日経平均株価とドル円は日銀による量的・質的金融緩和が始まった2013年から上昇し続け、大雑把に見れば連動性もある動きになっている。(チャートを見るとその異次元緩和が始まる2013年4月よりも少し前から上昇が始まっているため、インサイダー取引があったのだろう。)

見比べてみると明らかに日経平均株価の方が強い相場になっているが、一般的には2023年5月以降は理由もなく上昇してきたと言われている。

しかし、今後はアメリカと日本の金融政策の影響などにより、為替は円高方向になっていくと予想されており、株価の方もそれに伴って下落していくはず。

 

・日経平均株価

日経平均株価 チャート - Investing.com

 

・ドル円(USD/JPY)

為替(FX)チャート|リアルタイムチャート - Investing.com 日本

 

 

 

ドル円が予想通りに2024年末には130円台ぐらいになっているのであれば、日経平均株価は26,000円ぐらいが適正価格のように思える。

(ドル円の均衡水準は110円~115円だと言われているが、実際にそうなるのであれば日経平均株価も26,000円よりずっと下まで落ちているのかもしれない。株も為替も日銀が作ってきた相場なのだから、今後の日銀の金融政策が影響しないわけはない。出口戦略で円高だけ進行し、株はずっと上昇し続けるということがあるとは思えない。そうなるようにしているのかもしれないが、恐らく望まない形で下落する。)

予想通り景気後退するのであれば企業業績も悪化するが、既に一部企業はそれに備えて人員削減をし続けているため、強い企業に関してはそれほど業績に影響がないのかもしれない。(特にアメリカ)

しかし、中国の大手不動産デベロッパーの社債を購入していた外国の債権者は無傷で済むとは思えず、一部の金融機関は大打撃を受けるのだろう。全額返済は不可能であるはず。

 

【参考】2023年11月20日の記事

昨年来の歴史的な円安は最終局面にあると見ておきたい。ドル円レートの中長期の均衡水準は1ドル110円~115円程度と考えられ、向う数年かけてその水準まで行き過ぎた円安が修正される可能性があるだろう。

米国経済の減速が明確になり、より大幅なFRBの利下げ期待が生じることと、日本銀行のマイナス金利政策の解除が重なれば、来年末には1ドル130円台まで円安の修正が進むのではないか。

進むドル高円安の修正:歴史的円安は最終局面か|2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 

 

 

テクニカル的には、2021年の高値付近である30,800円ぐらいが天井だったが、実際には2023年に34,000円近くまで上昇し、さらに2024年に入るとたった数日で一気に36,000円を突破するところまで勢いづいている。

これは状況的にも水準的にも明らかに異常であり、相当買いが殺到しているような動きになっている。

もし、年内にさらに何らかの重大な問題が発生した場合、(あるいは覆い隠されてきた問題が顕在化した場合、)日経平均株価は2万円を割り込み、最悪の場合、13,000円ぐらいまで暴落するのかもしれない。

(コロナショックの時は24,115円から16,358円まで暴落しているが、今後、これを超える暴落が起きる可能性がある。)

既に重大な問題が発生し続けているにもかかわらず、相場はそれを無視し、リスク選好のムードが高く、ハイリスクハイリターンを許容する極度の楽観的な態度になっている。

特に去年の5月から続く急騰は不自然であり、その不自然な動きが今も続いていることを見れば、最近の相場は中央銀行や年金が作った官製相場という次元ではなく、相当クレイジーな領域へと突入しているように思える。

最近の急騰は投資に失敗した資産運用会社などを救済するために何者かが相場操縦を行い、利益確定させることで、今後の巨額損失をカバーするためのものなのかもしれない。

あるいは、単に日銀が自らの財務悪化によって債務超過に陥るのを阻止するために相場操縦を行っているだけなのかもしれないが、最近はETFを買っていないことになっているため、不可解になる。

