国立医薬品食品衛生研究所が発表している資料の中にある「アスパルテーム:ハザード及びリスク評価の結果発表」には、以下のようにアスパルテームは適量であればがんなどの問題がないことと、遺伝毒性作用が示されなかったことが書かれている。

(IARCがアスパルテームを評価するのは今回が初めてであり、JECFAとしては3回目)

 

【参考】

IARC は、ヒトにおけるがん(特に肝がんの一種である肝細胞がん)に関する限られた根拠に基づき、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ 2B)と分類した。

また、実験動物における発がん性に関する根拠も限られており、がんを引き起こす可能性のあるメカニズムに関する根拠も限られていた。
JECFA は、評価されたデータから、アスパルテームの ADI である 0~40 mg/kg 体重を変更する十分な理由はないと結論づけた。

したがって JECFA は、ヒトが 1 日に摂取する量はこの範囲内であれば安全であることを再確認した。

例えば、200 mg 又は 300mg のアスパルテームを含むダイエット清涼飲料 1 缶の場合、体重 70 kg の成人がADI を超えるには、他の食品からの摂取がないと仮定して、1 日に 9~14 缶以上を摂取する必要がある

 

全体として、JECFA は、アスパルテームが摂取後に有害影響を及ぼすという説得力のある(convincing)根拠は、動物実験データからもヒトのデータからも得られなかったと結論づけた

この結論は、アスパルテームが消化管内で完全に加水分解され、一般的な食品の摂取後に吸収されるものと同一の代謝物になり、アスパルテームがそのまま全身循環に入ることはないという情報によって裏付けられている。

 

アスパルテームは、いくつかの in vitro 及び in vivo 遺伝毒性アッセイで試験されている。相反する結果と試験の質の限界を考慮して、JECFA は、アスパルテームは遺伝毒性作用を示さないと結論づけた

 

アスパルテームの経口発がん性試験の結果、遺伝毒性の根拠の欠如、経口暴露ががんを誘発するというメカニズムに関する根拠の欠如に基づいて、JECFA は、動物におけるアスパルテーム暴露とがんの発現との関連を確立することは不可能であると結論づ
けた

 

JECFA は、アスパルテーム摂取とヒトにおけるがん、2型糖尿病(T2D)及びその他のがん以外の健康エンドポイントなどの特定の健康影響との関連を検討するために、無作為化比較試験(RCT)と疫学研究のデータを評価した。
JECFA は、アスパルテーム又は高強度甘味料(intense sweetener)としてアスパルテームを含む飲料を用いて実施されたいくつかのコホート研究において、肝細胞がん、乳がん、血液学的(非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)がんなどの一部のがんで統計的に有意な増加が報告されたことに留意した。

しかしながら、アスパルテームの摂取と特定のがんの種類との間の一貫した関連性は実証できなかった

aspartame_1.pdf (nihs.go.jp)

国立医薬品食品衛生研究所 (nihs.go.jp)

国際がん研究機関 - Wikipedia (IARC)

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議 - Wikipedia (JECFA)

 

【参考】

・許容一日摂取量(ADI:Acceptable Daily Intake)

許容一日摂取量(ADI)とは、ある物質について、人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量のことです。

通常、1日当たり体重1kg当たりの物質量(mg/kg 体重/日)で表されます。ADIは、食品添加物や農薬等、食品の生産過程で意図的に使用されるものの安全性指標として用いられます。

食品安全情報 (mhlw.go.jp)

 

【参考】

遺伝毒性(Genotoxicity)とは、外来性の化学物質や物理化学的要因、もしくは内因性の生理的要因などによりDNAや染色体、あるいはそれらと関連するタンパク質が作用を受け、その結果、細胞のDNAや染色体の構造や量を変化させる性質(事象)をいう。

遺伝毒性概要 | 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部 (nihs.go.jp)

 

 

 

 


アスパルテームの発がん性評価は5段階中の上から3番目にあたる「グループ 2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある 」に分類されており、英語ではPossibly carcinogenic to humansと表現されているが、このpossiblyは確率がかなり低い場合に使われると資料の中で注意書きがあるため、日本語の表記だと語弊があるように思える。
「グループ 2B」というのは例として、コーヒー、漬物、ガソリンエンジン排気ガス、超低周波磁界、無線周波電磁界なども入っており、「グループ 2Bに分類されているから危険だ」というのであれば、これからは危険だからコーヒーも飲むな、スマホも使うな、外(特に道路)も歩くな、ということになる。

総務省|中国総合通信局|携帯電話の安全性に関するFAQ (soumu.go.jp)

aspartame_1.pdf (nihs.go.jp)

 

 

 

 

 

・追記

総務省のホームページに載っているリストにはグループ2Bにコーヒーが含まれているが、確認してみたら1991年にコーヒーはグループ2Bに分類されたが、1996年にグループ3に分類し直して更新されている。

国際がん研究機関(IARC)によるコーヒー、マテ茶及び非常に熱い飲料の発がん性分類評価について:農林水産省 (maff.go.jp)

