2023年1月のテーマ

 

「観てほしい!海外アニメ」

 

第一回は、

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」

2014年公開(日本では2016年公開)

 

です。

 

アイルランドの映画監督トム・ムーアの作品で、アカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされています。

三部作の第二作目となり、第一作目の「ブレンダンとケルズの秘密」もアカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされています。2020年に三部作の三作目となる「ウルフウォーカー」を発表し、こちらも国際的に評価を得ています。

(出典:ウィキペディア)

 

私は三作とも観ていまして、第一作、第三作もおすすめしたいのですが、特にこの第二作目が好きです。

他の作品についてはいずれまた機会があれば書きたいと思います。

 

さて、あらすじですが、灯台守の父コナーと生まれつき言葉を話せない妹のシアーシャ、大型犬のクーと暮らす少年ベン

妹が生まれたころに母は姿を消し、父はすっかり気難しくなってしまっています。

そんな環境でベンも妹にきつい態度をとりがち。

そんななか、シアーシャが6歳の誕生日に箱にしまわれていたコートを見つけ、羽織ってみると彼女は白いアザラシに姿を変え、海を泳ぎまわることができるようになります。

実は兄妹の母はアイルランドの伝説の妖精セルキーだったのです。

シアーシャの様子に気づいた父は、娘を海に返したくないと思い、兄弟を街の祖母に預けてしまいます。

セルキーの力が目覚め始めたシアーシャと妹の変化に気づいた兄ベンの二人は家へ帰ろうと模索しますが、思いもかけない妨害や助けに翻弄されて迷ってしまいます。兄妹の冒険物語です。

 

この作品は、ファンタジーであり、冒険物語であり、家族の愛とすれ違いのお話です。

異種婚礼譚の常として、妖精セルキーの化身である妻(兄妹の母)は、しばらくはコナーと一緒に暮らしますが、やがてもといた場所へと帰っていった…というバックグラウンドがあり、残された家族のその後のお話なわけです。

 

簡単にセルキーの説明をしておきますと、スコットランドの離島地域に伝わる神話に登場する妖精で、普段はアザラシの姿をして海中で生活し、陸に上がるときは「アザラシの皮」を脱いで人間になるとされています。

日本の神話に出てくる羽衣天女のお話と似た、"脱いだアザラシの皮を島民が隠してしまい、海に戻れなくなったセルキーの女性を妻とする"といった伝承があるそうです。

 

父コナーは今もまだ妻を愛しており、喪失感に苛まれているようで、子供たちに愛情をかける余裕がありません。

ベンは犬のクーを友として寂しさを埋めている感じ。

シアーシャは話せないため孤独で、いつもおどおどしています。

アザラシの姿になって海を自由に泳ぎ回った彼女は本来の居場所を見つけのびのびとした姿を見せます。

しかし、コナーとしては「妻だけでなく娘まで失いたくない!」わけで、子供たちを海から遠ざけてしまいます。

正直、私からすると、「だったらもっと子供たちをかわいがってやってればよかったじゃん!身勝手だな!」と思いましたが、不器用な海の男ってことなのかもしれません。

この親子のすれ違いと妻(母)を慕うやり場のない気持ちが物語の根底にあって、閉塞感のようなものを作り上げています。

兄妹の冒険がここに風穴を開けて新しい風を吹き込んでゆくわけですが、父にたどり着く前に、まず子供たち二人の関係が少しずつ変わっていくところが丁寧に描かれていて、素敵だと思います。

 

それと、これはこの監督の他の作品にも言えることなんですが、絵本のようなかわいらしい絵柄でありながら、アートとしか思えない美しい映像表現のシーンがたくさんあるところが最大の魅力だと思います。

言葉で説明するのはとても難しくて伝わらないと思うので、これはもう観て感じていただくしかないんですが、とにかく美しいです。妖精だったり、神だったり、人外の不思議な存在をモチーフとした作品を作られているからかもしれませんが、不思議で美しいと感じられるシーンがこの作品の特徴です。

またタイトルにもあるように"海のうた"はとてもきれいです。

 

ストーリーとしてはシンプルなんだけど、見せ方・表現の仕方が独特で美しい作品。

それが「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」です。

まだ観たことないなという方、おすすめいたします。(*^▽^*)