2022年7月のテーマ
「興味が広がるかもな児童書」
第三回は、
「はたらく細胞」
清水茜 原作・絵、時海結以 文、
2021年発行、講談社 青い鳥文庫
です。
漫画が原作で、アニメ化され、派生作品もたくさん出ている人気作「はたらく細胞」の児童文庫小説版です。
私自身はアニメ版を観たことでこの作品を知ったのですが、はまりましたね~。
ちなみに原作の漫画は読んでいません。機会があったら読みたいと思っています。
まず、この小説のというよりは「はたらく細胞」について書きたいと思います。
人体の中に存在する数々の細胞、主に免疫機能を担う細胞を擬人化してその仕事を紹介しつつ擬人化した細胞目線のお話として読めるというのが面白い作品です。
お話の方もコメディチックにしてあって、登場人物の細胞たちが個性豊かなのもはまる理由の一つだと思います。
ストーリーがあるので主人公である細胞が仕事をする状況が頭に入ってきやすく、つまり、体がどんな状態のときにどの細胞が活性化してどんな役割を果たしているのかということが理解できるのがすごいと思います。
理科の生物で習うような内容なのに、わかりやすい!
おまけに面白い!
勉強のために漫画化してわかりやすくする、というのは今までにもあった手法だと思います。
伝記漫画然り。
日本の歴史、世界の歴史なんかのシリーズ。
博士と子供が実験したりタイムスリップしたり、海底や地層の下にもぐる冒険をしたり…教材の補助としてちょっとした漫画が載っていることもよくあります。
それらの漫画というのは"教育"や"学習"というのが第一目的で、あくまでその補助というスタンスのものだと思います。
だから盛り込む情報を厳選してあるし、イラストにもそこまでこだわっていない。
漫画としてクオリティが高いかどうかなんてあまり問題にしていない。
「はたらく細胞」はそもそもが学習目的で描かれている漫画ではないように思います。
いや、真相は知りませんよ。
でも漫画として、エンターテインメントとして面白く描かれていると思います。
だからファンがつくし、知的好奇心を抜きにしても読んでいて面白い。
そういう作品なんじゃないかと思います。
漫画の話ばかりになっていますが、ここから青い鳥文庫のお話に移ります。
私は基本的に原作主義者なんですが、今回は漫画ではなく青い鳥文庫でおすすめしようとしています。
その理由として、漫画は血生臭い描写が怖い、というお子さんもいるだろうし、あまり過激な描写の漫画はまだ子供には早いと判断される親御さんもいるだろうという気持ちがあります。
「はたらく細胞」は免疫細胞の活動をたくさん取り上げているので、「体内にばい菌が入ってきたときに白血球の仲間がそのばい菌を倒しているから体が病気にならない」というのが大前提。
そのうえでウイルスと闘ったり細菌と闘ったり、アレルゲンが入ってきたりと色々あるわけですが、当然戦闘シーンも多々あります。
体中に酸素を運ぶ赤血球のように戦わない細胞ももちろんたくさん出てきますが、免疫系の話だとどうしても血生臭い…。
絵も迫力があるので、怖くてトラウマになっちゃうお子さんもいるかもしれません。
最近ではアニメでも漫画でも戦闘シーンの描写が生々しかったりするので、免疫ができているお子さんも多いとは思いますが、その辺は個人差があると思います。
ちなみに青い鳥文庫の挿絵は漫画のページがそのまま挿絵になっています。小説版ではあんまり血がどばーな絵はないですが、気になる方は一度絵を確認してもらうといいかもしれません。
それから、アニメ版だと動きがあって見やすかったりもするのですが、細胞の名前など耳で覚えることになるので、大人はいいのですが、子供の場合は漢字が覚えられないということが出てくるかもしれません。
小説版だと字が目に焼き付くので字面が覚えられるというメリットもあります。
ただ、私としては、小説版だけでは物足りない…ということも付け加えておかなくてはなりません。
小説版に載っている話は三つしかないので、少なすぎる。
最終的にはアニメや漫画の方でもっとたくさんの話を読みたくなると思います。
「はたらく細胞」の世界への導入口として、小説というのも一つの選択肢としてありますよ、ということをお伝えしたかったわけです。
ちなみに、青い鳥文庫では、「星の王子さま」のような世界の名作のほかに、「はたらく細胞」のような人気作の小説版やオリジナルのジュニア小説など、いろんなジャンルの本が出ています。
本を読むのが楽しい、もっと長いお話を読んでみたい、というお子さんたちが、手軽にお小遣いで買える価格なのも魅力です。ハードカバーの児童書は高いですからね。
というわけで、おすすめいたします。(*^▽^*)