相場操縦を行っている者は現在、相当巨大なロングポジションを構築していることになり、少し下がっただけでも巨額の含み損を抱えることになる。

このようなことを続けていれば、いくらカネをどこからか引き出してきて上げ続けたとしても、いずれは少し下がっただけでパニック状態に陥り、溜め込んできた巨大なポジションを放出せざるを得なくなることで結果としてクラッシュを誘発してしまうのかもしれない。

(最近の相場はショートカバーを誘発することで噴き上がった面もあるが、下にも同じような動きがあるはず。)

一般的には余程の配当金でも入ってこない限り、株を大量保有していてもそれで買い物ができるわけではないのだから、いずれは決済注文を出すことになり、市場に積み上がった一般の大量の株が放出されるようになる。

 

含み損に対して引当金が必要になる金融機関もあるが、ただそれを阻止したいだけなのかもしれない。

もしそうなのだとしたら、今後、むしろ極端に円安になる可能性が指摘されている。(かなりのインフレになる)

そうならないとしても、日銀による異次元緩和がさらに続くことによってかなりの増税になると言われている。(しかし日銀はETFを買ってないと主張している)

つまり、今後の日本経済は、かなりのインフレになるか、かなりの増税になるか、どちらかになるしかないと言われている。

どうやら政府としてはかなりの増税の方に持っていきたいようだが、予想外の事態により望まない形でかなりのインフレになる可能性もあるのかもしれない。

 

【参考】

バランスシートが拡大してETFなどの価格変動が大きい資産の構成比が高まり、抱えるリスクが増大しているにもかかわらず、日銀の自己資本(資本金、法定準備金、各種引当金の合計)は微増に留まる。日銀の収益は現在のところ黒字であるが、日銀のバランスシート縮小や利上げといった金融政策の正常化の際に赤字となり、財務が悪化し債務超過に至る可能性がある。

中央銀行の財務悪化で起き得る最大の問題は、自国通貨の信認低下と、納税者負担の増大である。通貨の信認が落ちると、インフレ、金利の急上昇、外国為替レートの大幅下落といった事態が引き起こされる可能性がある。日銀の財務悪化の可能性が高まると、海外投資家による円建資産の売却が起こり、為替レートが下落すると考えられる。次いで主に国内で参照される金利が上昇し、遅れて物価が上昇すると想定される。通貨の信認が大きく失われると、国内資産の外貨建へのシフトや、富裕層の海外移転等も起こり得る。もっとも、通貨の信認が低下するかどうかは、日本の財政への信認が維持されるかどうかに依存する。中央銀行の財務悪化によって財政悪化が引き起こされる場合にのみ通貨の信認が問題となろう。ただし、通貨の信認が維持されたとしても、中央銀行が債務超過になると、国庫納付金の減少や政府による資本注入などを通じて国民負担になる。

現在、日銀は物価安定目標の達成のため大規模な金融緩和を行っている。その過程でバランスシートが増大し、リスクを抱えている。物価目標を達成できた場合にも、達成できなかった場合にも、それぞれ債務超過のリスクがあり得る。物価目標を達成できた場合には、マネタリーベースに対する需要がどの程度であるかに依存するものの、資金吸収を進める必要があると考えられる。ただ、日銀が保有する国債を売却してしまうことは急激な金利の上昇につながる可能性があるため困難だ。日銀は保有国債の償還資金を再投資しないことで、徐々に残高を減らしていくしかないだろう。日銀のバランスシートの縮小がゆっくりとしたペースであまり変化しないのであれば、市場に出回る資金を吸収する方法として、日銀当座預金(日銀当預)への付利金利を引き上げることが考えられる。リスクフリーかつ相応の付利が行われることで日銀当預の魅力が高まると、民間金融機関が資金の振り向け先として日銀当預を選択する余地が増すと思われる。日銀にとっては、当座預金への利払いが増加する結果、収益にマイナスとなる。

