2021年6月のテーマ
「子供と一緒に読みたい児童書」(第四弾)
第三回は、
「としょかんライオン」
ミシェル・ヌードセン 作、ケビン・ホークス 絵、福本友美子 訳
岩崎書店、2007年発行
です。
この本が出版された頃、テレビの情報番組でも取り上げられていたと記憶しているので、読んだことがあるかはさておき、知っているもしくはタイトルを聞いたことがあるという方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
私もわりと早くからこの本の存在は知っていたけれど、実際に読んでみたのは何年もたってからのことでした。
ある日、図書館にライオンが入ってきます。図書館が気に入り、毎日やってくるようになります。おとなしいライオンは利用者たちの人気者になり、図書館の仕事をお手伝いしたりもします。そして、その先は…実際に読んでほしいです。
この本が名作といわれる所以と同じかどうかはわかりませんが、私がおすすめしたいと思った理由は一つではありませんでした。
ちょっとネタバレを含むかもしれませんが、その理由を書いてみたいと思います。
まず、図書館がライオンを受け入れているところ。
ライオンは字が読めませんから、本が目的で来ているわけではありません。
居心地がいいとか、子供向けのおはなし会を聞くのが楽しいから図書館に通っているのです。
それって、図書館が「本を読む人たちだけのための施設」じゃないということを言っているのだと思います。
誰が利用したっていいんだよ。居場所を提供することができるよ。
というメッセージが込められている気がするのです。
それから、ルールを守ることについて教えているところ。
本を読まなくてもかまわないし、誰が利用したってオッケー。
でも、図書館は静かに本を楽しむ施設であり、何をしたっていいわけではない。
図書館を利用する者は図書館のルールを守らなくてはいけません。
けれども、ルールというものは大勢の人が快適に過ごすためにあるもの。
何事にも例外はあり、必要な場合はルールを破ることもあったっていいんだということも含めて教えてくれています。
最後に、間違ったことをしたと気づいたなら、自分の行動で間違いを正すことができると勇気づけてくれているところ。
自分が間違っていた、うかつにも人を傷つけてしまった、と気づいた某登場人物が、自分から行動して状況を修復しようとする場面があります。
某登場人物は、悪意があってやったわけではないし、わざとやったわけではないのですが、それでも自分は間違っていたと気づきます。
そして、相手に対して直接「ごめんなさい。」と謝るのではなく、さりげなく元に戻れるように促しています。
謝らないことに対しては、読んだ人によって賛否両論あると思いますが、私はこの絵本の場合はこの解決方法がスマートだったと感じました。お互いに気まずい思いを残さないで元に戻れたということで。
悪意はなかった、わざとじゃなかった、それでも人を傷つけることはあるし、大きなトラブルに発展することもある。
子供たちが他人とかかわっていく中で何度も経験していく身近な課題だと思います。
小さな幼児の頃は、保護者がそばについていて、悪いことをしたら謝るということを経験の中で教えていくものだと思いますし、その時には、「ごめんね。」といわれたら、「いいよ。」と許すように促すことが多いと思います。
でも大きくなっていくにつれて、そんなに単純じゃなくなってくる。
「謝る」という行為はしてしまったことを帳消しにするわけではないとだんだんわかってきます。
だから、行動することによって自分の間違いを正そうとした登場人物の姿は、読者に一つのモデルとして刻み込まれるのではないかと思います。
この本は読み聞かせの本としてもいいですが、読み聞かせにしてはそこそこボリュームがあります。
といっても小学校低学年くらいからは一人で読めると思います。
読み聞かせして子供と楽しむのも良いですし、大人がひとりで読んでも感じるところがある本だと思います。
おすすめします。(*^▽^*)