福島県は「平成の大改修」で、3年間で800億円かけて河川の工事をしたが、台風19号では、
死者38名、重傷者1名、軽傷者58名、全壊1470棟、半壊12311棟、床上浸水1022棟、床下浸水432棟、公共建物62棟、その他9665棟の被害を出している。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/395285.pdf
「3年間で800億円という事業費は、傍目には巨費に映るが、専門家の目にはまだまだ少ないという。」
「都内に地下トンネルを造ろうとしたら、数百㍍掘るのに数百億円かかります。それでも予算がつくのは費用対効果が高いと判断されているからです。一方、河川改修は地味で目立たないので費用対効果が見えにくく、従って予算もつきにくいのが実情です」
https://note.com/seikeitohoku/n/nce0be216846e
最近起きている集中豪雨による洪水被害はダムで防ぐことはできない。
集中豪雨が起きると大量の土砂がダムに流入するため、ダムに流入した水をそのまま流したとしても、ダムの水位は予想よりも上昇してしまう。
事前放流をしていてもすぐに満水になり、緊急放流をする場合がある。
「特例操作(とくれいそうさ)は、洪水調節を行うダムにおいて、想定された計画洪水量を超える洪水が発生し、このままではダム水位がサーチャージ水位(洪水時にダムが洪水調節をして貯留する際の最高水位)を越えると予想されるときに行われるダム操作である。「緊急放流」と報じられることもある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E4%BE%8B%E6%93%8D%E4%BD%9C
東京では徹底して川の工事をしていたから大規模な氾濫をしていない。
端的に言えば、沈んでは困るところでは川の工事をしているが、沈んでも構わないところではあまり対策をせずに放置している。
そして氾濫が起きると民主党政権時代にダムに反対していたからそうなったなどとでたらめを各方面で吹聴している。
むしろダムの運用の仕方が原因で大惨事になっているケースもある。
高い場所に大量の水を溜めておくこと自体危険なことだが、大雨の時に満水になったダムが河川の水位を考慮せずに緊急放流を行い、河川の増水とダムからの大量の放流が重なることによって河川の氾濫を拡大させることがこれまでいくつかあったようだ。(特に利水ダム)
そのため、国は2020年4月から利水ダムについても事前放流ガイドラインを策定した。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/pdf/jizenhouryu_guideline1.pdf
川の上流にダムがあっても大雨の時は川は増水する。川に雨水が直接流入する分もあるが、市街地の水路等から流入する分もある。
ダムに水が溜まることによって川の増水を防いでいる分もあるが、それでも大雨の時は必ず川は増水する。
結局、河川自体に問題があるのであればいくらダムを整備したところで洪水を防げるわけでもない。
また、西日本豪雨の時に、野呂川ダムでは規定に反して流入量を超える放流をした前例がある。集中豪雨の際に土砂が大量に堆積する問題も取り上げられている。他のダムでも緊急時に同様の操作をしていた可能性は十分考えられる。
「緊急放流の際、規定に反してゲート開度を一定としたのは、そうした状況下においてさらなる流入量の増加に対応するため、ダム水位を下げるという判断によるものであった。結果として下流の浸水域が拡大することとなったが、浸水した60.8ヘクタールのうち、緊急放流の影響で拡大したと考えられる範囲は0.47ヘクタールに留まり、大半は支流の中畑川の氾濫によるものと結論づけられた。」
「豪雨の影響で大量の土砂がダムに堆積し、ダム容量を圧迫。洪水調節機能の低下が認められたことから、台風など大雨が予想される際、あらかじめ水位を低下させておく措置が取られた」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E5%91%82%E5%B7%9D%E3%83%80%E3%83%A0
