五月の閑話休題です。
2025年5月のテーマ
「私のあこがれの女性」
でおすすめしてまいりました。
二冊がクリスティー作品、もう二冊がローラ・チャイルズさんの作品になってしまったのは、私が何度も読み返している作品だからというのが大きいと思います。
小説の登場人物にあこがれたとしても、その作品自体を読んだのが一度きりなら記憶に残る部分も少ないですし、やがて自分の中でぼんやりとした印象として存在することになるでしょう。
作品自体が好きで、何度も読んで解像度が上がっているからこそ、この人物のこんなところを自分にも取り入れたい、少しでも近づきたいと思えるのです。
いま、さらっと書いちゃいましたが、今月のテーマで書いた"私のあこがれ"の定義は"自分もこうなりたい"、"私にとっての理想の女性が持つ資質を持っている"ということでした。
"あこがれ"っていうと、「手に届かないけれど手に入れたいもの」の他に、「手に入る入らないなんて考えたこともなくただ好き(または理想)でみているだけでテンションが上がる(もしくは心地よい)」というのもあると思います。
今月のテーマ的には、どちらかというと前者でしたので、メンタルだったり、家事能力だったり、生活をハッピーに前向きに生きようとする姿勢だったりが大事なポイントで、選択肢としては必然的に自分が生きている世界に近い近現代のお話になりました。ファンタジー小説の人間的にも素敵で容姿も美しい姫君なんかが対象に入らなかったのはそのためです。(私の年齢的な問題もなくはないかもですが…。)
さて、それではタイトルの話題へとまいりましょう。
先月の閑話休題で教皇選挙にまつわる映画の話を書きましたが、アップした後に、「もういっちょ、コンクラーベがモチーフの映画」を観てまたカラーが違う面白さがあったのでぜひ書きたいと思い、現実のコンクラーベは終了しましたが書いちゃいます。
その作品とは、
・「ローマ法王の休日」(邦題)
2011年 イタリア・フランス映画(ウィキペディアより)
です。
イタリアを代表する映画監督の、ナンニ・モレッティ監督作品で、主演はフランスの名優ミシェル・ピコリさんだそうです。
お恥ずかしながら私はこのお二方とも知りませんでした。映画わりとよく観るんですけど、我ながら作品の偏りがすごいんだと思います。
※以下、映画の邦題が「ローマ法王の休日」なので、教皇のことを"法王"と記述いたします。
あらすじは、法王逝去に伴って始まった法王選挙(コンクラーベ)で、誰もが予想しなかった無名の枢機卿・メルヴィルが新法王に選出されます。しかしメルヴィルは就任演説の直前にその重圧に耐えられず、その場から逃げ出してしまいます。
就任演説が終わるまで、誰が新法王になったのかは極秘のまま。新法王発表までは、枢機卿たちもコンクラーベ同様に外部との接触は一切禁止です。何とか新法王の心を落ち着かせようと周囲は奔走。当のメルヴィルは自分は法王になれるような人間ではないと思い悩みます。
この映画は、配信サービスのU-NEXTで観たんですが、観終わった後に検索して調べてみるとコメディドラマ映画って出てきたんですよ。
冷静に考えると、確かにコメディなんですけど、笑いをとろうと茶化したり、漫才なんかでよくある、あまりにも荒唐無稽なシュチュエーションだとか登場人物の会話がかみ合わないとか…例えば、聖職者らしくない下品なしゃべり方や振る舞いをするとか…そういうあからさまな笑いをとるコメディではなかったので、観ている間私はコメディだと思っていませんでした。でも、笑いながら観てました。言われてみればそうね、コメディねって後から気づいたのです。
ではどんな風なのかというと、一般人ならこういうこともあるかもだけど、高位の聖職者の方々がちょっと一般的すぎんかね?と思う作りになっているのがコメディかな…と。
神秘のベールに包まれたコンクラーベの内側が、とっても普通な感じなのが面白いと言いますか。
新法王が重圧に押しつぶされて就任演説から逃げちゃうってのも、まずありえない話です。
ですが、この映画では、そもそも、選挙の最中に枢機卿たちみんなが、「選ばれませんように」って祈ってるんです。
法王の地位がものすごく重い責務だと、自分には務まりそうにないとみんなが思っている。
そして決まったメルヴィルは、まさしくダークホースで、自分も含めて誰もが思いもよらなかった選出でした。
呆然としているままに誓いの言葉を口にしてしまってから、我に返って「無理無理無理無理無理…」とパニックに。
人として、気持ちはわかる。
だけど、枢機卿というカトリックにおいて高位の聖職者の方々は一般人のように取り乱したりしないという先入観があって、そこのギャップの部分がコメディに感じられるのかなと思います。
コンクラーベがモチーフにはなっていますが、このお話はコンクラーベ後のお話であり、現実にはありえないお話です。
登場人物たちは真剣に悩み、困り、何とか対処しようとあがいています。
そこがちょっとハートフルと思うのは私だけでしょうか。
また、先月の閑話休題で書いた二作品と真逆だと思うのが、この映画ではみんな"法王になりたくない"んです。
このことが、「法王の重責は並大抵ではない」ということをより強く押し出していますし、候補者である枢機卿たちが法王の役割というものを真剣に考えていて、決して軽く扱っていいものではないと理解しているとも受け取れます。自分には務まらないと考えるのも謙虚で、聖職者の美点とも言えます。(めんどくさい役職はごめんだと考えているなら話は別ですが…。)
そういったこともまた、この映画のストーリーとは別のところで、コンクラーベの側面の一つとして感じられるんじゃないかと思います。
前回の二作品とは全然カラーが違いますが、私的にはこちらもおすすめです。
それでは、来月のテーマとまいりましょう。
2025年6月のテーマ
「かっこいいヒロインが登場する本」
でまいりたいと思います。
"あこがれ"について、上であれこれ書きましたが、私にとっても「手に入る入らないなんて考えたこともなくただ好き(または理想)でみているだけでテンションが上がる(もしくは心地よい)」という方面でのヒロインはたくさんいます。
主にファンタジーや時代もの、SF、サスペンスなんかで"戦うヒロイン"に心奪われています。
今月はこの方面のヒロインを除外してしまったので、来月にまたがって私の"あこがれ"を追求する記事を書きたいと思います。ご興味ありましたら覗いていただけると幸いです。(*^▽^*)