2024年5月のテーマ
「動物から学べる本」
第一回は、
「動物たちは何をしゃべっているのか?」
山極寿一・鈴木俊貴 作、
集英社、2023年発行
です。
ゴリラ研究の世界的権威である山極寿一さんと、シジュウカラに文法があることを発見した鳥の研究者である鈴木俊貴さんの対談をまとめた本になります。
山極寿一さんはゴリラの群れに入って間近でゴリラたちを観察した方で、私も知っていました。
一方の鈴木俊貴さんは長野の森に入ってシジュウカラを観察し続け、録音した鳴き声をもとに鳥たちが何を話しているのかを解明すべく研究を重ねた方だそうで、私はこの本を読んで初めてお名前を知りました。
そもそも、シジュウカラの文法を解明したという学術的発見を知らなかったので、本の帯に書いてある鈴木さんの紹介をよんで、興味をひかれました。
本の中での山極さんの言葉から、鈴木さんはテレビにもご出演されていたようなので、世の中の動きについていけていない自分を反省しつつ(割と興味ある分野のニュースなので知らなかったのは悔しい。)、シジュウカラが文法を使って話しているのをどうやって解明したのか詳しく知れるぞ~とワクワクしました。
お二方とも現場で直に動物を観察してこられただけあって、対談で披露されるエピソードの数々がとても面白いです。
一番印象に残ったエピソードは、手話を覚えたゴリラ・マイケルの話。
ほんの数行ふれてあるだけなんですが、人間がちょっとだけゴリラの心に触れられた事例なんじゃないかと思いました。
しかし、読み終わってみて本当に印象に残ったのは、そこではなかった。
いや、シジュウカラの文法の話は分かりやすく書いてあってそれも興味深かったんですが、後半に二人の動物学者(だと私は定義します!いろんな肩書をお持ちの方々ですが。)たちが意見を交わしている現代の人間社会の問題の方がためになったというか、面白かったです。
お二人は動物たちのコミュニケーションについていろんな知見を語り合います。
「人間のコミュニケーションの最大の特徴である言語を他の動物でも使えるのか?」という人間を上位の動物とした考え方ではなくて、ダンスや歌、しぐさなどがいかに表現豊かであるかというお話や、言語が発達しすぎた人間が失いつつある能力についても言及されています。
そして、最終的には言語に頼りすぎる弊害というようなことについても考察が進んでいきます。
私は言語というものにものすごく価値があると考えてきた(手話ができたり外国語を話せる人を本当に尊敬しています。文化交流のためには互いの言語を知るのは大事という考えからです。)人間なので、言語以外のコミュニケーション方法の重要性についてそこまで意識が向いていなかったことを反省するとともに、動物たちから学ぶべきものがたくさんあるということを改めて感じました。
動物について書いてある本、というよりは、動物たちのコミュニケーション方法から学んで人間のコミュニケーションについても考えていこうという本だと思います。
本を読むと、お二人ともほんっとに動物が好きなんだなあと感じます。語り手の熱量が感じられると本の内容がよく入ってくるため、私にとっては好ましいことです。
ちなみに、対談形式なので話し言葉で書いてあって読みやすいです。
おすすめいたします。(*^▽^*)