野村ダムと鹿野川ダムで流入量相当の緊急放流をしたことで急激な川の増水が起きたこともあった。この「流入量相当の緊急放流」というのがくせ者で、まだダムに余裕がある段階でそのまま流していたのか、それとも限界になった時にある程度水位を下げるために流したのかによって意味が変わる。後者であれば一時的にせよ流入量を超える大量放流をしていたことになる。その後、逆の操作をすることでトータルで「流入量相当の緊急放流」ということにできてしまう。流入量と放流量のデータを見ても、1時間刻みであるため、1時間以内にそのような操作をしようと思えばできてしまう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E6%9D%91%E3%83%80%E3%83%A0#%E8%AB%B8%E5%95%8F%E9%A1%8C
https://diamond.jp/articles/-/181534
台風19号の時も、福島県郡山市の洪水は単に川の合流地点だから氾濫しやすいのかと思っていたが、航空写真をよく見ると三春ダムがもし大量に緊急放流していたのであればその下流域で大惨事が起きることは明白。
阿武隈川のさらに上流には千五沢ダムがあり、このダムの緊急放流もあったのかどうかは不明だが、その下流域にある石川町は台風19号で甚大な被害を受けている。
被災した石川町の中心市街地を流れる北須川の上流には千五沢ダムがあり、千五沢ダムの緊急放流が原因の可能性はある。
そうでなければ逆流によるものかもしれないが、本流の阿武隈川からはかなり離れている。
「今回の台風では、水量が増した本流に支流が合流できず逆流する「バックウォーター現象」が発生したと言われており、阿武隈川などにつながる県管理河川も多く氾濫した。」
とのことだったが、本当にダムの運用の仕方に問題がなかったのか、検証した方がいい。
https://note.com/seikeitohoku/n/nce0be216846e
石川町の中心市街地を流れる北須川はそれほど大規模な氾濫をするような川には見えない。
ハザードマップを見ても危険な流域にはなっていない。
「台風19号で最も多くの死者が出ている福島では道路が冠水した。福島・石川町に実家がある女性は当時の惨状を知りSOSを番組に送った。SOSのメッセージには町が水に漬かる画像が添付されていた。現地に向かった取材班は自動車教習所へ取材を行った。押し寄せた水は約2mの高さまで達し、水に漬かった教習車は全て廃車になったという。教習所内のコースは半分以上が陥没しているが復旧のめどは立っていない。教習所を飲み込んだ濁流は近くを流れる北須川の氾濫が原因だという。台風19号が石川町を襲った日は午後4時~10時までの間に約100ミリの雨が降り続き、住宅街のほぼ全域が浸水地域となった。」
https://kakaku.com/tv/channel=8/programID=877/episodeID=1305780/
「2つの川は徐々に水位が上昇し、12日深夜に氾濫。特に北須川の勢いがすさまじく、今年、旧役場庁舎跡地(現まちなか駐車場)前に整備された歩行者専用の木橋・泉橋(通称牛乳橋)が落橋した。」
https://note.com/seikeitohoku/n/nce0be216846e
千五沢ダムは現在、灌漑専用ダムから多目的ダムへ変更するための改築工事中だが、利水を行いながら工事が進められているため、台風19号当時もダムに水が溜まった状態にはなっていた。
千五沢ダムは現時点では利水ダムなのだから、台風19号当時、事前放流によって水位を低下させておくという措置を取らず、満水になっていた可能性が高い。その場合、満水の状態で大量に水や土砂が流入していたことになる。台風19号による洪水時にはまだ利水ダムの事前放流についてのガイドラインはなかった。
この時に問題になるのは、流入した水をそのまま流していたのか、それともダムの水位を下げるために流入量を超える放流をしていたのかどうかという点。当時の北須川流域を襲った「すさまじい」濁流はどこから来たのかということになるが、上流には千五沢ダムがある。
構造上、このダムは人為的に操作して一気に大量放流することが可能だったように思える。
千五沢ダムのデータについては10月19日までは遡ることはできるが、肝心の10月12日前後のデータが公表されていない。
そして市のホームページには以下のように出ている。
「余水吐ゲート放流」は、ゲートが開いている状態で自然に流れ落ちる(越流する) 状態のことである。」
「千五沢ダムは、かんがい専用のダムであるため、洪水調整機能はありません。現在、 多目的ダムとして治水機能を付加するため、早期完成を目指し千五沢ダム再開発事業が 進められています。本事業により洪水吐きの改築が行われ、洪水調整機能を持ち合わせ た洪水吐きゲートの無いダムに生まれ変わります。」
http://www.town.ishikawa.fukushima.jp/info/upfolders/201911/20191107sengosawadam.pdf
