2024年5月のテーマ

「動物から学べる本」

 

第二回は、

「14歳の世渡り術 ボクたちに殺されるいのち」

小林照幸 作、

河出書房新社、2010年発行

 

 

です。

 

ジュニア向けの本です。

一言でいうと、動物の命について考えさせられる本

今から14年前に出版されたもので、日本のペット事情について考える内容になっています。

ペットとして飼育される動物が増える一方で、飼育を放棄する飼い主もいて、捨てられた動物たちがその後どうなっていくのか、当時のデータではありますが、リアルに教えてくれます。

 

出版から14年後の今では、池の水を抜いて外来種を捕獲したり、芸能人が保護猫活動を支援するようなテレビ番組のおかげで、この本が書かれた頃よりは世間が外来種による生態系破壊や、捨てられたペットのその後のことについて認知し、関心を持つようになったと感じられます。

 

しかし、啓蒙活動としては進んで様々な活動が行われていても、ペットを捨てる人はいますし、生態系破壊を止めるまでには至っていません。一方で、生態系が破壊されるのを食い止めようと活動する人が増えたという点では大きな進歩だと思います。

 

14年前と今とを比較して、変わったところ、まだまだ変わっていないところを実感として感じられるので、それが一つ目のおすすめポイントです。

 

また、この本では、犬、猫、ウサギ、魚、爬虫類などのいわゆるペットについての話だけでなく、私たちが食べている食肉動物についての話も書いてあって、動物をかわいがることと動物の肉を食べること、両方の観点から命について考えさせられる内容になっています。

 

動物愛護をつきつめて考えていくと、必ず「動物を殺して食べるということは残酷ではないのか」という問題にぶち当たります。私個人としては、人間が動物である以上、食べる目的で動物の命をいただくのは自然の摂理の範疇だと思っています。もっというと、動物の皮で靴やかばんを作るのも、肉を食べる副産物としてであってほしいと願います。実際はそうではないでしょうが…。

 

でも、こんな風に思っていたとしても、私にも、肉料理を食べきれなくて残してしまうこともあれば、革製品の一つ二つは持っています。そのため、声高に「動物の命を軽んじるな」と唱えるのは後ろめたく感じてしまいます。

一方で、完全なベジタリアンには自分はなれないし、なりたいと思っていないことも感じています。

少なくとも、命をありがたくいただくという気持ちを忘れないようにしなくてはならないと思いました。

こうしたことについて、改めて自分の考えを整理してみれたことが、二つ目のおすすめポイントです。

 

ただね、お肉を食べることについて罪悪感やありがたみがあまり感じられないのって、それ以前にある動物の死というものが人間から遠くなっていることが一番の原因ではないかと思います。

同じように、ペットの飼育放棄についても、人間が動物の生と死に触れる機会が少なくなった結果、命について考えることが減ってしまったのが一因ともいえます。

 

本書において、作者は子供の頃からたくさんの動物を飼育し、死んでしまった動物を看取って、大人になってからは保健所での殺処分の実態を調べたりと生き物の生死にたくさん触れてきたことが書いてあります。

子供の頃から、生き物の生死について考えて、実際に動物に触れて考えてほしいと、中学生向けの本で訴えているのです。

そうすることが、将来ペットの命を軽んじる人を減らす方法だということなのでしょう。

 

出版から14年後の今、その頃中学生だった子たちが30手前になっています。そのことを考えると、作者の想いのいくばくかは世の中に届いていると感じられます。まだまだ道半ばというのが私としては正直なところですが。

 

 

誰しも動物愛護について深く考えた時には、「動物の命は軽いとまでは言わないけれど、動物愛護が行き過ぎるのもどうか(過激な反対運動で逆に人間を傷つけるような事件もあるので)」という葛藤は生じると思うのです。

でも、こういった難しい問題では、自分の考えを整理して立場を明確にするのは心理的に困難です。

嫌なことや難しいことは考えたくない…。自分の考えが周囲から批判を浴びるリスクだってあるかもしれない…。

結果的に無関心でいるのが一番安全だという心理が無意識に働くのではないかと思います。

しかし、自分の考えを整理して立場を明確にすることと、周囲に立場を表明することは別です。

考えることや感じることは自由だし、黙って自分の心にしまっておくこともできます。

自分が納得できていないことや言いたくないことは言わなくたっていい。

ただ、考えることを放棄するのは良くないと思うので、本を読んだ機会に自分の気持ちをじっくり考えてみてほしいと思いおすすめ本にしました。

動物の命について考える人が増えれば、ペットをきちんと飼育する人が増えることにもつながるのではないかと思いまして…。

 

ちなみに、我が家でも去年までハムスターを一匹、飼っていました。

繊細で気温の変化にも敏感な動物なので、ストレスにならないように、温度管理にも気を付けていましたが、飼い始めて二年半で亡くなってしまいました。

長生きするもので三年くらいと聞いていたので、寿命といえばそうかもしれませんが、もっと気を配ってあげていたらもう少し元気で長生きできたのかもとも思います。

自分がペットを亡くした後に読んだ本なので、余計に心に刺さったのかもしれません。

 

テレビ番組では、多くの色んな立場の人が一度に視聴するため、あまり踏み込んだことは言えない…ということもあります。昔に比べればペットの飼育放棄問題について知識が広まってはいますが、もう少し踏み込んで考えてみるには、テレビ番組の内容だけでは、私は物足りない気がします。

ジュニア向けの本で読みやすいので、いろんな世代の方に読んでもらいたいです。

おすすめいたします。(*^▽^*)