2023年7月のテーマ

「子供と一緒に読みたい児童書」

 

第三回は、

「ぽっぺん先生と笑うカモメ号」

舟崎克彦 著(絵も)、

筑摩書房 1976年発行

 

 

 

です。

 

画像は後に出版された岩波少年文庫のものです。

図書館などでは筑摩書房発行のハードカバーでお探しくださると見つかると思います。

(私が読んだことあるのはそっち。文庫の存在は初めて知りました。)

 

今月のテーマにちなんだ本を図書館で探していた時に見つけた懐かしい本です。

小学生の頃に学校の図書室で借りて何度も読んだ本で、今もタイトルをはっきり覚えています。

が、しかし、内容を全く覚えていない!

あんなに好きで何度も読んだ本なのに何でかわかりませんが、それが老化ってやつなのか…悲しいですがどうしても気になって再読してみました。

 

それを踏まえまして…独活大学(うどだいがく)生物学部の助教授である"ぽっぺん先生"がある日不思議な世界に迷い込む「ぽっぺん先生シリーズ」の一作となります。小学校の中・高学年向きのちょっと厚みのある本です。

私はシリーズだということを知らずにこの本だけを何度も読んでいたので、以降は、「ぽっぺん先生と笑うカモメ号」についてのみお話させていただきたいと思います。

 

あらすじは、大学助教授のぼっぺん先生が研究のために訪れた海辺のホテルで、何がどうなったのか気づけばおもちゃのヨットに乗って海を航海する羽目に陥ります。そこで出会ったカモメが言うには、生き物の楽園アルカ・ナイカ島を目指して流れに乗って進めばいいと…。帰りたいぽっぺん先生の前には奇妙な動物たちが入れ代わり立ち代わり現れて、不思議な航海の行く末はいかに…。

 

一言でいうと、「不思議の国のアリス」のようなお話です。

違うのは、主人公が大人だということ。

主人公が不思議な世界に迷い込んでしまう冒険のお話では、子供が主人公であることがほとんどだと思います。

大人一人で迷い込むというのはあんまり見たことない気がするのです。

(私が知らないだけかもしれません。)

大人が主人公で不思議な世界を冒険するお話といえば、「ドリトル先生シリーズ」が真っ先に思いつきますが、

 

 

ドリトル先生には動物の仲間たちがいますし、ドリトル先生の知恵で動物たちの問題を解決してあげたり、ピンチを切り抜けたりと、頼りになる存在です。

 

こう言っては申し訳ないですが、「ぽっぺん先生と笑うカモメ号」のぽっぺん先生は物語の中でドリトル先生というよりはアリスよりです。

運命に翻弄されるというか、先生の行動が問題の解決に結びつかないというか…。

大学の先生で、読者である子供たちよりはたくさんのことを知っているはずの主人公が、常識がなにも通じない世界に放り込まれて翻弄される様は何とも頼りない感じなのです。

同行者のカモメはいろいろと助言もしてくれますが、ぽっぺん先生はそれに逆らったり、わかっているけど誘惑に負けそうになったりと、大人なのに子供みたいで親近感がわきます。

何十年ぶりかに再読してみて、思い出したシーンもあれば、全く忘れていたシーンもありましたが、なぜ昔好きだったのか思い出してきました。

 

ユーモラスなキャラクターがたくさん登場するところはまさしく「不思議の国のアリス」。

大人なんだけど子供っぽさもあわせもつぽっぺん先生をなんだか応援したくなってしまう気持ち。

それから、"不思議の世界"に紛れ込む体験がちょっぴり怖いところ。

お話の魅力はもちろんのこと、小学生の私はこの表紙の絵が大好きでした。(作者の舟崎克彦さんが絵も描かれているそうで、物語の一場面です。)

 

シリーズということで、私自身、他の不思議の世界を冒険しているぽっぺん先生を読んでみたいです。

でもとりあえずは、自分が読んで大好きだったこの「ぽっぺん先生と笑うカモメ号」をおすすめしたいと思います。(*^▽^*)