集合しており、世界でも最大級で活動的な中継点となっている

ミシシッピ川やイリノイ川は農生産物の輸送に使われている。ミシガン湖はセントローレンス海路を通じて大西洋へのアクセスを可能にしている。

イリノイ州 - Wikipedia

 

【参考】

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド (Archer Daniels Midland,NYSE: ADM) は、アメリカ合衆国の穀物メジャー。特に食用油の原料となる大豆や綿花、トウモロコシなどに強みを持つ。

現在はイリノイ州中部のディケーターに本社を置いている。創業以来10年ごとに、ADMは、製粉、加工、専門の食品素材、ココア、栄養など、少なくとも1つ以上の主要収益源を追加していった。

製品には、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、キャノーラ油、ピーナッツ油、亜麻仁油、ジアシルグリセロール(DAG)油だけでなく、トウモロコシ胚芽、コーングルテン飼料ペレット、シロップ、でんぷん、グルコース、ブドウ糖、結晶ブドウ糖、高果糖コーンシロップ甘味料、ココアリカー、ココアパウダー、ココアバター、チョコレート、エタノール、小麦粉、等々が含まれる。最終用途は、人や家畜の消費用、および、バイオエタノールやバイオディーゼルなどの添加燃料。

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド - Wikipedia

 

【参考】2024年4月2日の記事

米イリノイ州の住人たちは覚悟しておくべきだろう。身近にある木の上ですさまじい数のセミがうごめき、愛を交わし、死んでいく光景を目撃することになるはずだ。2024年夏、イリノイ州中部では2世紀以上ぶりのセミの大量出現が予測されている。成虫になるまでの年数が13年の「ブルードXIX」と17年の「ブルードXIII」という2種類の周期ゼミが、同時に地面から這い出てくるというのだ。

「珍しいのは、このふたつのブルードが隣り合って存在している点なのです」と、ジョージ・ワシントン大学の昆虫生態学者であるジョン・リルは言う。「イリノイ州が“グラウンド・ゼロ”になることは間違いなさそうです。州内の隅から隅までセミで覆い尽くされるでしょう」 前回このふたつのブルードが同時に地上に飛び出したのは、トーマス・ジェファーソンが大統領を務めていたころ( 1801〜09年)、シカゴ市がまだ存在していなかったころのことだ。

 
【参考】2024年2月16日の記事

あのセミたちが、やってくる。米国の中西部や南東部では、かつてないほどの多さになるだろう。少なくとも、(訳注=米国がフランスから210万平方キロを超える領土を購入した)「ルイジアナ買収」の年以降では最大の数になる。

羽化が始まるのは4月の終わりごろからだ。幼虫は前脚を使って地面の穴からはい出てくると、ビーズのような赤い目で静かに羽化できる場所を探す。

ショックレーによると、今回のダブル羽化では全部で1兆匹を超えるセミが現れることになりそうだ。その地域は、GSBとNIBが通常(訳注=13年おきか17年おきに)見られる16州ほどに及ぶ。都市部の緑地を含めて、森や林の方が、農地よりも多く出てくる。

素数ゼミの生存期間は1カ月ほどで、だいたいは自分が地上に出てきた場所の近くで死ぬ。飛ぶのは、それほどうまくない。どこかにとまるのは、もっと苦手だ。だから、歩道や街の車道で息絶え、人や車につぶされることが多い。そんなところは、ツルツル滑りやすくなってしまう

都市部だと、死骸が多いので、清掃が必要になる。でも、ゴミ箱に捨てたり、清掃車で片づけたりするよりは、無料の肥料として自分の庭や自然がある一角で植物のために活用すべきだろう」とショックレーは提言する。

1990年に素数ゼミが大発生したときは、イリノイ州最大の都市シカゴでは「歩道にたまった死骸をかたづけるのに雪かき用のスコップを使ったと市民は報告している」とイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校では伝えられている。

素数ゼミの大量発生の第一波は、ルイジアナ州北部、アーカンソー州南部、アラバマ州、ミシシッピ州、ジョージア州北部とサウスカロライナ州の西部にまで及ぶだろうとにかく、毎年、出現する普通のセミとは数の多さが違う、とジーン・クリツキーは話す。

