2024年3月のテーマ

「歴史上の人物が登場する漫画」

 

第三回は、

「ゴールデンカムイ」(全31巻)

野田サトル 作、

集英社、2015年~ 発行

 

 

 

です。

 

今年の一月に実写映画が公開されたばかりなので、皆様ご存じの作品かと思います。

念のため、あらすじを少し…。

日露戦争帰還兵の杉本佐一は戦死した幼馴染・寅次の妻、梅子の目の病気を治すための治療費を稼ごうと北海道で砂金を採っていたところ、アイヌの隠し金塊の話を聞いて埋蔵金を探し始める。

その金塊の隠し場所を知るアイヌの男はたった一人しかおらず、捕まって網走監獄に収監されているという。

獄中から外の仲間に金塊のありかを知らせる手がかりとして、男は囚人たちにそのヒントを隠した刺青を彫った。刺青は全員で1つの暗号になっており、刺青の囚人たちは金塊を狙う連中による移送の最中に脱獄して今では散り散りになっており、金塊を狙う杉本は刺青の囚人を追う中でアイヌの少女・アシリパ、刺青の脱獄囚の一人・白石由竹らと行動を共にすることになる。

 

この物語は、埋蔵金を探す冒険漫画ですが、北海道のアイヌの生活を詳しく描いてある一方で、狩猟料理の描写も多く、また刺青の囚人や他の登場人物のモデルとして実在した人物が多数登場します。

 

例えば、刺青の囚人の一人に韋駄天と呼ばれた俊足の犯罪者とその妻(この人も殺人犯だけど捕まっていない)が出てきますが、このようなカップルの凶悪犯罪者は1930年代にアメリカ中西部で強盗や殺人を繰り返した実在のカップル、ボニーとクライドがモチーフになっていると思われます。

この二人の犯罪者は、1967年製作のアメリカ映画「俺たちに明日はない」で映画化されて世の中に広く知られることとなりました。クエンティン・タランティーノ原案、オリバー・ストーン監督の1994年製作の映画「ナチュラル・ボーン・キラーズ」は凶悪犯罪を繰り返すカップルを主人公にした映画で、主人公の名前や時代こそ違いますが、ボニーとクライドを彷彿とさせる映画であることは間違いありません。

 

他にもたくさん実在の人物をモデルとしたキャラクターが登場しますが、私が今月テーマにしているのは"実在の人物をモデルとしたキャラクター"ではなく、"実在の人物が本人として登場する"漫画なので、この作品でいうならば土方歳三永倉新八です。

 

言わずと知れた新選組・鬼の副長・土方歳三が生きていたという設定で大暴れしてくれるところが私としては楽しいです。

幕末から明治を舞台にした作品ではしばしば"新選組の生き残り"が登場することがありますが、実在の有名な人となると大体が斎藤一という印象です。

「るろうに剣心」でも登場しますよね。

実際に生き残った新選組組長となると、斎藤一か永倉新八ぐらいしか選択肢がないので致しかたありません。

 

そこを、実際には死んでしまっている土方歳三を主要なキャラクターとして登場させているのが、面白い。

さらに金塊争奪戦の勢力を束ねる役どころとして、土方歳三はぴったりです。

明治の世になり、その間、無為な年月を重ねて生きてきた爺なのに、ギラギラと鋭いところがたまりません。

前に「燃えよ剣」の記事でちょっと書きましたが、「燃えよ剣」の土方歳三が好きな人には合うと思います。

 

 

いや、漫画を読み始めた最初は、ちょっと違和感あったんですけどね。

土方歳三が生きていて…っていう設定に。

まず、現役からすごいブランクがあるわけで、何がしたくて埋蔵金探しに参加しているかもよくわからないというのもあって、「これってどうなのかなあ。」と思いながら読み進めていったんですが、何度も登場するうちに"土方歳三らしさ"みたいなものを感じるようになって、「これはいいぞ。」に変わっていきました。

 

今回はテーマの観点から「ゴールデンカムイ」をおすすめしたいと思ったんですが、この漫画は他にも見どころが満載で、アイヌ文化へ興味を持たせてくれたり、有名な美術作品をオマージュした構図で描いてあるシーンがあったりと、エキサイティングな本筋以外のところでも楽しめる作品になっています。

 

ただ、女性の観点からすると、ちょっと下ネタが多いのと、血生臭さが生々しいと思います。実際にそれが原因で、私の周りでは挫折したという人もいます。許容範囲は人によって違いますので、ご注意ください。

私も正直、読んでいて平気ではない場面もありました。

 

しかし、それを上回る面白さがあったから最後まで読んだし、他の人にもおすすめしたいという気持ちになったわけです。

おすすめいたします。(*^▽^*)