東洋経済ではしきりに「日経平均株価が将来5万円台になっても驚かない」とか「日経平均株価に強気になってよいこれだけの理由」などといったタイトルの記事を載せているが、その根拠は名目GDPが拡大し続けるからだというものだった。(実質GDPも拡大している)

 

 

 

 

 

確かに、日本の名目GDPは拡大し続けているが、日経平均株価は1990年から2012年まで下がり続け、2013年の日銀による量的・質的金融緩和政策により上昇が始まっている。

つまり、名目GDPと株価には直接的な相関関係はないように思え、中央銀行が大胆な金融政策に踏み切ったことが最も大きく影響しているように見える。

(2009年にGDPが縮小したのは円高が原因) 平成21年度 年次経済財政報告 (cao.go.jp)

大雑把に見ると、日経平均株価は名目GDPと相関関係があるのではなく、GDPデフレーターとある程度の相関関係があるように見えるが、これについては東洋経済の記事でも触れられている。

「GDPデフレーターがプラスの状態は企業収益の拡大をもたらし、株価上昇に貢献する」

しかし、

「企業収益の通信簿である株価と名目GDPには長期的な連動性が確認できる」

とも書かれてあり、これに関しては実際とは違うような気がする。

 

 

日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

 

 

日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

 

 

日経平均株価

https://jp.investing.com/indices/japan-ni225-chart

 

 

日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

 

 

【参考】

GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2つがあるという点にご注意いただきたい。名目GDPとは、GDPをその時の市場価格で評価したものである。単純にパンの価格などをすべて合計したものと思えばよいだろう。物価の変動を反映した数値はこの名目GDPが該当する。

一方、実質GDPとは名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものである。一つの簡単な事例として、パン屋の売り上げを考えてみよう。1年目に1個200円のパンを1万個販売したとする。この場合1年目の売り上げは200万円となる。そして2年目にはパンの価格が上昇し、1個220円で販売したとしよう。お店の人気もでてきたことから、値上げしたにもかかわらず売れ行きもよく、1年間で1万2,000個販売できたとする。この場合、2年目の売上は264万円となる。

前述したパン屋の売上を例にGDPについて考えてみよう。1年目を基準にすると、1年目の名目GDP、実質GDPはいずれも200万円で変わらない。しかしながら2年目においては、名目GDPは264万円の評価となるが、実質GDPは物価変動分を取り除いて計算するため、200円×1万2,000個=240万円となる (200円は、物価上昇分の20円を除いた額)。このようにして名目GDPと実質GDPは計算される。

それではこの2つのGDPについて詳しく見ていこう。名目GDPは物価変動の影響を受けることから、物価変動の影響を取り除いた状況を確認したい場合には実質GDPを用いることになる。例えば、経済成長率を見たい時には、消費がどのぐらい増えているのかなどを確認することになるため、実質GDPで評価することになる。つまり、名目は金額ベースでの評価、実質は数量ベースによる評価となる。パン屋の事例でわかるように、売り上げた数量が増えれば実質GDPも増加することになる

経済が実際にどのくらい成長したかが判断するために、名目GDPを実質GDPに評価しなおす「GDPデフレーター」と呼ばれる指標がある。数式で表すと「名目GDP÷実質GDP=GDPデフレーター」となる。

例えば、上記のパン屋の事例でいえば、名目GDPは264万円であり、実質GDPは240万円であった。ここからGDPデフレーターは「264万円÷240万円=1.1」と計算できる。これは物価上昇もしくは物価下落がどの程度発生したかを示している。このGDPデフレーターが1以上となっていれば、基準年と比べて物価が上昇 (インフレ) していることを示す。一方、1未満となっていれば、物価が下落 (デフレ) していることを意味する。

 

 

 

長引く雇用の不安定化、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産、エネルギー価格や食料価格などの高騰を受けたインフレ、などで個人消費はパッとしない状況が続いている。