一方、物価目標が達成できず緩和が長期化するケースでは、株式・ETF・J-REIT等の保有残高が増加し続け、価格変動のリスクと影響が増大する。金融危機等が発生した場合に評価損が発生し、日銀の収益を圧迫する可能性がある。

ETFの損失への備えが不十分な日銀の引当 (dir.co.jp)

 

 

 

wiredではベンチャーキャピタルが容易に資金調達できた時代は既に終わっており、今後、過大評価されてきたそれらの新興企業は次々と淘汰され、短中期的には期待されていたような利益を上げることもないのだろうと書かれている。

さらに、NVIDIAのようなAIに絡む好業績企業でさえもドットコムバブルの時のように期待先行によって買われ過ぎていたのではないかといった論調になっている。
「テック株は2024年、弱気市場に再び直面し、ナスダックの指数は複数年にわたり最低値を記録すると予想される。多くのスタートアップは倒産し、VCファンドのリターンはしばらくマイナスのままとなるだろう。」
と予想されているが、恐らくそうなるのだろう。

また、個人的には、アメリカ、中国、日本の金融政策や危機によってドットコムバブル崩壊の時よりもずっと深刻な事態に陥るのではないかと思える。

 

【参考】2023年12月25日の記事

資金を調達しやすい環境は市場の流動性を高め、VCが投資先をイグジットさせる助けにもなった。これほど利益を出していない企業が、これほど高く評価されたことはいまだかつてない。米国市場では21年に1,000社以上が上場した。これは前年の倍以上である。

ところが、連邦準備制度(FRS)が22年に金利を引き上げ始めたことで、VCにとって楽しい時間は終わりを迎える。QuantumScapeの株価は90%以上下落したが、少なくともほかの多くのスタートアップとは異なり、まだ事業を続けられている。バンクマン =フリードには有罪判決が下された。IPO市場は停滞した。VCの世界に飛び込んだ新規参入者は一目散にここから逃げ出そうとしている。 景気がよい時代に投資にコミットした企業は、VCから多額の資本提供を求められている。資金の供給が不足し、多くのスタートアップは厳しい現況に直面している。「オフィスソリューション企業」(「レンタル」よりも響きがいい)を自称したWeWorkの評価額はかつて500億ドル近くあったが、いまや破産申請をしている。

米証券取引所ナスダックのテック業界の指数は23年の前半に強く反発した。人工知能(AI)に大きな期待が寄せられたからだ。そしてAI用のGPUを提供するNVIDIAの評価額は1兆ドル以上にもなった。しかし、膨れ上がった投機的バブルの解消には何年もかかる。その間、弱気市場の反発、いわゆる「だまし上げ」が頻発するだろう。ドットコムバブルがはじけたあと、ナスダックが底値に到達するまで1年半、ピーク時の水準に戻るのに15年以上もかかったのだ。

IPO市場ではこの数年間、目立った動きはない。テック株は2024年、弱気市場に再び直面し、ナスダックの指数は複数年にわたり最低値を記録すると予想される。多くのスタートアップは倒産し、VCファンドのリターンはしばらくマイナスのままとなるだろう。

NVIDIAについて言えば、シスコシステムズに起きたことを気に留めておくべきだ。ドットコムバブルの最中、インターネットを支えるサーバーを提供するシスコシステムズは、一時的に世界で最も価値のある企業になった。同社の株は急落する直前まで売り上げの約40倍の時価総額で取引されていた。それから20年以上たったいまも、シスコシステムズの株価はバブルのピーク時よりもはるかに低いままだ。現在、売り上げの約35倍の時価総額で取引されているNVIDIAも同様の運命をたどる可能性がある。

ベンチャーキャピタルのパーティが終わり、バブルの清算が始まる──特集「THE WORLD IN 2024」 | WIRED.jp

 

 

 

