2023年5月のテーマ
「衝撃を受けた第一巻」
第三回は、
「三体」
劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン) 作、
大森望、光吉さくら、ワン・チャイ 訳
立原透耶 監修
早川書房、2019年発行
です。
この本は、以前にもおすすめしているのですが、今月のテーマから言って私には外せない一冊なのです。
実は、先月のテーマ「はじまりの物語」で候補に挙げていたのですが、「以前に書いたしな~」と断念した作品でもあり、今月は外せないと思った次第です。
以下、以前の記事と重複部分もありますが、ご容赦ください。
「三体」三部作の第一部です。(近年同じ作者による「三体0(ゼロ) 球状閃電」という本が出ているので、三部作という定義が今どうなっているのかちょっとわからないところもありますが…。ちなみにこの新作、私はまだ読んでません。)
2015年にケン・リュウによる英訳版がアジア人初のヒューゴー賞を受賞して以来、世界中で読まれています。
あらすじを簡単にまとめるのは私にはとても難しいですが、三つの太陽を持つ異世界を舞台にしたVRゲーム"三体"に隠された謎を解き、その先にある真実を突き止めるまでのお話…といった感じでしょうか。
何せ登場人物が多いし時代も下っていくので、誰が主人公ということはなく、まさしくタイトルの「三体」を中心に物語が進んでいきます。
ミステリーの要素が強く、「"三体"とは何か?」という問いに対する答えがいったいどういう種類のものなのかも想像できなくて、作者のイマジネーションに圧倒されます。
世界中のSFファンをこれだけ魅了しているのですから、私がSFがあまり造詣が深くないことを差し引いても、この作品のすごさというのは圧倒的なんだと思います。
三部作全部読むのは長いですが、この第一部を読めば、"三体"と真っ向から対峙せざるを得なくなってしまうという点で、まず先月のテーマ「はじまりの物語」にふさわしいと思っています。
また、ここまで書いたことを読んでいただければ、この本が私の「衝撃を受けた第一巻」であることも明白だと感じていただけるのではないでしょうか。
私はこの本を読んでいる最中、"三体"の正体を色々考えてみていました。
「VRゲームの中に隠されているのは暗号で、世界規模の陰謀を暴くために必要なのではないか…」とか、「AIのような人間に作られた無機生命体がゲームの形をとって人類に何か知らせようとしているのかも…」とか、「VRゲームと見せかけて、本当に異世界とつながっているのではないか…」とか、拙いながらもSF的な展開の推理をしていたのです。
それでもどれもしっくりくるものではなく、少し読み進めては「いや、違う」となって、先が読めない暗中模索状態で読み進めていくしかありませんでした。
先が予想できない面白さを久しぶりに味わいましたし、SF小説ならではのスケールの大きさや自由な発想に驚愕した一冊でした。
というわけで、「三体」を再びおすすめいたします。(*^▽^*)