しかし、実際には2019年2月の画像を見るとゲートが閉じていて、且つ工事中のように見えるが、2019年10月の画像を見るとゲートが開いているように見え、工事もしていないような状態になっている。(2月の画像は白いコンクリートの部分をつくっている工事をしているらしい。)
普段から開けっ放しになっておらず、人為的に操作して開閉していたようであるため、「自然に流れ落ちる状態」になっていたのかどうかという疑問がある。
最初にこれを見た時、工事が一部完了しているために設置してあるのかと思ったが、実際はこの赤いゲートの部分はもともとあったものらしい。
2008年11月の時点で既にある。wikipediaより。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E4%BA%94%E6%B2%A2%E3%83%80%E3%83%A0
この赤いゲートの部分は多目的ダムに設置されているクレストゲート(非常用洪水吐ゲート)とよく似ているが、実際そうらしい。そしてこれはラビリンス型の洪水吐が完成する頃には撤去されることになっている。
千五沢ダムは灌漑専用のアースダムであるにもかかわらず、なぜか多目的ダムのようにクレストゲートがもともと設置されており、非常に珍しい不自然なダムであることが分かる。
http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=3284
2019年2月
2019年10月
左の画像のように、ゲートが開いていて、自然に流れ落ちる(越流する) 状態になっていたのであれば問題ないが、台風19号当時、満水状態でゲートが閉まっていて、さらなる流入に対応するためにゲートの上部まで溜まった水を一気に流したのであれば自然に流れ落ちる状態とは言えず、一気に流入量を超える大量放流をしたことになる。元々開けっ放しの状態になっていたのかどうかが重要。
千五沢ダムは灌漑専用の利水ダムにしてはとても奇妙な構造になっているために利水ダムから多目的ダムへの改築工事などという通常は行われない工事をしているのだろう。
国土交通省のデータでは三春ダムは事前放流でダムの水位を低下させ、流入量の約95%をダム内に溜めておくことができたおかげで下流域のさらなる洪水を防いだようなことになっているが、実際には結果として最悪の大洪水がその下流域で起きているのだから本当なのかどうか疑問が残る。
https://togetter.com/li/1416437
三春ダムの2019年9月時点の目視での貯水量。データを見るとこれぐらいが7700x1000立方メートルぐらいの貯水量らしい。
設計洪水位 334m(限界ライン) この少し手前で緊急放流をしている。
「予想される最大の洪水(200年に一回程度)が発生した時の流量を設計洪水流量といい、そのときの貯水池の水位を設計洪水位といいます。この時、ゲートは全開されています。自然現象として予想される最高の水位と考えられます。」
とのことだが、実際には運用の仕方次第ですぐそのラインまで行ってしまうように見える。
「一般に、ダム水位がサーチャージ水位の70% - 80%に達し、流入量が放流量を上回りつづけている状態」になったら緊急放流の準備が始まる。
この、サーチャージ水位の70% - 80%というのは、サーチャージ水位が100%で、制限水位が0%という意味なのであれば、三春ダムの場合、329mで緊急放流の基準を満たすことになってしまう。(333-318=15、15x0.7=10.5、318+11=329)
https://www.ktr.mlit.go.jp/kinudamu/wording/01chisuichi/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E4%BE%8B%E6%93%8D%E4%BD%9C
国土交通省の水文水質データベースを確認すると、2019年10月13日午前3時からは三春ダムの貯水率は100%になっており、流入量は毎秒約550立方メートルになっているが、放流量は貯水率が100%になる前と同じ水準である毎秒約28立方メートルのままほぼ一定でずっと続いている。
そして貯水量は貯水率が100%のまま増え続けているため、この貯水率100%がどの水位であることを意味しているのかが分かりづらい。(この100%の意味は非洪水期の利水容量である19,800,000だった。 ※2で後述。)
10月10日24時までは貯水量7481x1000立方メートルだが、10月11日午前1時には同じ貯水量なのに貯水率が93.4%から37.8%に急減している。
