2024年3月のテーマ

「歴史上の人物が登場する漫画」

 

第二回は、

「黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ」(全6巻)

藤田和日郎 作、

講談社、2022年~ 発行

 

 

 

 

 

 

 

です。

 

時はヴィクトリア朝ロンドン。スコットランドヤードの犯罪資料室"黒博物館"にゴシックホラー小説「フランケンシュタイン」の作者、メアリー・シェリーが訪れ、"赤いブーツ"の閲覧を希望します。

黒博物館の学芸員は有名な女流小説家の来訪に興味深々。"赤いブーツ"にまつわる事件の詳細をメアリー・シェリーが語る形で物語は進んでいきます。その物語とは、彼女が書いた小説「フランケンシュタイン」を彷彿とさせる恐ろしくも奇妙なもの…すなわち、凄腕暗殺者の体と死んだ農家の娘の頭をつなぎ合わせて蘇生させた女性"エルシィ"を、女王を暗殺から守るための人員として舞踏会に出られるようメアリーが教育するというものでした。

自身が書いた小説の"怪物"とそっくりなエルシィと対峙するメアリーは、自分の抱える心の闇や苦悩とも向き合うことになっていくのです。

 

この作品に登場する歴史上実在の人物は、"メアリー・シェリー"

小説「フランケンシュタイン」の生みの親で、当初は匿名でこの小説を発表。後に本名で出版した際に、こんな若い女性がこんなにも恐ろしい話を創作したのかと人々は驚いたと言います。(初版出版時に21歳。※ウィキペディアのメアリー・シェリーの項目で調べました。)

 

「黒博物館」はシリーズになっていて、「三日月よ、怪物と踊れ」は三作目にあたります。

一作目は全一巻、二作目は上下巻のボリュームなのに、この三作目は六冊の長編。

ストーリーもアクションも読みごたえ十分です。

 

藤田和日郎さんの漫画作品といえば、「うしおととら」「からくりサーカス」が私の知っているものになります。

でもどちらもちゃんと読んだことはない。

藤田和日郎さんの漫画として私が初めて読んだものがこの「三日月よ、怪物と踊れ」ということになるんですが、まーこれが、はまりました。

 

エルシィというキャラクターが"フランケンシュタイン"そのもので、全体としてゴシックホラーの雰囲気をまといつつも、"怪物"エルシィ vs. 暗殺者たち のバトル漫画になっています。

それでいて、ヴィクトリア朝時代に女性の立場が低かったこと、メアリーがそういう時代に本を出版した女性であったことをふまえて男尊女卑の世界で戦う女性の姿も描いています。

エルシィは、横暴な男性から身近な女性たちを救って感謝され、恐ろしい見た目をしていながらも周囲に受け入れられていきます。恐ろしいばかりのお話ではなくて、ほっこりしたり、時には笑っちゃうシーンも入っていて、読んでいて重くならないのが良いです。

その一方で、折に触れてメアリーが人生を振り返り、自分は"死"に呪われていると感じる場面もたくさんあって、「フランケンシュタイン」という物語を書くに至った女性の心情には、もしかしたら、こういった思いもあったのかもしれないなと感じさせられました。

ちなみに、漫画の中では、メアリーの生育環境や子供を何人も失ってしまったことなど、結構丁寧に描かれていて、彼女についてかなり掘り下げてあると思います。

 

私は「フランケンシュタイン」を本で読んだことはありません。しかし、映画になっているものを観たことがあるので、お話としては知っています。また、作者が若い女性であったということも知っていました。

この漫画を読んで、一度本で「フランケンシュタイン」を読んでみたいなという気持ちになりましたし、メアリー・シェリーという女性についてももっと知りたいと思いました。

 

「黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ」おすすめです。(*^▽^*)

 

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【訂正とお詫び】

記事投稿時、"黒博物館シリーズの一、二作目は一冊ずつ"と記述していましたが、二作目の「ゴーストアンドレディ」は上下巻の二冊でした。

記事を訂正するとともに、間違った情報を記述してしまったことをお詫びいたします。

申し訳ございませんでした。

(2024.3.22)

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