2021年6月のテーマ
「子供と一緒に読みたい児童書」(第四弾)
第二回は、
「100歳のジャーナリストからきみへ【学ぶ】」
むのたけじ、菅聖子 作、
汐文社、2015年発行
です。
2015年で100歳になるむのたけじさんは戦争中に従軍記者としてインドネシアに赴き、その後ジャーナリストとして活躍された方だそうです。
新聞を発行したほか、本を書いたり講演会を行ったり、様々な活動をされてきたようです。
そのむのたけじさんが長年書き溜めた言葉から「学ぶ」ことに関するものを菅聖子さんがまとめて子供たちに向けて解説を加えたものがこの本です。
100歳のジャーナリストが子供たちに向けたメッセージとはどんなものなのか、興味がわいて手に取りました。
子供に向けた本ということもあり、ここに載っている言葉たちはシンプルで何も難しいことは言っていません。
でも、100年間いろんな経験をしてたくさんのことを見てきたむのさんが語る言葉というのは、説得力があります。
戦争も経験されており、戦地にも足を運んでおられます。
ジャーナリストという仕事をされていたので、社会の移り変わりや時代の流れというものを自分自身の生活から感じるだけでなく、もう少し大きな視点で見つめてこられた方だとも思います。
そのうえで語られている言葉だから、力強いのです。
ですので、例えばここに載っている言葉をそっくりそのまま私が自分の子供に語ったとしても、心には響かないだろうなと思います。
また、世代的なものもあると思います。
親の世代が子供世代にあれこれ言ってみたところで子供は反発しますが、おじいちゃんおばあちゃん世代が相手だと、耳を傾けたりします。まあ、個人差がありますから、子供全体に当てはまるとは思いませんが…。
自分たちが知らない時代を知っている人、という感覚がそうさせるのではないかと個人的には思います。
この本のはじめの方に次の言葉があります。
『 こどもたちよ、
身につけてほしいものは、
自分が人間であることへの誇り。 』
人間はほかの動物に比べて大人になるまでの期間がとても長い。
その間にたくさんのことを学ぶ。
これが他の動物に比べて人類が賢い理由だ。
賢い人としての誇りを持ち、たくさん学びましょう。
…と解説があります。
子供に『学ぶ』ことの大切さを伝えたいと思ったときに、私なら「勉強しないと大人になってから困る」とか、「たくさん学ぶことは楽しい」とか、そういうことしか言えません。
『学ぶ』ことが"人間としての誇り"だなんて、壮大な理由は思いつかなかった。
他にも、大人が読んでハッとさせられる言葉がたくさんあります。
ただし、この本はあくまで子供に向けて語りかけられた本なので、"子供たち"のやる気を刺激する言葉に満ちています。
大人が自分に向けられた言葉として読むと、「そうはいってももうそんなに長い目でみて頑張れないよ」とか、「頑張れば結果が出る?結果が出たと感じられないのは自分が頑張れていないから?」なんてことを考えてしまったりします。(全部自分の話で申し訳ありません。)
私は自分がネガティブ思考の人間ですので、本からポジティブな言葉をもらって自分のネガティブ感情を抑えようとするところがあり、この本を読むときにも、自分にポジティブな言葉をチャージしてほしいという気持ちがどこかにありました。
もちろん、大人が読んでもポジティブな気持ちになれると思いますが、私はどこかねじくれた気持ちで読んでしまったのです。
多分、もう人生も半ばかなと感じている大人としての焦りがあったんだと思います。
ですが、自分に向けられた言葉ではなく、子供たちに向けられた言葉として読み返してみると、こんなにいいことはなかなか言えないと思いました。
長い人生のまだはじめの方を歩いている子供たちにとって座右の銘になるような言葉が詰まった本です。
ちなみに、この「100歳のジャーナリストからきみへ」という本はシリーズで5冊あります。
私はそのうちの【学ぶ】と【生きる】を読みました。
【生きる】もよかったんですが、私的にはこの【学ぶ】の方が刺さった言葉が多かったのでこちらを記事にさせていただきました。
読み聞かせる部類の本ではないですが、お子さんと一緒に大人の皆さんも読んでいただきたい本です。
おすすめいたします。(*^▽^*)