中国のシャドーバンキングである中植が債務超過に陥り、破綻したが、これは「中植の債権者の大半が金融機関でなく高額資産家であるため、銀行システムを揺るがす事態には発展しないだろう」と言われている。

しかし、シャドーバンキングが投資や融資で使っていた資金は銀行の預金だったらしく、最近では主要な銀行で預けていたカネがなくなったという騒ぎも発生している。

 

以下の記事では中国は「金融危機が起こる可能性が低い」 「中国指導部は~中略~必要な資金繰り支援は行う構えのようだ」 「銀行業全体でみて不良債権増加に対する耐性がまだあると考えられる」 「銀行の貸倒引当金が6.6兆元、自己資本の取り崩し余地が6.67兆元(試算値)*あり、これらを合計すれば、18兆元程度となる」 などと書かれているが、18兆元というのは日本円で言えば358.8兆円であり、本当にそれだけの貸倒引当金があるのかということに疑問がある。

中国では中植などのシャドーバンキングが債務超過に陥っており、そこに資金を流していた銀行の預金が無くなっている可能性がある。

また、多くの一般市民が銀行から預金が引き出せなくなっていたり、「超卓航科」が銀行に預けていたはずの6000万元(約12億円)がほぼ全て消えてしまっていたり、銀行員が勝手に預金を金融商品に変えていて巨額損失が発生しているにもかかわらず元本保証が受けられないとか(しかも預金者は裁判で敗訴している)、資本逃避が始まっているといった告発動画もある。

その銀行は小規模な地方銀行などではなく、八行五保の一角(中国農業銀行、中国工商銀行、招商銀行)であり、以下の記事を書いた人物は中国側の発表を真に受けていて、実態を全く把握していない可能性がある。

中国恒大グループの創業者である許家印が当局に拘束された後、恒大グループが借金を抱える銀行の詳細なリストがSNSで拡散された際、それが引き金となって恒大グループに34億元(約690億円)を融資していたとされる河北省滄州銀行(地方銀行)では取り付け騒ぎも起きている。

今年の上半期末までに滄州銀行の負債は2200億元(約4.5兆円)を超えている。

しかし、読売新聞ではこの滄州銀行での取り付け騒ぎは偽情報がSNSで拡散したことが原因であり、「滄州銀行は、実際の融資額は10分の1の3・46億元だと発表」と報じている。

この告発動画の内容が真実なのであれば、中国での金融危機は既に始まっているように思える。

貸し倒れがどうとかといった次元なのではなく、銀行で不正が横行しており、金融商品の取引に失敗したことでさらに巨額損失を出しているらしい。

不動産価格の下落についても、「最近の中国で急落したのは地方都市で大都市(上海や北京など)の下落幅は小さい」などと書かれているが、告発動画では武漢市漢陽区で152万元(約3000万円)で家を買った同級生が家を売りに出しているが全く売れず、あらゆる売り物件をチェックしたところ、今その物件の最高価格はたったの100万元であり、その価格で売れたとしても資産価値の1/3を失うことになると言っている。

さらに周辺の費用を加味すると60万元(約1200万円)以上の損失になるだろうとも言っている。

この専門家はそういったことを全く無視しており、中国の不動産バブルを日本のバブル崩壊の経験だけで類推するのは危険などと語っている。

※(武漢市は中国中部地方及び長江中流域唯一のメガシティで、湖北省の省都および華中地方唯一の副省級市でもある。また、中国有数の工業都市、文教都市及び交通要衝でもある。) wikipediaより

 

