2022年1月のテーマ
古典が楽しくなるかもな本
第二回は、
「五月女ケイ子のレッツ!!古事記」
五月女ケイ子 著、
講談社、2008年発行
です。
五月女ケイ子さんの漫画で古事記のアウトラインがわかる楽しい本です。
「古事記」は日本最古の書物とされています。
壬申の乱に勝利し、皇位を継承した天武天皇が、政策としてそれまで伝えられてきた伝承を稗田阿礼(ひえだのあれ)に集めさせるものの崩御。その後、太安万侶(おおのやすまろ)が稗田阿礼から聞き取った内容を文書化して書物にまとめたものが「古事記」です。
それまであった歴史書が、大化の改新(乙巳の変)で蘇我入鹿が討たれたことに憤慨した蘇我蝦夷が大邸宅に火をつけた際にともに失われたという経緯から、新しい国史の編纂が必要で、そのためにまず「古事記」が、後に「日本書紀」が編纂されたと言われています。
・・・とここまでが日本史で習う基礎知識。
ちなみに、天武天皇が命じたということに矛盾点があるとか、稗田阿礼は存在しなかったとかいう話もあるらしいので「古事記」には偽書説もあるそうです。
では、古事記の内容はというと、イザナキノミコト、イザナミノミコトによって日本という国が作られ多くの神が誕生した・・・とか、アマテラスオオミカミが天岩戸にこもって太陽が出なくなり、困った神々が岩戸の前で酒盛りをして天照大神を岩戸から誘い出した・・・とか、日本の国の成り立ちに関する伝承を含めた日本神話集といったところです。
「あー、その話聞いたことある。」というエピソードが満載。
でも、ざっくりなエピソードは知っていても、あくまでざっくりしか知らない、という方がほとんどではないでしょうか?
じゃあ、「古事記を読んでみようか」となったとして、やっぱり古典文学ってとっつきにくいんです。
今回の作品「五月女ケイ子のレッツ!!古事記」は内容をざっくり漫画で説明しているという点では確かに『ざっくり』なんですが、個々のエピソードをぶつ切りで紹介しているというよりは時系列で紹介してあって、トータルで「古事記」に書かれている日本の国の成り立ちの流れがすごくわかりやすくなっています。
また、五月女ケイ子さんの個性あふれる絵とコミカルな演出が頭に残りやすく、その点も「古事記」の内容を覚えるのには役立つと思います。
まず、内容が三部に分かれていて、第一部はいわゆる日本神話でイザナキ、イザナミの国生みから始まり神々が高天原で暮らしている時代のお話。アマテラスオオミカミの天岩戸伝説とか、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治した話とかが出てきます。地上と高天原ははっきり分かれていて、神々と人々は住み分けしています。(スサノオノミコトは例外)
第二部は主に地上の話で、オオナムジ(オオクニヌシノミコト)の国つくりのお話。オオナムジは地上に降りた神、スサノオの子孫です。有名なところでは因幡の白兎の伝説なんかがありますね。
第三部がオオナムジが作った国をアマテラスオオミカミの子孫に譲り渡す、天孫降臨と国譲りのお話。アマテラスの子孫ニニギノミコトがオオナムジから地上の国を譲り受けるまでのドタバタと、その後国を治めていったエピソードとなっています。有名な神話には、コノハナサクヤヒメとイワナガヒメのエピソードやウミサチヒコ、ヤマサチヒコ兄弟のお話があります。
全体の流れがわかりやすくていい、という以外にもこの作品で私が気に入っているのが、登場人物のキャラクター造詣です。
例えば、オオナムジは最初はメガネ男子。たくさんの兄たちにこき使われても文句を言わないおとなしくて優しいキャラクターになっています。
しかし、兄弟の陰謀によって二度死んでそのたびに母の愛で復活。復活するたびにたくましく強くなって、メガネは卒業。ムキムキになります。
その後たくさんの女性と結婚してたくさんの子孫を残します。
彼の母親が彼のことを作中で「オオちゃん」と呼んでおり、「オオちゃん」の呼び名で通してあるのも面白くて覚えやすいです。
アマテラスの髪形は輝く縦ロール、スサノオはバンカラ(古いですかね、、)に葉っぱをくわえてたりと、主要な登場人物それぞれに個性を出してあって楽しいです。
時系列でエピソードが紹介してある、と書きましたが、伝説なので時系列といっても大雑把に大体この頃の話と分類してあるだけです。
主要なエピソードの他にもたくさんのエピソードがまとめられていますし、ページの下部に作者と古事記に詳しい「オロチ博士」の雑談が載っており、場面の解説や作者のこだわりなんかが垣間見られます。
というわけで、「五月女ケイ子のレッツ!!古事記」おすすめです。文庫版もあるようなので、下に貼っておきますね。(*^▽^*)