2023年5月のテーマ

「衝撃を受けた第一巻」

 

第一回は、

「秘曲 笑傲江湖<一>殺戮の序曲」

金庸 著、岡崎由美 監修、小島瑞紀 訳、

徳間文庫 2007年発行

 

 

です。

 

 

です。

 

検索してみたら、新版も出ているみたいです。

 

 

 

金庸(きんよう)さんは中華圏で絶大な人気を誇る小説家です。

武侠小説の作家さんなのですが、武侠小説をわかりやすく言えば、"カンフーファンタジー小説"という感じでしょうか。

以前の記事でも金庸さんの小説をおすすめしているので、よろしければ、そちらもご覧ください。

 

 

彼の書く武侠小説は、強者たちが敵味方入り乱れて戦う熱い展開に、まさに血沸き肉躍る高揚感が沸き上がります。

 

そんな金庸さんの小説の中でも読者の人気が高いものの一つがこの「秘曲 笑傲江湖(ひきょく しょうごうこうこ)」だそうです。

私が金庸さんの小説で一番初めに読んだのもこの作品です。

武侠小説を読むのは初めてでしたが、三国志や水滸伝などの歴史小説にはなじみがあったので、面白そうだなと手に取ってみたのが最初です。

 

あらすじは、福州で用心棒を家業とする<福威鏢局(ふくいひょうきょく)>に伝わる武道の秘伝書<辟邪剣譜(へきじゃけんぷ)>を狙う輩たちに一族を惨殺された林平之(りんへいし)。命を狙われ、<辟邪剣譜>も奪われた彼は復讐を誓って武林の名門・崋山派に弟子入りします。崋山派の一番弟子である令狐冲(れいこちゅう)は幻の楽譜といわれる<笑傲江湖(しょうごうこうこ)>を手に入れますが、こちらの秘伝書も狙われ…。二つの秘譜をめぐって武侠界で激しい争奪戦が繰り広げられます。

 

この第一巻の何が衝撃的だったかと言いますと、まず、事の起こりである<辟邪剣譜>奪取のために、林平之くんを追ってくる賊たちが恐ろしすぎる!

用心棒を家業とする家なので、腕の立つ男たちがゴロゴロいるのに、襲撃する側の方が圧倒的に強くて、みんな殺されていってしまう。林平之まくんはこの時点で"18,19くらいの少年"で、絵にかいたようなお坊ちゃん。

家の主である彼の父は<辟邪剣>を身につけてはいるものの、才能は平凡で全く歯が立たない。

そんな中、林平之くんの命を懸けた逃避行は緊張感があって、手に汗を握ります。

 

ところが、これだけひどい目にあって、復讐を心に誓い、武林の道に入った林平之くんが、途中から全然出てこなくなってしまうのです。なんで???

てっきり、これから林平之くんが修行して一族の仇と対決するというストーリーなんだと思っていた私は、そのうちまた彼の話に戻るだろうと思ってずっと読んでいたのですが、そのまま一巻は終わってしまい、二巻に入ってもそういった気配はありません。

むしろ途中から出てきた令狐冲くんが主人公だったみたい。

 

彼は大酒のみで豪放磊落(ごうほうらいらく)で、腕もたつし、女性にもモテます。

主人公として大変魅力的で、金庸さんの小説の登場人物の中でも特に人気のキャラクターだそうです。

それはそれでいいんですが、林平之くんの仇討ちはどうなった???

全部で七巻ある物語を読み進めながら、ずっと気になっていました。

その後の林平之くんがどうなったかは後程分かったのですが、私が想像してたのと全然違う形で登場してきたので、これまた衝撃でした。

というわけで、「秘曲 笑傲江湖」の第一巻は、主人公が思ってたんと違うかった!というのが私にとって一番衝撃的でした。

ストーリーの細かいところはもう忘れてしまっているのに、この驚きだけは未だに残っています。

 

金庸さんの武侠小説は恋愛あり、仇討ちあり、秘伝の巻物をめぐる争いあり、恐ろしい殺人技を使う強者がバンバン出てきて盛りだくさんです。

その中でも人気の高いこの「秘曲 笑傲江湖」、おすすめいたします。