(この37.8%というのは7481x1000を19800x1000で割った数字。 ※2で後述。)
このようなデータの出し方ではこちらとしては貯水率が何を意味しているのかやはり分かりづらい。
普段は利水容量の貯水率として90%台の数字が出ていて、洪水警報発令のような状況になった時に有効貯水容量に切り替えているのだろうと思ったが、実際には有効貯水容量ではなく、非洪水期の利水容量に切り替えていた。 ※2で後述。 元々の容量から別の容量に切り替えたのであれば、それを説明するべきだが、同じ表の中で別の容量の貯水率が混在しているらしい。(このようなデータの出し方は他のダムでも同じようなことをやっている。)
このダムは、洪水期と非洪水期で利水容量に大きい違いがあり、洪水期は8,000,000立方メートルまで、非洪水期は19,800,000立方メートルまで溜められるようになっている。10月10日までは前者の方になっていた。
10月10日24時だけがなぜか流入量が毎秒0.73立方メートルになっており、その時間だけ約2立方メートル少なくなっている。どうにかしてダムに流入する量を抑える操作等をしたのか、それともその時間だけ雨が止んだのか、ということになるのだろうが、そうだとしてもやはり不自然だろう。
三春ダムのスペックは、総貯水容量42,800,000=洪水期の利水容量8,000,000+洪水調節のための容量28,000,000+堆砂容量6,800,000
(堆砂容量は、現在、ダムに堆積している土砂の量ではなく、100年程度、ダム貯水池に堆積すると予想される流入土砂を貯めることができる容量)
https://www.ktr.mlit.go.jp/kinudamu/wording/01chisuichi/
設計洪水位334m、サーチャージ水位333m、常時満水位326m、制限水位318m、最低水位308.8m
http://www.thr.mlit.go.jp/miharu/introduction/outline/construction.html
10月13日の午前3時の20,759,000立方メートルから貯水率が100%になっている。
さらにデータを見る限りでは26,000,000立方メートルを限界にして調節しているようだが、有効貯水容量は36,000,000立方メートルなのだから、この容量よりも約10,000,000立方メートル程度少ないため、データ上は余裕を持たせて運用していたかのように見える。
データ上は約8,000,000立方メートル溜まった状態の下の画像※1(2019年9月)では水位が約318mあるが、実際には堆砂が溜まっていても溜まっていなくても318mまで水が溜まった状態が洪水期制限水位であるはず。竣工直後の時点では8,000,000まで水が溜まった時に水位が318mになるようにできていたのかもしれないが、その後、堆砂が溜まっていくことで8,000,000まで水が入っていなくても318mに達してしまうことになる。その場合、その都度、制限水位を変更しているはずはない。つまり、318mになれば制限水位であることに変わりはなく、必ず水が8,000,000立方メートルまで溜まった時に水位が318mになるということではない。
しかし、この画像を撮影した2019年9月はデータを見ると1か月間、約7,700,000立方メートル溜まっていることになっている。
これは、下の画像※1に出ている容量が本当に7,700,000立方メートルなのであれば、台風19号の時に大量に土砂が流入する前の時点ではこのダムにはほとんど土砂が溜まっていなかったことを意味している。なぜかというと、7,700,000立方メートルというのは洪水期の利水容量である8,000,000立方メートルとほぼ同じ容量であるため、本当にデータが正しいのであれば水位が318mに達した時に容量が8,000,000立方メートルということになる。しかし、実際には堆砂も大なり小なり入っているのだから、プールのようにきっちり8,000,000立方メートル入った時に318mになるのは不自然なことになる。このダムは堆砂があってもなくても318mで制限水位ということになっているだけのはず。洪水期の利水容量と制限水位は堆砂があれば一致しない。このデータは、あたかも水位を見てから容量を出しているかのように見える。
このダムは竣工が1998年であるため、21年間は土砂が流入するような洪水は全く起きていなかったことになってしまう。現実的には21年間もの間、全く堆砂がない状態を維持してきたとは考えにくい。設計上も6,800,000立方メートル分は堆砂として総貯水容量に入れてあるのだから、三春ダムは土砂が流入しないダムですということはないはず。
