2023年1月のテーマ
「観てほしい!海外アニメ」
第三回は、
「風が吹くとき」
1986年公開
です。
「風が吹くとき」は、イギリスの作家、レイモンド・ブリッグズが1982年に発表した漫画です。
その後イギリスでアニメーション映画化されました。
この作品では、イギリスの田舎町に住む仲の良い老夫婦のジムとヒルダの日常生活の変化を丁寧に描いています。
東西陣営の戦争が始まったことにより、政府は一般市民の生活についてのパンフレットを発行。二人はパンフレットに従って保存食を用意したり、シェルターの準備をしたりとできる限りの対策に取り組みます。そしてラジオからは核ミサイルが発射されたという放送が…。
広島や長崎に核兵器が落とされた時のことを描いた映画を観てきた日本人が、「風が吹くとき」を観ると、今までの映画とはちょっと違った感想が湧き出てくるのではないかと思います。
日本に核兵器が落とされたのは史実であり、映画を通して伝わってくるのは、その悲惨さと破壊力だと思います。ミサイル投下後の町は地獄絵図としか言いようもなく、生き残った人たちの壮絶な体験にも言葉を失います。
二度と使ってはいけない兵器、と観た人たちが感じる映画が、日本の映画だと思うのです。
イギリスのこの映画では、核兵器が一瞬にして町を破壊したり、大勢の人々が死んでしまったりといった凄惨な描写はありません。登場人物もほぼ老夫婦の二人だけ。
穏やかな生活に突然入りこんできた不穏な世相。
戦争がはじまり、欲しいものが出に入らない、食べ物も配給制、どんどん不自由になっていく生活。
そのことでイライラしたり、多少の口論が起こりますが、それでも夫婦は、互いを思いやりながらできる限り状況に対応しようとします。
真面目に政府のパンフレットを読んで、自分たちの力でできることを進めていく。
真面目で勤勉で人の好い老夫婦をじわじわと苦しめる"戦争"に不条理さを感じずにはいられません。
そして核ミサイルが発射されたという放送の後、二人はどうなってしまうのか…それはご自身の目で確かめていただきたいと思います。
絵がかわいらしく、描写としても凄惨なシーンはないですが、戦争の残酷さを十二分につたえる作品だと思います。
私は数年前の8月にテレビで放送していたのをたまたま目にして衝撃を受けました。
終戦の日が近づいてくると、毎年戦争関連の映画が放送されますが、その中には子供たちに戦争を知ってもらう趣旨のアニメーション作品もたくさんあります。
今この作品を探そうとしてもし難しければ、絵本もあるようですので、そちらで探されるのも一つの方法かと思います。
夫婦愛と戦争と…しみじみと色々考えさせられる作品です。おすすめいたします。(*^▽^*)