それでもGDPが拡大しているのは、エネルギーや食料といった生活に必要なものを削ることは難しく、高いながらも渋々購入せざるを得ないからなのだろう。

実質GDPの方も拡大しているのだから、売れた数量も増えていることにはなるが、それが本当に好景気であることを示しているのかというと疑問があり、マクロの経済指標だけでは分からない面もあるはず。

また、円安傾向が続いてきたこともGDPにプラスに影響している。

(一部の業種や公務員などは景気がいいようだが、多くの国民は取り残されているのだろう)

 

・消費者態度指数

結果の要点(令和5年8月) (cao.go.jp)

 

【参考】

消費者態度指数とは、今後半年間における消費者の景気の動きに対する意識を示す指標です。 内閣府が今後半年間の「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」について消費動向調査を実施し発表され、指数が50以上なら良好と判断されます。

消費者態度指数 | auカブコム証券 | ネット証券 (株・信用取引・FX・投資信託・NISA・先物オプション) (kabu.com)

 

 

・消費活動指数

消費活動指数 (boj.or.jp)

 

【参考】

消費活動指数は、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の動向を把握するために日銀により開発された指数で、2016年5月から公表が開始された(初回公表は3月分)。
総務省が公表する家計調査と異なり、サンプルの偏りや月々のブレが大きくなるとの指摘がある需要側の統計情報を使用せず、GDP確報値にも使用される供給側の統計情報などをもとに算出される。このため精度が高く、公表時期も月次、四半期と速報性があるため、消費の実勢把握に適した指数となっている。
消費活動指数は、算出の際にインバウンド(訪日外国人)消費を含めた「名目消費活動指数」、「実質消費活動指数」とインバウンド消費を除外した「名目消費活動指数(旅行収支調整済み)」、「実質消費活動指数(旅行収支調整済み)」の4指数に、短期間で大きく変動する個人の嗜好などに対応した「実質消費活動指数+(プラス)」を加えた合計5つの指数で構成される。

消費活動指数|証券用語解説集|野村證券 (nomura.co.jp)

 

 

 

日本は1985年のプラザ合意以降、長期にわたる円高になり、国内景気が低迷していたが、2013年の日銀による大規模な金融緩和政策によって円高から脱し、最近ではインフレ率も2%台で推移している。

今の状況を見ると、今後も日銀が金融緩和政策をこれまでと同様に続けていくようには思えず、どこかで出口戦略ということになるのだろう。

 

【参考】

1985年9月22日、過度なドル高の是正のために米国の呼びかけで、米国ニューヨークのプラザホテルに先進国5カ国(日・米・英・独・仏=G5)の大蔵大臣(米国は財務長官)と中央銀行総裁が集まり、会議が開催された。
この会議でドル高是正に向けたG5各国の協調行動への合意、いわゆる「プラザ合意」が発表された。具体的な内容として「基軸通貨であるドルに対して、参加各国の通貨を一律10~12%幅で切り上げ、そのための方法として参加各国は外国為替市場で協調介入をおこなう」というものであった。プラザ合意の狙いは、ドル安によって米国の輸出競争力を高め、貿易赤字を減らすことにあった。
一方、日本ではドル高の修正により急速に円高が進行し、輸出が減少したため、国内景気は低迷することとなった。1987年2月に開催されたG7(G5+加、伊)は、過度なドル安の進行を防止するべく、パリでルーブル合意を成立させた。ルーブル合意以降、為替相場は総じて安定することとなったものの、円高不況に対する懸念から、日本銀行は低金利政策を継続し、そして企業が円高メリットを享受し始めたこともあり、国内景気は回復に転じた。しかしその後、低金利局面と金融機関による過度の貸出が過剰流動性を招き、不動産・株式などの資産価格が高騰し、いわゆるバブル景気が起こることとなった。

プラザ合意|証券用語解説集|野村證券 (nomura.co.jp)

 

 

・ドル円

USD/JPY リアルタイムチャート - Investing.com

 

 

日本のインフレ率の推移 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

 

 

 

・おまけ

世界の経済成長率ランキング - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)