羽化する地域は、さらに広がっていく。ノースカロライナ州中部、テネシー州東部、アーカンソー州北部へ。これに、ミズーリ州南部とイリノイ州南部、ケンタッキー州西部が続く。そして、ミズーリ州とイリノイ州の中部・北部、インディアナ州北西部、ウィスコンシン州南部、アイオワ州東部が締めくくりとなる、とクリツキーは地名を並べる。

ということで、これらの地域は約6週間にわたって騒がしくなる。セミが伴侶を求めて飛び回り、卵は木の枝に切り口をつけて産みつけられる。産卵が終わると一生を終え、死骸は一度かいだら忘れようもない腐臭を放つようになる。先のショックレーにいわせれば、腐ったナッツのような臭いがする。

「素数ゼミは、米国の東半分にある落葉樹林の生態系のとても重要な部分を担っている」と先のクリツキーは指摘する。

放っておくのが一番」。ダブル羽化が起きる地域に住む人々への最善の助言はこれに尽きる、とコネティカット大学の生物学教授ジョン・R・クーリーは語る。

森はセミたちのすみかであり、セミは森の一部なんだ。殺そうと思ったりしないで。殺虫剤をかけるようなことはやめて。そんなことをすれば、悪い結果しか生まれない。そもそも殺虫剤で駆除できるような数ではないし、殺虫剤をやたらに使えば、(訳注=一緒に結びついている大切なものも含めて)何もかも殺してしまうことになる

もし、守るべき繊細な植物があるときは、専用の保護ネットを活用することをクーリーは勧める

ダブル羽化で1兆匹ものセミが出てくることを悪夢のように思う人には、このたぐいまれな自然現象に畏敬(いけい)の念を持ってほしい、とショックレーは訴える。

「こわがるのではなく、驚くべき貴重な自然の営みとして受け入れてほしい。しかも、一時的なものなのだから。確かに、強烈ではあるだろう。でも、決して長続きはしない」(抄訳)

(Aimee Ortiz)©2024 The New York Times

 

 

 

 

 

※現在、ボルティモア港が閉鎖されているが、現時点ではサプライチェーンに問題は出ていないらしい。しかし、これが長期化すればアメリカではさらにインフレが進行することになる。

 

【参考】2024年3月28日の記事
ボルティモア港では2023年に約85万台の自動車や小型トラックを扱っており、農業機械や建設機械は130万トンの総重量に相当する数を取り扱っている。
「いまのところは、誰もが『輸送経路を変更するだけで大丈夫だろう』と言っています」と、ノースイースタン大学でサプライチェーン管理を専門にするナダ・サンダースは語る。「でも、これが長期間にわたって続けば大丈夫ではなくなります。価格に影響が出てくるでしょう」

 

【参考】2024年3月27日の記事
「ワシントンとニューヨークを結ぶ大事なルート。長期にわたって使えなくなると、日本にも大きな影響がある。ただ、復旧に向けての長期化は避けられない」
同港は自動車を毎年約85万台も輸出するほか、農産物、建設機械などを扱う、米国有数の港でもある。

 

【参考】2024年3月28日の記事

[ワシントン 27日 ロイター] - 米東部メリーランド州ボルティモアではコンテナ船が衝突した橋が崩落したため港への船舶の出入りが停止された。

これによって物流面で何らかの問題が発生しているが、他の東部の港湾がより多くの貨物を受け入れる余地があるので、全米規模で新たなサプライチェーン(供給網)の危機をもたらす公算は乏しい。エコノミストや物流専門家はこうした見通しを示した。

ボルティモア港の閉鎖がいつまで続くのか現時点では分かっていない。イエレン財務長官は27日、連邦政府のサプライチェーン対策専門チームが会合を開いてボルティモア港閉鎖の影響を検討していると説明した一方、バイデン政権として港再開のためできるだけ速やかに全力を注ぎ込むと強調した。

こうした中でニューヨークからジョージアまで東部各地の港湾運営当局には、ボルティモアに向かう予定だった貨物を回せるかどうかの問い合わせが殺到している。

バージニアのノーフォーク港当局の広報担当者は「われわれは手助けする準備ができている。コンテナの取り扱いが急増しても対応する十分な余裕がある」と語った。