【参考】2023年12月7日の記事
不動産市場発の金融危機が起こる可能性は低いとみられる。中国指導部は、金融システミックリスクの発生に対して警戒を強めており、23年10月に開催された中央金融工作会議では、金融リスク防止・解消に関する文脈の中で、「様々な所有制の不動産企業の合理的な資金需要を満たす」とされた。業績不振が目立つ民間デベロッパーを念頭に、資金繰りをしっかりモニタリングし、必要な資金繰り支援は行う構えのようだ。
また、不動産セクター向けのファイナンスの大半を占める銀行貸出について、銀行業全体でみて不良債権増加に対する耐性がまだあると考えられる。例えば、2020年以降、銀行業は全体で毎年約3兆元以上の貸倒引当金を繰り入れているとみられ、そのうえで2兆元近い純利益を計上している。加えて、2023年6月末時点で、銀行の貸倒引当金が6.6兆元、自己資本の取り崩し余地が6.67兆元(試算値)*あり、これらを合計すれば、18兆元程度となる。これは、不動産向け以外も含む不良債権残高(3.2兆元、23年6月末)の約6倍の規模である。
低迷続く中国不動産市場の展望-金融危機に至る可能性は低いが、停滞は長期化し、経済の重石に 基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.321]|ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

 

【参考】2023年12月25日の記事
最近の中国で急落したのは地方都市で大都市(上海や北京など)の下落幅は小さい。
中国では2020年以降3年連続で3兆元の不良債権を処理してきたため、銀行経営は苦しかったものの不良債権比率は1%台にとどまっている。
SNS普及で自ら情報を収集する時代になっただけに、自らの思い込みを正当化する情報だけでなく、それに反する情報も吟味するよう心掛けたいと思う
中国の不動産バブル-日本のバブル崩壊の経験だけで類推するのは危険 |ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

 

【参考】2023年12月12日の記事
11月下旬、中国の大手資産運用会社の中植企業集団(中植)は自社が「深刻な債務超過」に陥ったと発表した。約2000億元(約4兆600億円)の保有資産に対し負債は推定4600億元(約9兆3400億円)。
問題は、中植が中国のシャドーバンキング(影の銀行)の重要なプレーヤーであることだ。シャドーバンキングはノンバンク企業による融資や投資で、中国では盛んに行われている。
中国の銀行は国有で融資業務に対する規制も厳しいが、シャドーバンキングは銀行が規制をかわす手段になっている。
2015年のある報告書は、中国のシャドーバンキングの3分の2が銀行からの資金と推定している。

2008年の金融危機以降、中国では大規模な景気刺激策により信用が拡大し、シャドーバンキングの役割が急激に広がった。資金の大半は不動産市場に投資され、株式市場や商品市場にも流れ込んだ。
銀行は高金利の住宅ローン、特に販売前のローンを奨励した。不動産開発業者は、これらの資金を元手に信用取引を行った。このような信用、規制、不動産建設の結び付きは、不正や腐敗の機会を生んだ。

中国「信用バブル崩壊」へのカウントダウンが、「影の銀行」破綻から始まる(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

 

 

 

 

 

以下の動画によれば、北京や上海といった一線都市でも既に不動産価格が大幅に下落しており、北京市西部に位置する海淀区柳小区(有名な学区)では2021年当時、ある住宅の販売価格は約2億円だったが、現在は約1.2億円まで下落している。

上海市の中心部にある学区の住宅で築30年近い中古住宅はわずか2年で約2億円から約1.1億円にまで下がった

太古里は上海浦東で最も高価で最も新しいエリアで1平米当たり約300~400万円だが、太古里のショッピングモールは客がまばらとなっている。(これは時間帯や時期にもよるのではないかと思える。)
2023年10月の北京の新築高級住宅の取引戸数は310戸で、前年同月比で46%減少している。

新築住宅価格が下落すると中古住宅価格も下落するため、負のスパイラルに歯止めがかからない状態になってしまう。
これらの情報が事実なのであれば、中国政府は何ら有効策を打ち出すことができずにいることになり、住宅価格の暴落と共にいよいよ金融危機が深刻化するのだろう。

 


 

やはり、中国の不動産バブル崩壊の問題は既に市場で織り込み済みであるはずはなく、今後も様々な国へと影響していくのだろう。

様々な情報から、中国では既に金融危機に陥っているようにも思えるが、専門家はその可能性は低いと言い続けている。

 

