2024年8月のテーマ
「あんまり読む人いないかも…戯曲の本」
第二回は、
「夏の夜の夢」
ウィリアム・シェイクスピア 作、小田島雄志 訳、
白水uブックス、1983年発行
です。
白水uブックスではシェイクスピア全集を出していて、近所の図書館でおいてあるきちんとした(っていう言い方もどうかと思いますが、原作の通り戯曲の形で翻訳されている)シェイクスピアの作品は大体このシリーズです。
もっと新しい、あるいは別の出版社さんが出したシェイクスピア全集があろうかと思いますが、上記のような理由で私の読むシェイクスピアは白水uブックスの全集なのです。
さて、有名な作品ですので説明不要かもしれませんが、あらすじをば。
アテネの有力者・シューシュースがヒポリタという女性と結婚を間近に控えた日、シューシュースの元にとあるカップルが嘆願に訪れます。娘・ハーミアは父の決めた婚約者・ディミートリアスではなく、自らが愛する男性・ライサンダーと結婚したいので父を説得してくださいと。しかし、その場にいた父親やディミートリアス、シューシュースは"娘は父親の決めた相手と結婚するもの"との考えを曲げず、「ディミートリアスと結婚するか、一生純潔を守って独身で過ごすか、それが嫌なら親不孝の名のもとに死ぬかだ」と言い渡されてしまいます。
困った二人は駆け落ちすることにしてアテネ近郊の森で待ち合わせます。
この計画を聞いたディミートリアスに思いを寄せる女性・ヘレナがディミートリアスに告げたため、二組の男女が森へと向かいます。
一方森では妖精王のオーベロンとタイテーニアが夫婦げんかの真っ最中。何とかして妻に一泡吹かせてやりたいオーベロンがたまたま出会った男女の会話を聞いて策略を思いつき、いたずらな妖精パックに実行させるのですが、パックの勘違いで予想外の展開に。三組のカップルのすれ違いを描いた喜劇です。
私が初めてこの作品を知ったのは中学生の時に「ガラスの仮面」を読んだときです。主人公のマヤが舞台で妖精パックの役をやるんですよね。そのうちシェイクスピアの「夏の夜の夢」を読もうと思っていて、実際に読んだのは成人してからでした。
読んでみると漫画ではすごくすごく省略してあったんだなってわかりました。
そりゃそうだよね。
とにかく、登場人物が多い!
あらすじからは省いちゃったんですけど、劇中劇をするアテネの市民役者の集団も出てくるし、妖精たちもいるし…大体、誰が主人公なのかもあいまいで…。
また、喜劇だからわざとなのかもしれないけれど、言葉のチョイスがおかしいと感じる部分もいっぱいあって、読み始めた時には、私にはシェイクスピアの文学って理解できないかも…と思いました。
舞台はアテネなんだけど、時代はあやふやで、ヘラクレスのようなギリシャの英雄の名前が急に出てきたかと思うと、罵り言葉にダッタン女なんて出てきたりする。(ダッタン人とは中国の文献などに出てくるモンゴル人の呼称です。)
シューシュースのことをみんな"公爵"って呼ぶ。
アテネで公爵とはこれいかに?
つまりは、やっぱり、全部が喜劇になっているんだと最終的には納得しました。
吉本新喜劇みたいなもので、いちいち全部がネタになってるわけです。
あと、解説の部分を読むのが、この全集を読むときには楽しみの一つなんですけど、作品の制作年代やこれまでにどれくらい上演されたか、などのお話が載っていて興味深いです。
この本の解説では、「夏の夜の夢」が上流貴族の結婚のお祝いに上演されたのち、劇場でも上演されるようになったとみられているとあり、おめでたい席で演じられる作品としては確かにぴったりの喜劇かもしれないなと再び納得。
最後に、この作品ではシェイクスピアの時代には女性の地位が低かったんだなあ…と感じる台詞がちらほら出てきます。
妖精王のオーベロンとテイターニアは対等な力関係のようですが、オーベロンはそれに不満。自分のわがままを通したくて喧嘩になっている。
読んでいていい気分ではありませんでしたが、結局最後には大団円。
私が女性だからか、段々と威張ってる男性がちっちゃく見える現象も…。
登場人物の、少なくとも人間の女性陣にとって満足のいく結果となっているところに絶妙のバランス感覚を感じました。
男性女性のどちらかにおもねるような内容では、結婚式という場ではふさわしくないですもんね。
というわけで、シェイクスピアの本の紹介とは思えないようなことをいっぱい書いてしまいましたが、そんな風に読んでみてもええやん…てなわけでおすすめいたします。(*^▽^*)
