ロシアが北海道への侵攻を開始したなどという与太話がオカルトサイトに出ている。

 

 

 

しかし、実際には

「ロシアのオーロラ航空は20日、露極東ウラジオストクと北方領土・択捉島の紗那(ロシア名クリリスク)とを結ぶ旅客便の運航を、12月6日から始めると発表し、航空券の販売を開始した。」

という読売新聞の記事を強引に軍事侵攻という話にしてしまったこじつけであり、ロシア側に日本への上陸作戦を決行する用意があるとはとても思えない。

そもそも、サハリンと択捉島を結ぶ便は以前から運行中であり、今回はそれを拡大するようなことでしかない。

恐らく、日本側のロシアへの経済制裁やウクライナ支援に対する対抗措置として日本をけん制する狙いがあってのことだと思われる。

 

 

 

ロシアは現在もウクライナと交戦中であり、この状況で日本と戦争状態に入ってしまったら二正面作戦となってしまい、ロシアにとっては軍事的には最悪の状態に陥ることになる。

有名な過去の例としては、第二次世界大戦中のドイツと日本の戦線があり、既に元々の戦いで余力がなかったドイツと日本はさらにソ連やアメリカまでも相手にすることになったことで、弱体化している状況下で強大な力によって追い打ちを掛けられた格好になり、当然のようにその不利な戦いによって完膚なきまで叩きのめされている。

もし、よく言われているように、ロシアが日本やフィンランドやバルト三国などに軍事侵攻するようなことがあれば、まさにその当時のドイツや日本の惨状の再現となるに違いない。

アメリカとしては在日米軍に見せ場を作ったり、戦争を長引かせることで軍需産業の活性化を始めとする景気浮揚効果などを狙っているのだろう。

軍資金を貸し付けることで利子を稼いだり、返済不能になった場合は担保を差し押さえたり、保証人に払わせたりすることも考えているらしい。

また、アメリカと中国の貿易額は去年と比べれば減少しているものの、依然として経済面での重要なパートナーとなっており、ロシアからは次々と企業が撤退している一方で中国は別格扱いであり、中国とはあからさまに敵対することもできないはず。

(アメリカはロシアとは戦争できても中国とは戦争できない)

 

 

 

そのため、どうでもいいようなことで「ロシアが北海道に軍事侵攻を開始」などといったクレイジーな話になってしまったり、何かと戦いを煽ったりしている。

(あるいは単にその与太話をしている人物がメルマガ登録者数を増やそうと思って滅茶苦茶やって気を引いているだけなのかもしれない)

 

 

【参考】

複数の地理的に離れた戦線で戦うということは、戦力の分散を意味する。クラウゼヴィッツなどの戦争論でも古代以来の中国の兵法でも、『敵を撃破するうえで重要なことは、自軍の力を一点に集中させること』とされており、「二正面作戦」はその逆の、一般に望ましくない状況に陥っていることを意味する

ドイツ帝国、ナチス・ドイツにおける東西両戦線。 

大日本帝国における中国戦線(日中戦争)と太平洋戦線(太平洋戦争)の両戦線。

二正面作戦 - Wikipedia

 

 

 

・追記

日本の方から先にロシアや中国に仕掛けたということにしたい者がどこかにいるらしく、自民党はまんまとその方向に向かっている。

 

・追記

ロシアとウクライナの戦いが近々終結するのだとしても、「次は日本だ」といった主張はさすがに無理がある。

ジョージアの「アブハジア自治共和国」、モルドバの「沿ドニエストル共和国」、ウクライナの「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」、といった分離独立派のような地域が既に存在してしまっている国と紛争問題になっている。

(ウクライナでは2022年2月24日から始まったロシアとの戦いで占領されたザポリージャ州とヘルソン州も「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」と共に併合されている。つまり、ウクライナはロシアと戦ってしまったことでさらに領土を失った格好になる。)

ウクライナが戦っているからこそ日本やバルト三国やフィンランドやポーランドといった国が助かっているという話には疑問がある。

ロシアはあくまでもロシア帝国時代やソ連時代の領土や関係を意識しているのであって、次々と見境なく隣国を侵略するつもりでいるとはとても思えない。

もし北海道に「ホカイダ人民共和国」なる分離独立派の勢力が誕生し、上陸したロシア軍が実行支配した上でロシア化を進めているといったことでもあるなら別だが、今のところそのような動きはないらしい。