2023年1月のテーマ

 

「観てほしい!海外アニメ」

 

第二回は、

「神々の山嶺(いただき)」

2022年公開

 

 

 

 

です。

 

夢枕獏さん原作の小説を孤独のグルメの漫画家谷口ジローさんが漫画化したものが原作です。

それを、パトリック・インバート監督がアニメ化した、フランスのアニメーション映画になります。

前回の記事でちょっと触れたアニメ映画「ウルフウォーカー」の製作チームが7年かけて制作し、2017年に亡くなった原作漫画の谷口ジローさんも参加されていたそうです。

フランスでは大ヒットとなり、『第47回セザール賞』アニメーション映画賞を受賞しています。

 

この記事を書いている時点(2023年1月20日)ではアマゾンプライムで視聴が可能です。

 

あらすじはというと、「登山家のマロリーはエベレスト初登頂に成功したのか?」という登山史上の謎を追いながら、行方不明になっている孤高の日本人クライマー・羽生丈二をカメラマンの深町誠が探し、不可能とされている登山に挑むというお話。

 

主要な登場人物は全員日本人で、舞台も1980年代の日本。私は日本語吹き替え版で観たので、日本のアニメ映画だと思い込んでいました。

それくらい、作りこみが原作に忠実なんです。

漫画自体を読んだことがないので、ストーリーに割愛部分があるとか、ちょっとシーンが変えてあるとか、そういう部分での変更についてはわかりません。

言いたいのは、海外の監督が日本を舞台に映画を作ったときに、海外のイメージに合わせた日本になっていることってよくあるのに、それが全く感じられないとうことです。

街の看板や、日本家屋、ガレージの中、喫茶店でのふとした風景…そういうところに違和感を全く感じないので、すごいなと思います。

それから、登山家のお話なので、不可能への挑戦、挫折、命の危機、極限状態での精神など…なんというか、非常に個人の心の内をテーマにした映画だなと感じます。

行方不明の羽生の足取りを追う上で、深町は彼のことを調べるわけですが、それは彼の半生を辿っているのと同じで、段々と彼の中に深町自身が入りこんでいってしまっているように思えてきます。

英雄の生涯を辿り、実はこんな人間だったんじゃないかと、彼らのパーソナルな側面を描きだす映画はたくさんありますが、羽生は英雄ではなく一市民です。

普通の人間なんだけど、登山家としては普通に生きている一般市民からは理解できないような情熱をもっています。

観客は、主人公の深町と一緒に、羽生の情熱にあてられて魅了されてしまうのかもしれません。

 

登場人物はほぼおっさんばっかりで、ストーリーも決して華やかとは言えないと思います。

でも静かな熱い情熱が、極寒の雪山で燃える様は、見ごたえ十分です。

海外アニメとは思えないクオリティの日本描写と悲しくも熱い男の生きざまをぜひご堪能いただきたいと思います。

大人向けのアニメーション映画です。おすすめいたします。(*^▽^*)