地面に深く穴を掘り、その穴に水を注入すると地震が起きることが知られている。

海底に深い穴を掘れば海水が自動的にその穴の中に入って行くのだから、地球深部探査船「ちきゅう」が誘発地震を引き起こしているという噂もまんざらではない。

それについて当然のように「『ちきゅう』陰謀説のバカさ加減」というタイトルの記事が出てきて一蹴しているが、その記事では「ちきゅう」が穴を掘って原爆を仕掛けたことで地震を起こしたという話になっている。

しかし、「ちきゅう」がやっていることで疑いが持たれているのは爆弾などを爆発させて人工地震を引き起こしているということではなく、掘った穴に海水が勝手に注入されてしまうことで誘発地震を引き起こしているのではないかということなのだから、直ちに陰謀論の類だと言って否定するのは筋違いになる。

 

 

【参考】
『ちきゅう』は2005年7月に完成、JAMSTEC(海洋研究開発機構)が運用している地球深部探査船である。水深3000メートルの海底から7000メートルの深さまで掘削できる性能を有しており、地球内部の解明を目的とする国際プロジェクト、IODP(統合国際深海掘削計画)の主力船の一隻として調査活動を行なっている。
ところが、東日本大震災の直後、この船に陰謀論者たちが目をつけた。
この船は地下10キロまで穴を掘れる。今度の地震も、震源の深さは地下10キロだった。この船が穴を掘って原爆を仕掛け、地震を起こしたのだ!――というのだ。
僕が最初に気づいたのはこのブログ。書かれたのは3月20日である。

 

【参考】
・誘発地震が最初に認識されたのは1962年、アメリカのコロラド州の米軍兵器工場で放射性廃液の始末のために約4000メートルもの井戸を掘って捨てたときだった。それまで地震がまったくなかったところに地震がおき始めた。多くはマグニチュード(M)4以下の小さな地震だったが、なかにはM5を超える地震もおきて地元では大きな騒ぎになった。その後、廃棄を止めると地震が減り、注入を再開したら地震が再発した。このため注入は中止されたが、それまでに注入した廃液は60万トンだった。震源は井戸から半径10キロメートルの範囲に広がり、震源の深さは10~20キロメートルに及んだ。これは井戸の深さの数倍であり、地下に入れた廃液が岩盤の割れ目を伝わって深いところにまで達し、そこで地震を引き起こしたのだと考えられている。
・水の注入による誘発地震としては,アメリカ,コロラド州デンバーの例が有名である。1962年に工場の廃液を処理するため3800mの深さの井戸に注入したところ,小地震が多発し,その後数年間,地震活動が断続した。ダムの貯水や水の注入による誘発地震は,地下の岩盤に浸入した水の圧力で岩の破壊強度(断層面の摩擦)が低下するためと考えられる。

 

【参考】
少し前まで、米国オクラホマ州で地震はまれだった。今やそうではない。2009年にはマグニチュード3以上の地震が20回あった。2008年以来、同州の地震活動は40倍に増えている。その原因は? Scienceに報告された研究によると、人間だ。この研究は地質学者がかねて疑ってきたことを確証した。つまり石油・ガス掘削企業による地下への水の廃棄が地震を引き起こすのである。
オクラホマ州では、地下から石油や天然ガスを抽出するのに伴って毎月何千tもの廃水が生じる。各社はこの廃水を井戸に注入して地下に捨てており、これが地下水圧を上げて断層にストレスを加える可能性がある。
「通常、地震はプレート運動によって自然に起こる」とコーネル大学(米国ニューヨーク州イサカ)の地球物理学者でこの研究論文の筆頭著者であるKatie Keranenは言う。「だが大量の水を地下に注入すると地震のサイクルに影響が生じ得ます」。
Keranenらは水文地質学モデルと地震活動データを組み合わせて解析し、オクラホマシティーの南東にある4つの廃水井戸が「ジョーンズ群発地震」の原因らしいと結論付けた。この群発地震は2008〜2013年に米国の中部と東部で発生した地震の20%を占める。研究チームはまた、廃水注入が井戸から30kmも離れた地点で地震を誘発したことを見いだした。その影響は従来の想定をはるかに超えていたのだ。
「誘発地震」という術語は採鉱やダム、地下核実験、廃水注入などによって引き起こされる地震を示すのに使われてきた。石油・天然ガスの採掘技術が広がり、廃水注入と地震を結び付ける研究結果が増えるにつれ、この用語は目を離せないものになりそうだ。