このダムは土砂が溜まっていない状態で333m(あるいは334m)まで水位が上昇した時が総貯水容量42,800,000立方メートルということになり、これは全く堆砂がない状態であれば、洪水期利水容量8,000,000+洪水調節容量28,000,000+堆砂容量6,800,000=42,800,000までダムに溜め込むことが可能だったことになる。
しかし、2019年10月に台風19号による洪水で大量の土砂が流入し、42,800,000立方メートルの容量はなくなっていた。(現実的にはそれ以前から42,800,000立方メートルの容量はなかったはず。)
設計上は6,800,000立方メートルまで土砂が流入しても問題ないようにできているが、実際にいくら流入したのかは分からない。
恐らく相当大量の土砂が流入してしまったことで想定外の事態になり、異常な水位上昇があったために現場が混乱したのだと思われる。
※1
※2
7481x1000で93.4%になっているのは、分母が洪水期の利水容量8000x1000であるため。
18914x1000で95.5%になっているのは、分母が非洪水期の利水容量19800x1000であるため。
ゆえに、20759x1000立方メートルで貯水率が100%というのは、非洪水期の利水容量を基準に出している。
このダムは洪水期の利水容量が8,000,000立方メートルであり、10月10日の24時までは洪水期の利水容量で貯水率を表示していた。そして、10月11日の午前1時からなぜか非洪水期の利水容量の貯水率に切り替えて表示している。
本来なら洪水期の利水容量+洪水調節容量=有効貯水容量が洪水警報発令時の貯水率の分母でなければおかしいように思える。非洪水期の利水容量である19,800,000立方メートルを洪水時に貯水率100%としていいとは思えない。
(実際には堆砂容量6,800,000立方メートルの余裕を見込んでいるが、台風19号の直前にいくらそれが溜まっていたのか、また、台風19号の直後にいくら流入したのかは分からない。)
上の画像※1はデータによれば約7,700,000立方メートルの貯水量で水位が318m(制限水位=洪水期の水位)を少し下回る状態になっているのだから、19,800,000立方メートルまで溜まっていれば326m(常時満水位=非洪水期の水位)まで到達していたことになる。
326mという水位(常時満水位)は上の画像※1を見る限りではクレストゲートにギリギリ掛かるかどうかぐらいの水位になるようだが、非洪水期であれば洪水が起きない可能性が高いという前提があり、その高さまで水が溜まっていても通常は問題なく、その上である程度の余裕も持たせているということらしい。
しかし、たった19,800,000立方メートルの容量で326mまで到達してしまうなら、貯水量が26,000,000立方メートルまで増えた時点でダムの水位がいくらだったのかということになる。そして土砂が大量に流入しているのであれば実際には326mよりもずっと水位は高かったはず。
つまり、データにある26021x1000という数字が本当の数字だという前提で見ても、
19,800,000立方メートル分の水位(326m) + 200,000立方メートル分の水位上昇 + 6,021,000立方メートル分の水位上昇 + 大量に流入した土砂による水位上昇が実際の水位だった。
そもそも、2019年9月の時点で8,000,000立方メートルの貯水量で水位が318mというのが不自然なことであり、実際は堆砂によりその貯水量より少ない量で318mに達していたはず。だから水位だけを見ていると実際の容量が分からなくなる。これはすなわち、データ上の容量だけを見ていると実際の水位が分からなくなるとも言える。
もしデータ上の容量が誤りで、実際の水位を過小評価していた場合、「既にサーチャージ水位に達しています」だとか、「既に越水しちゃってます」といった事態に陥り、3時間前に通知するというルールを守れず、慌てて緊急放流してしまうということもあり得る。
26,000,000÷42,800,000=61%であり、26,000,000÷36,000,000=72%なのだから、設計時に見込まれていた堆砂込みで考えても26,000,000という容量はまだ28%程度余裕を持たせている容量ということになるのだが、実際には6,800,000よりもずっと多く堆砂が入っていた可能性はある。
(洪水期の利水容量8,000,000+洪水調節のための容量28,000,000=有効貯水容量36,000,000)