【参考】2023年9月19日の記事

融創中国とは異なり、多くのデベロッパーは海外債権者と債務再編で合意に至っていない。

不動産開発の融創中国、オフショア債務再編計画を債権者が承認 | ロイター (reuters.com)

 

【参考】2023年9月1日の記事

経営危機に陥っている中国の大手不動産デベロッパーの碧桂園(カントリー・ガーデン)は、社債の返済時期を遅らせるなどの債務再編(債務リストラ)交渉の延期を繰り返している。

一部の社債保有者からは、満期での全額返済を求める提案も出されており、多くの提案が採決にかけられる。また、その人民元建て債の10.5%を保有している投資家グループは、碧桂園が正式にデフォルトを宣言する提案をしている。デフォルトを宣言することで、債権者に対する部分的な返済に向けた交渉を前に進める狙いがあるのだろう。

他方、恒大集団は8月31日に、手元資金不足のため8月の理財商品(投資信託の一種である資産運用商品)の支払いができなかった、と投資家に通告した。不動産価格下落の影響もあり、資産処分が進捗していないことが深刻な資金不足を生んでいる。2021年にも恒大は、400億元(約8,020億円)相当の理財商品の償還ができず、全国規模の抗議行動が巻き起こった。

同社は8月末に予定していたドル建て、香港ドル建て債の再編を巡る債権者との会合を延期している。長引く経営再建プロセスの先行きは、さらに不透明となってきた。

中国の不動産不況は、金融セクターに波及し始めている。現在、その中心にあるのが、銀行ではない金融機関・商品、「シャドーバンキング(影の銀行)」である。

中国最大級の資産運用会社の一つである中植企業集団の傘下にある、信託会社・中融が組成した高利回りの信託商品でデフォルトが生じたと、顧客3社が8月11日に明らかにした。中融は中国で9番目に大きな信託会社である。

そして、今回恒大は再び理財商品のデフォルトを起こした。より一般国民に浸透している、いわば本丸の理財商品にも不動産不況の影響が再び及んできているのである。こうしたシャドーバンキングの問題は、資金ひっ迫傾向を助長し、それが経済や不動産市場のさらなる悪化をもたらすという悪循環を生みやすい。

2021年の恒大問題の表面化から2年以上が経過し、不動産市場は再び悪化の度を強めている。中国経済は2年前と比べても脆弱性を高めており、不動産分野の問題は、中国経済と金融分野により大きな影響を与える可能性が高まっている。

デフォルトの瀬戸際に追い込まれる中国不動産大手の碧桂園:恒大は理財商品がデフォルト|2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 

【参考】2024年1月11日の記事

北京市第一中級人民法院(中等裁判所)は1月5日に、中国のシャドーバンキング(影の銀行)大手の中植企業集団破産申請の受理を決定した。同法院によると、中植企業集団は期限までに債務を返済できなかったほか、すべての債務を償還するのに必要な資産が不足しているなどの理由で破産申請を行ったという。今後は「企業破産法」に基づき、破産清算手続きが進められる見通しだ。最近の中国では、最大級の規模の企業破綻となった。

中植は裕福な個人投資家と企業の資金を集め、一般銀行から融資を受けるのが難しい中小企業や不動産開発会社に融資するシャドーバンキングの役割をしてきた。不動産市場が活況であった際には、資産規模が1,400億ドル、約20兆円を超えたとされる。

競合する信託会社が過去数年リスクを縮小する中でも、中植とその傘下の中融国際信託は、経営難に陥った不動産開発会社への投融資を拡大していた。また、経営危機に陥った中国恒大集団などからも資産を積極的に買い取っていた。

その後中植企業集団は2023年11月に、投資家に対して謝罪文を発表し、仲介機関を通じて検証を行った結果、帳簿上の総資産は約2,000億人民元に達する一方、保証金を除く負債は4,200億~4,600億人民元に上ると説明した。つまり、債務超過額が2,200億~2,600億元(約4兆6千億~5兆4千億円)にも達していたと考えられる。