 

 

そもそもこのIARCというWHOの外部機関が発表している発がん性リスク評価には疑問があり、以前、ロイターでも加工肉がプルトニウムと同じグループ1に分類されたことに対して「科学者ではない人たちは困惑している」という記事を掲載していたことがあった。

「ヒトに対し発がん性リスクが『恐らくない』のはわずかに1つ、ストレッチ性のヨガパンツや歯ブラシの毛に使われているナイロンの成分だけだった」

とも書かれているが、この機関は大抵のものにはヒトに対して発がん性があるかもしれないという評価をしているらしい。

 

【参考】2016年4月21日の記事

IARCの分類はほとんど理解されておらず、世の中の役にあまり立っていないと、米国立がん研究所にかつて在籍し、現在は国際疫学研究所で生物統計学のディレクターを務めるボブ・タローン氏は指摘。「科学の役にも、規制当局の役にも立たない。それに人々を混乱に陥れるだけだ」と語った。

米アルベルト・アインシュタイン医学校のがん疫学者ジェフリー・カバト氏はIARCを公に批判しており、同機関の分類は人々に「危害」を加えていると話す。

「皆が知りたいのは、健康に明らかな影響を及ぼすであろう身の回りの化学物質は何か、ということだ。現実的ではない状況下で影響があるかもしれないというような机上の空論ではない」と同氏は指摘する。

2015年に赤肉・加工肉の研究グループにオブザーバーとして招待された食物と動物の専門家は、ロイターの取材に匿名で応じ、科学的な証拠を審査する専門家パネルが、あたかも特定の結果を狙っているようだったと主張する。

例えば、加工肉を毎日50グラム食べると、結腸がんを発達させるリスクが18%増えるとIARCは指摘。前述のオブザーバーはロイターの取材に対し、これらのデータが「一晩でどこからともなくやってきた」ように見えると話した。

IARCによる発がん物質としての加工肉の評価に異議を唱えることはなかったが、WHO本部はその背景を数々のツイートで説明した。「加工肉の健康リスクは、たばこやアスベストとのそれとは大いに異なっている」とWHOは強調。「肉は多くの必要不可欠な栄養を含んでおり、適度に消費される限り、健康的な食生活を送れる」と述べた。

 

 

また、JEFCAは

 

「アスパルテームが摂取後に有害影響を及ぼすという説得力のある(convincing)根拠は、動物実験データからもヒトのデータからも得られなかったと結論づけた」

「JECFA は、アスパルテームは遺伝毒性作用を示さないと結論づけた」

「遺伝毒性の根拠の欠如、経口暴露ががんを誘発するというメカニズムに関する根拠の欠如に基づいて、JECFA は、動物におけるアスパルテーム暴露とがんの発現との関連を確立することは不可能であると結論づけた」

「アスパルテームの摂取と特定のがんの種類との間の一貫した関連性は実証できなかった」

 

としてながらもIARCは「グループ 2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある 」に分類しており、どういう理由でその分類にしたのかが不明。

アスパルテームもコーヒーと同じように、以前はグループ2Bだったが、改めて評価し直した結果、グループ3に分類することにしたといったことを後になってから発表するのかもしれない。

 

【参考】2017年6月20日の記事

世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は15日、最新調査の結果、コーヒーの発がん性を示す決定的な証拠はないことが明らかになったと発表した。

IARCはこれまで、クロロホルムや鉛と同様、コーヒーを「ヒトに対する発がん性が疑われる」とされる「グループ2B」に分類していた。

 

 

 

・追記

アスパルテームの危険性は発がん性ではなく、フェニルケトン尿症の方なのだろう。

 

【参考】
フェニルケトン尿症という病気の方は、アスパルテームの摂取を制限する必要があります。フェニルケトン尿症は、アスパルテームに含まれているフェニルアラニンを分解できません。フェニルアラニンの摂取を続けると体内に蓄積し、知的障害を引き起こす恐れがありますので摂取は控えてください。

 

【参考】
1. 「フェニルケトン尿症」とはどのような病気ですか
食品の蛋白質に含まれている必須アミノ酸のフェニルアラニンをチロシンという別のアミノ酸に変える 酵素 の働きが生まれつき弱く、身体にフェニルアラニンが蓄積しチロシンが少なくなる比較的希な生まれつきの病気です。フェニルアラニンが蓄積すると精神発達に障害をきたし、チロシンが少なくなると色素が作れなくなり髪の毛や皮膚の色は薄くなります。また希に酵素の働きを助ける補酵素の欠乏でも同様のことが起こりますが、この場合はさらに神経の働きを伝える物質も少なくなるためより重い精神発達の障害が早期から出現します。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
この病気の発生頻度は約8万人出生で1人とされていますので、全国で500人程度と思われます。また補酵素の欠乏症は約170万人出生で1人とされていますので、全国で50人程度と思われます。

 

フェニルケトン尿症(指定難病240) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)