洪水期の利水容量8,000,000+洪水調節のための容量28,000,000+堆砂容量6,800,000=総貯水容量42,800,000まで溜まった時にサーチャージ水位である333m(あるいは設計洪水位である334m)になるはずだが、堆砂なしで19,800,000立方メートル溜まった時に326mまで到達してしまうなら、堆砂ありであれば当然326mよりはずっと水位は高い。
(ちなみに、この毎秒の流入量を平均として捉えた場合で計算してみるとデータに出ている貯水量と一致しなかった。流入量と放流量が平均としての数字なのかどうか不明だが、瞬間の量として出している数字とは考えにくい。1時間の中でのどの量なのかということになるし、最大と最小の差がそれなりにあるはずなのだから、適当な場面での瞬間で出していい数字とは思えない。
605.9x60=36,354 36,354x60=2,181,240(2181.24x1000) 27.93x60=1675.8 1675.8x60=100548
2181240-100548=2080692 18914000+2080692=20,994,692となり、1時間後の貯水量20759x1000にはならない。
これはどの時間で計算しても一致することはなく、他のダムで同様の計算をしても一致しなかった。貯水量が少しは増えていなければおかしい状況でも全く増えていないこともあった。)
その後、三春ダムは10月18日午前2時までずっと貯水率が100%の状態が続いたが、10月13日22時以降は大した量ではないが、ずっと流入量を超える放流がされていることも確認できる。
検証してみると、多目的ダムである三春ダムの方はデータに不自然な点があり、水門町古川のポンプ場が自然な洪水としては不可解な水没の仕方をしているため、国土交通省は説明するべきだろう。
雨がやんでから約4時間の時点で下流域で甚大な洪水被害が起きていることを考えると、実際にはサーチャージ水位付近まで水位が上昇し(あるいはそれを超えてしまっていたかもしれない)、水位を下げる目的で急いで緊急放流をしていたとしても不思議ではない。全国的に、洪水時にダムを満水近くまで溜めて「治水に役立った」とアピールしているケースが実際多いが、そのような運用の仕方は非常に危険であるはず。
データ上は一気に大量放流をしたことにはなっていないが、信用できるデータとは言えない。(2019年9月の水位が分かる画像とデータ上の数字を考えると、不自然。)
(現政権は森友学園を巡る公文書改ざん問題もあるため、不信感を抱かれても仕方ないはず)
灌漑専用ダムである千五沢ダムの方は肝心な部分のデータが抜けていること、本流の阿武隈川からの距離がかなり離れていること、台風19号当時、まだ利水ダムの事前放流に関するガイドラインがなかったことから満水になっていた可能性が高いこと、人為的な操作によってゲートの開閉をしているような画像があることから、今出川と北須川の合流地点が特に氾濫していることを考慮しても、運用上問題があった可能性は十分考えられる。
2020年4月からは利水ダムについての国のガイドラインがあるが、それ以前は現場の判断で誤った操作をしていたこともあったのだろう。(多目的ダムについては2019年6月からは事前放流をしておくルールと緊急放流を行う際には3時間前までに通知するルールがある)
ダムを正常に機能させるにはマニュアルが必要だが、それが統一されておらず、丁寧に状況に応じたゲートの開閉がされていなかったのだと思われる。
「利水ダムは、水力発電や農業用水確保などを目的とする。治水機能を持つ多目的ダム(570基)の約1・6倍の900基が全国に設置されているが、事前放流で水位を下げ、雨水などをためる洪水対策には、ほぼ使われていなかった。」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200622-OYT1T50152/
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20191018-00147073/
ポンプ場というのは、街の道路などに降った雨水を下水道で集め、その集めた水をポンプ場で汲み上げて川に流す施設のようだが、雨がやんでから4時間の時点で街の雨水の下水がポンプ場に一気に濁流のように押し寄せるというのは、やはり考えづらく、浸水エリアを確認しても、川の越水によって下水の水量が異常に増えたことでポンプ場が水没しているように思える。直接水をかぶった分も多少はあるかもしれない。
