2022年2月のテーマ
「紅茶×ミステリーな本」
第一回は、
「セイロン亭の謎」
平岩弓枝 著、
新潮文庫、1994年発行
です。
平岩弓枝さんは1932年生まれ。脚本家であり小説家で、数々の文学賞を受賞されているのみならず、紫綬褒章、文化勲章をも受賞されている文学界の重鎮といっていい作家さんです。
代表作である時代小説「御宿かわせみ」シリーズは何度も映像化されていますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
私は平岩弓枝さんの作品はどちらかというと時代小説の方を読んでいて、それほどたくさん知っているわけではないのですが、この「セイロン亭の謎」は推理小説としてかなりの推し作品なのです。
まだ海外のコージーミステリーやクリスティーを読む前の若かりし頃に出会い、何度もの引っ越しや断捨離による蔵書の整理を潜り抜けて手元に残してある大好きな本です。
さて、あらすじはというと、キャスターで物書きの矢部は、神戸で紅茶の輸入業を営む高見沢家の取材をするが、その直後に高見沢家の女社長が侵入者に殺されてしまう。事件の前には中国語で「セイロン亭の秘密を知っているか」というメッセージが届いており、殺人事件の後にも不可解な事件が続くことになる。高見沢一族の一人、清一郎と学友だった縁で矢部は一族の秘密と殺人事件という謎に深くかかわっていくことになる・・・。というお話。
殺人事件はなぜ起きたのか?
"セイロン亭の秘密"とは何か?
なぜ中国語のメッセージだったのか?
ミステリーが盛りだくさんです。
割と淡々とした文章で進んでいくので、文からは盛り上げよう感がないにもかかわらず、先が気になって読んでしまう。
単に殺人犯を探すというだけではないので、引き付けられてしまうのかなーと思います。
現在からすると30年くらい前が舞台のお話なので、若い方には作中の神戸の洋館やしゃれたティーショップの描写が古臭く感じられるかもしれません。
が、この作品の魅力の一つは神戸の街の描写だったりします。元町駅近くのティーショップや高見沢家の所有する英国風の洋館、外人墓地なども出てきます。高見沢家が紅茶の輸入業をしているということで、紅茶の薀蓄も詰め込まれています。
この辺りが、後々コージーミステリーにはまることになった私のツボに入ったのでしょう。
また、主人公の矢部の実家が静岡県にある日本茶の老舗で、日本のお茶産業に関する知識も得られます。
そのうえ、紅茶や日本茶の歴史や知識が単なる飾りではなく、本筋の謎にも関わってきます。
お茶の歴史と一族の過去、それらが相まって現在の事件へとつながっていくストーリーは秀逸だと思います。
新潮文庫の裏表紙に作品概要を書いた文章が載っていますが、その締めくくりは"浪漫的(ロマンティック)ミステリー"となっています。
歴史ロマンあり、仄かな恋愛あり、まさしく"浪漫的ミステリー"。
今から30年前の小説ですが、面白いですよ。おすすめいたします。(*^▽^*)