2023年7月のテーマ

「子供と一緒に読みたい児童書」

 

第一回は、

「くまのパディントン」

マイケル・ボンド 作、松岡享子 訳、

ペギー・フォートナム 画、

福音館文庫 2002年発行

 

 

 

です。

 

1958年にイギリスで出版されて以来、全世界で3000万部以上を売り上げており、日本では1967年に福音館書店から初刊行されています。

あらすじは、以下の通り。

休暇で帰ってくる娘を迎えにパディントン駅に向かったブラウンさん夫婦が駅で見つけたのは一匹のクマ。よく見れば首から札を下げていて、そこには「どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします。」と書いてあります。彼は子供のクマで、"暗黒の地ペルー"から移民してきてイギリスについたばかりと言います。

夫人の強い希望で家族として一緒に暮らすことになったクマは、パディントンと名付けられます。

ブラウンさん夫婦と息子のジョナサン、娘のジュディ、そして家政婦のバードさんというイギリス人の家族が、人間の言葉を話し外国から来た一匹のクマの面倒を見ることになって巻き起こるハプニングの数々が楽しい作品です。

 

この作品の魅力は何といってもパディントンのキャラクターにあると思います。

パディントンは子供のクマでしかも外国から来たばかり。

生活のすべてが新しいこと、珍しいことでいっぱいです。思いもかけない発想や行動で周囲を驚かせますが、愛くるしい姿に素直な性格が周囲の人間たちと仲良くなれる秘訣だと思います。

マーマレードが好きで、青いコートに帽子、スーツケースを持っています。時々帽子の中にマーマレード付きのパンを隠していて食べます。お行儀良くしなくちゃ、とわかっているけれど色々失敗してしまうところがチャーミングなのです。

 

シリーズは15作あるようですが、私が読んだことあるのは10作目までです。

調べたところ、日本語訳されているのは13作目までのようでした。

パディントンにはペルーの老クマホームに入っている育ての親ルーシーおばさんがいるのですが、10作目でルーシーおばさんがイギリスに来るお話があったので、なんとなく物語のきりも良いし、10巻で完結なのかなーなんて私は思い込んでいました。

記事を書くということをきっかけに、調べてみたら新たに分かることがあるというのは、ブログやっててよかったなと思うことの一つです。

 

ちなみに、2014年には実写映画化されているので、そちらをご存じの方も多いのではないでしょうか。

私がこの本を初めて読んだのは子育て中のことで、なんで子供の頃にこの本に出会わなかったんだろうと思ったことを覚えています。

基本的にはパディントンが起こすハプニングが楽しいコメディなんですが、なんだか居心地が良くてあったかい気持ちになる本なんです。それはブラウンさん一家がパディントンのことを大好きだというのが作品から伝わってくるからだと思います。特に家政婦のバードさんは、普段から汚したり物を壊したりするパディントンには小言ばかり言っていますが、その実一番パディントンのことが好きで心配して気を配っています。

一方で、お隣のカリーさんは平和を乱すパディントンのことが嫌いで、いつもバトルになります。

そういう人物がいることは、物語をより面白くしていると思いますし、カリーさんも偏屈ではありますが悪い人ではなく、「あー、こういう気難しい人いるなあ。」という感じです。

実はクリスティーの作品には必ずと言っていいほどこのタイプのやかまし屋が出てくるので、私にとってはおなじみのキャラといってもいいかもしれません。

 

ここでちょっと横に逸れますが、実は私は学生時代に友達から誕生日プレゼントでパディントンの人形をもらったことがあります。身長12センチくらいの掌に載せられるサイズの人形で、棚の上にずっと飾っていました。何の人形なのか全く知らずに。ただかわいいクマの人形だなーという認識でした。例のコートと帽子をかぶっていることに気づいたのは本を読んでからなので、実に20年以上も正体を知らないまま大事に飾っていたというわけです。多分、贈ってくれた友達もパディントンというキャラクターだと知ってくれたわけではないと思います。そういう話は一切出なかったので。

しかし、読んでみてすごく好きになった本の主人公が、実はずっと以前に出会っていて、家(実家)にずっといたなんて、ちょっと運命を感じます。おおげさかな?

 

そんなわけで、居心地のいい児童書ということで、「くまのパディントン」をおすすめします。今回はいつも以上に個人的感情が入っている作品です。ご興味ありましたら、本でも映画でもチェックしてみてください。(*^▽^*)