本来、バックウォーター現象というのは支流が主流に合流できずに逆流してしまうことをいうようだが、三春ダムによる大量の放流によって一時的に主流の阿武隈川が支流の大滝根川の濁流によって逆流、あるいは流れが滞るような状態になったことで阿武隈川の西側のエリアでも一部、越水し、その越水によってポンプ場が水没したのかもしれない。(水門町古川のポンプ場は水門町や工業団地のエリアではなく、その西側にあるため、水門町や工業団地等が水没したこととは無関係ではあるが、大滝根川、阿武隈川、谷田川の合流地点が特に酷く浸水している原因として、三春ダムの緊急放流による影響が十分考えられる。)
阿武隈川の東側が大惨事になっていて、西側でも一部越水があるということは、東側からの勢いが強かった可能性を示している。
https://www.city.koriyama.lg.jp/material/files/group/1/sinsui-191225.pdf
三春ダムの放流も、千五沢ダムの放流も、共に2019年10月に放流している画像があるが、これらは透明度の高い水ではなく泥水を放流しているのだから、どのタイミングで放流したのかということがある程度推測することができる。少なくとも土砂が流入したことは分かる。
三春ダムの方はジェットフローゲートからの放水であるため、台風通過後に撮影されたもの。選択取水によって水面の濁った水を流しているらしい。
千五沢ダムの方は空が晴れている状態であるためこれも台風通過後に撮影されたものらしい。
つまり、大雨によって大量に土砂がダムに流れ込んでいる状況で放流したのは間違いない。
また、千五沢ダムは現時点ではまだ灌漑専用ダムなのだから、もし人為的にゲートを開けて放流したのであれば誰の承認を得たのか、事前に関係機関や住民に適切に通知していたのかどうかという疑問もある。
ダムの放流はタイミングと量が特に重要なのだから、事前に通知せずに河川が増水している時に大量放流してしまったら、ダムの放流が原因で流域の氾濫が拡大することになってしまう。
三春ダムにはクレストゲート(非常用洪水吐ゲート)が4つ設置されているが、台風19号当時、満水になったことでここから緊急放流をしていたのかもしれない。データ上はそのようになっていないが、下流域で起きたことやデータの不自然な点を考えるとどうしても疑わしいということになってしまう。
事前に通知せずに緊急放流をしてしまったこと、そしてその影響で水門町古川ポンプ場が水没したことで事実を隠しているように思える。
大雨が降り続ける中、12日15時から13日午前3時までの12時間をかけて一度ピークの3mになっているのに、その後、0.7mからたった3時間で5mに水位が上昇したということは、相当異常な濁流が流れ込んだことを意味する。それはダムの緊急放流でもなければ考えられない。しかもそれは雨がやんでから4時間の時点だった。
ルール上やってはいけないことになっているだとかダムというのはこのように運用されていますといった教科書に載っているような話だけでは実際に起きた過去の事例まではカバーできないのだし、大抵のダムは、やろうと思えばやれる構造にはなっている。
ダムの水位をコントロールする操作が難しいのは誰もが認めていることでもある。
※参考 教科書通りの説明
http://dam-net.jp/backnumber/012/contents/onepoint.html
現実は洪水時にサーチャージ水位近くまで溜め込むことによって一気に緊急放流をし、自然ではあり得ない凄まじい濁流を発生させ、家屋等が壊滅的な被害を被ることがある。クレストゲート(非常用洪水吐ゲート)は一部のゲートを開けることもできるし、全開にすることもできるのだから、「緊急放流時はそのまま流しているだけです」とは言えない。恐らく全開にする時は大量の流入がある状況でダムの水位を下げる場合にやっている。それをやると、一時的にせよ、流入量を大幅に超える放流をしていることになる。そして、この直後に逆の操作をすることで流入量相当の放流をしたと言うこともできてしまう。
http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0207
ダム一気に放水、朝5時の避難指示 愛媛・5人死亡の町
「津波が襲ってくるようだった」
今回の対応について、整備局河川管理課は「河川法に定められた操作規則に基づいて対応した」と説明する。国交省によると、豪雨に備えて3日前の4日からダムの水位を下げ、雨水を貯留できる量を350万立方メートルから600万立方メートルまで増やした。豪雨が降り始めた後は満水近くになるまで放流量を抑えたという。担当者は「雨が強まってからも河川の水位を上げないことで、住民が避難する時間を稼げた」と説明する。