2023年3月のテーマ

「花といえば…な本」

 

第二回は、

「胡蝶蘭殺人事件」

山村美紗 著、

新潮文庫 1990年発行

です。

 

山村美紗さんが創作した女性探偵の代表格、キャサリンシリーズの中編2作を収録した一冊です。

タイトルの「胡蝶蘭殺人事件」はキャサリンシリーズの代表作、もう一つは「宵桜殺人事件」で、こちらも"花"がテーマとなっているミステリーです。

題名に含まれている"花"の表現が、どちらも華やかで存在感のある雰囲気を出していて、主人公キャサリンのイメージにぴったり合っている感じがします。

 

「胡蝶蘭殺人事件」の方は、オーキッド・ハンター(新種の蘭を探して熱帯の奥地に分け入っていく採取家)と新種の蘭をめぐる殺人のお話で、交配から作られる新種があることや、蘭の花を育てる際は湿度や温度の管理がいかに大切かということ、そういった事情から蘭は高価な花であることがストーリーの中で無理なく説明されています。

ミステリーなので、そういった知識が謎解きに必要になってくるというのもあって、単なるお話を彩るアイテムというわけではないところが、いつもながら作者の腕前が光るところだと思います。

 

蘭とミステリーの組み合わせといえば、私の好きなコージーミステリーの

"お茶と探偵シリーズ"(ローラ・チャイルズ著)に、こんな作品があります。

 

「お茶と探偵8  ロンジン・ティーと天使のいる庭」

ローラ・チャイルズ 著、東野さやか 訳、

ランダムハウス講談社文庫、2009年発行

 

 

 

 

 

てっきり以前におすすめしていると思ってたんですが、まだだったみたいなので、こちらにもちょっと触れたいと思います。

こちらの作品でも蘭愛好家のオークションで珍種の蘭を競り落とした人物が殺されてしまい、動機に蘭が絡んでいるのでは?と思わせる演出の作品です。今回のおすすめのメインは「胡蝶蘭殺人事件」の方なので、内容には詳しく触れませんが、主人公のセオドシアが蘭の採取に向かったり、蘭の品評会イベント<オーキッド・ライツ>が催されたりと、こちらも物語にがっつりと蘭の花が絡んでいる作品になっています。

 

蘭はとても高価な花なので、ミステリーに登場する割合も高いのかもしれませんね。

 

私が子供の頃、アニメや漫画で何度か見た設定として、青いバラを作るというのが新種のバラを作り出している園芸家の夢で、その技術をめぐって殺人が…とか、陰謀が…とか、ありました。

新しく注目されている技術や物事なんかの流行が作品に反映されるというのは、物語に出てくる日常のアイテムが変化するというだけではなく、植物の分野でもあるのかなあと今回は思わされました。

 

もう一作の収録作「宵桜殺人事件」の方は、キャサリンが下宿に引っ越して張り込みまがいのことまでやってのけるという、キャサリンらしいと言えばらしいですし、事件にのめりんでの行動力がやりすぎだと思わなくもない…私にとってはちょっといつものキャサリンシリーズとは違う雰囲気を感じた作品でした。

 

"花"をタイトルに冠した殺人事件の作品は、山村美紗作品で他にもあるようですが、私は何といってもキャサリンシリーズが好きなので、この作品をおすすめしたいと思います。(*^▽^*)