2025年10月のテーマ

「クリスティー関連本」

 

第二回は、

「イギリスのお菓子と本と旅 アガサ・クリスティーの食卓」

北野佐久子 作、

二見書房、 2024年発行

 

 

です。

 

作者の北野佐久子さんは、児童文学、ハーブ、お菓子を中心にイギリス文化について発信している方で、以前イギリスに"ハーブ留学(自称)"されていたそうです。

実際にイギリスで暮らし、結婚後も四年間ウィンブルドンに住んでいらっしゃったとのことで、この本には作者自身がイギリス生活中に撮影した写真がたくさん使われています。

 

内容としては、クリスティー作品に登場する食べ物(主にお菓子)とその作品について、筆者が体験した現代のイギリス文化とも照らし合わせて章ごとに綴ってあります。

例えば、

 

・真夜中のココア『スタイルズ荘の殺人』

・英国のビールはぬるい『五匹の子豚』

 

みたいな感じです。

 

・英国のビールはぬるい『五匹の子豚』

を例にとると、ポアロの長編作品『五匹の子豚』ではビールが一つの注目ポイントなんですが、英国のパブで提供されるビールはその場でグラスに注いで出されるのが基本だが冷えていなくてぬるいのが普通だとか、作中に出てくる薬草にからめてハーブ専門家目線でのお話なども書いてあります。

さらには物語の舞台となった場所についても…トリビアが満載です。

 

他の章に関しても、ハーブの専門家らしく、作中に登場する植物から抽出された毒の話や、イギリスで料理の付け合わせによく使われるハーブのお話がたくさん書いてあるのはもちろんのこと、伝統的なお菓子やお祝い事の時に出される食べ物のお話、さらにはレシピが載っているものもあって、お菓子好きの方にも楽しめるのではないかと思います。

私はお菓子作りはあまりしないので、載っているレシピを活用することはできませんでしたが、日本にはないいろんな種類のお菓子の解説が面白かったです。

 

例えば、"ロックケーキ"、"コーヒーケーキ"、"プラムケーキ"…ケーキとついていれば焼き菓子なんだろうなーと想像しますが、焼き菓子といっても日本人が想像する"ケーキ"とは全然違うクッキー?でっかいスコーン?みたいなものもあったりしますし、想像だけではわからないビジュアルを写真で補ってくれてたりなんかもして、目に楽しいです。お店で売っているものや知り合いの方がホームパーティでだしてくれたもの、有名店で食べたものなど、写真も宣伝用のスチール写真ではなく作者が実際に触れたものなので、余計に臨場感があるというか。

 

また、お菓子をはじめとする食べ物に関する章だけではなくて、

 

・ハーブとしてのすみれ「鉄壁のアリバイ」(←短編)

・ふさわしい服装『書斎の死体』

 

みたいな、イギリス文化について紹介されているものもあります。

 

ちなみに、各章の下スペースに、対象のクリスティー作品からの抜粋が載せてありまして、先月の閑話休題で書いた、タペンスが牧師の娘だと明言しているのを見つけたのはこの本です…。だからどうだというわけではないですが…。

 

 

 

 

この作品は、クリスティー作品の中に登場するイギリスの生活の描写をより色鮮やかに感じさせてくれる本だと思います。

同じ作者で、"アガサ・クリスティーの食卓"シリーズの本がほかにも出ているようなので、見つけたら読んでみたいと思っています。おすすめいたします。(*^▽^*)