中植の債権者の大半が金融機関でなく高額資産家であるため、銀行システムを揺るがす事態には発展しないだろう。しかし、約3兆ドルと推算される規模の中国のシャドーバンキングの混乱は、不動産市場への資金の流れを一段と細らせ、不動産市場の調整の長期化をもたらし、中国経済に強い逆風となるだろう。

中国シャドーバンキング大手が破産申請:債務超過は5兆円規模か|2024年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 

【参考】2023年11月7日の記事

・中国経済の低迷が深刻になってきた。不動産不況の長期化で2024年の経済成長率は3%を割り込む可能性がある。

・景気テコ入れを狙った住宅ローン金利の引き下げは銀行の経営を圧迫。不動産大手の破綻懸念が金融システムの動揺を招く「負の連鎖」も起きている。

・銀行セクターにも国家財政にも金融危機を回避するための余裕はあるとの見方もある。だが、リーマン・ショック当時の状況を振り返ると、習近平政権が危機回避をするのは容易ではないと考えるべきだろう。

中国の金融危機は間近か?習近平政権は回避できない可能性が高い理由 不動産不況が深刻化、不良債権は加速度的に増える(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

 

【参考】2023年8月22日の記事

現在は利下げ局面(2023 年 8 月 21 日に、中国人民銀行は 1 年物 LPR を 0.1%引き下げ)であり、差し迫った危機ではないが、今後、金利が大きく上昇するような局面では住宅需要は一段と落ち込み、企業や家計の負債圧縮意欲は一段と高まり、投資や消費を抑制するだろう。最悪のケースとして、景気失速下で住宅価格が暴落し、価格低迷が長期化するようなことがあれば、銀行の不良債権は激増し、中国発の金融危機が発生してもおかしくはない。今後の「不動産不況」の行方には細心の注意を払う必要がある。

中国:最悪ケースは金融危機のトリガーに (dir.co.jp)

 

 

 

・おまけ

【参考】

主に信用創造の逆回転である信用収縮によって金融危機へと至ることになる。 

銀行による信用創造が活発に行なわれるようになると、預金などの信用貨幣は急速に増大した。信用創造によって生まれた信用貨幣は、誰かが銀行から借金をすることで生まれる。そして信用貨幣の価値は本源的には借手である「誰か」の債務返済能力が保証している。そのため、借手の返済能力が低下すると信用貨幣はその価値が危ぶまれることとなる。 

信用創造によって経済全体の貨幣は現金よりも多くなっているため、そもそも全ての預金を現金と交換することは出来ない。しかしながら銀行は通常、信用貨幣を現金貨幣に交換することを制限していないため、銀行への貸手(預金者)は、信用貨幣の価値に不信感を抱いた場合、現金貨幣へ交換する取引(引き出し)を行なうことになる。通常時、預金の引き出しは統計的に一定量を超えることはないため、銀行経営は成り立っているが、預金債権者が一定量をこえて引き出しに殺到した場合は、これに応じることが出来なくなる。これが取り付け騒ぎである。 

こうして銀行による信用構造が崩壊するなか、銀行の貸し出し先は返済を求められる。返済によって経済世界から信用貨幣が減少する。結果として経済活動は低調になる。いくつかの借手はこれを返済することが困難と見こまれ、信用貨幣の一部は不良債権化する。ここで借手が資金繰りのショートを起こして倒産すると、債権放棄(借手に対する贈与)を余儀なくされた銀行は危機に陥る。 

このような恐慌状態に陥る可能性がある状態を、金融危機と呼ぶ。例えば銀行が多額の不良債権を抱えた場合は、上述の恐慌状態に陥る危険が高まっているため、金融危機が起きていると言える。

金融危機 - Wikipedia