さて、五月の閑話休題です。

 

2021年5月のテーマ

「意外とはまる!哲学の本」

でおすすめしてまいりました。

 

昨今、"自分で考えられる子供"を育てるにはどう接すればいいか、というようなテーマの本がたくさんあります。

その中には哲学を取り入れたものも多くあります。

学問としての哲学ではなく、優しい言葉で他人とのコミュニケーションの取り方から世界の神秘まで、子供自身が考えて自分なりの答えを出すことを"哲学"としている本たちです。

私自身が育児中ということもあり、そういった本に目が向いてしまいます。

そして、そういう本を読むと、哲学が「難解でとっつきにくいもの」から「身近で大切なもの」に感じられるようになるから不思議です。

そういった感覚を私以外の人にも感じてもらえたらと思って、こういうテーマを立ち上げた次第です。

興味を持っていただけたなら幸いです。

 

さて、今回のテーマ、「<日本のクリスティー>作品を初めて読んでみた」の話題に移りたいと思います。

まず、かつて<日本のクリスティー>と呼ばれた作家さんをご存じでしょうか?

そう。ミステリーの女王、山村美紗さんです。

彼女は1996年に執筆中に亡くなっていますが、ものすごい多作で、私が若い頃は書店や駅のキオスクで山村美紗さんの本を目にしないことはありませんでした。

それだけでなく、<山村美紗サスペンス>と銘打った2時間ドラマが今でもテレビで放送されています。

ドラマがたくさん作られていたのはもう二十何年も前のことになりますが、私なんかは片平なぎささん主演の<赤い霊柩車シリーズ>あたりをよく観ていました。

しかしながら、本で読んだことはこれまで一度もなかったのです。

 

山村美紗さん全盛期の頃に私はまだ十代で、山村美紗さんの本は私にとって「大人のミステリー」だったので、テレビでドラマを観ることはあっても、本で買って読むことはありませんでした。

仮に読んだとしても、その頃は彼女の作品のヒロインたちに年齢が追い付いていないので、作品の面白さがわからなかったかもしれません。

また、クリスティーにはまったのが二十代後半くらいなので、<日本のクリスティー>というフレーズもそれまでは私のアンテナに引っかかるものではなかったのです。

 

ところが、先日プレゼントでもらった本を読んで、一気に山村美紗さんの作品に興味がわいたのです。

それがこの本。

 

 

 

取材に基づいて山村美紗さんの生涯を辿った本でした。

この本の中で、あれだけたくさんのミステリーを世に出し続けた山村美紗の本が、今、書店から消えてしまった、ということが書いてあり、衝撃を受けました。

電子書籍では出ているし、<山村美紗サスペンス>のドラマも再放送はあります。

ゲームの原作にもなっているそうですが、紙の本として書店に並んでいないというのです。

 

びっくりして本屋さんや図書館で探してみました。

確かにありませんでした。

書店はともかく、近所の図書館を二か所回りましたが、どちらにもなかった。

私には衝撃で、何とかして山村美紗作品を読んでやろうと思って探しました。

(リサイクルストアに行けばあるだろうけれど、今回に限ってそれは最後の手段でした。)

 

で、図書館で<大活字シリーズ>の中にようやく見つけて借りました。

この<大活字シリーズ>というのは、「社会福祉法人 埼玉福祉会」というところが出版していて、小さい字では本が読みづらいという方に向けて、名作の文庫本などを底本に大活字で本にしたというものです。

発行数は限定500部。

シリーズには、池波正太郎、松本清張、司馬遼太郎などの人気作家の作品がありました。

そこに山村美紗の作品が一つだけあったので、無事借りられた次第です。

(たくさん部数を出版していたはずの文庫本では見つからなくて、500部限定出版の本で見つかったとは奇跡。)

 

作品名は『鳥獣の寺』

赤い霊柩車やキャサリンなどのシリーズ作品ではなく、クリスティーでいうところのノンシリーズの作品でしたが、次から次へと謎が深まって、怒涛の展開。しかも京都のお寺の解説がこれでもかと入っていて、今私が良く読んでいるコージーミステリーと通じるなと思うところもありました。

正直に面白かったです。

 

今のところこの作品しか読んでいないので、これだけで山村美紗さんの作品について語るのはおこがましいですが、私が読んだ作品のクオリティの高さ、その上あれだけ多作のミステリーを生み出していて、しかも非常に売れた作家ならば、<日本のクリスティー>と呼ばれても納得です。

 

その彼女の作品が書店にないとはどういうこと!?というのが正直な気持ちです。

 

主人公が妙齢の女性の作品が多数ですし、京都の観光名所からマイナーなお寺、食べ物や風俗まで、作品を通じて京都の魅力を伝えているところも海外のコージーミステリーと共通するところです。

現在も需要があると思うんだけどなあ…。

不思議です。

 

書店にないとなれば、山村美紗さんの小説を読んだことない方も今や大勢いらっしゃるということですよね。

名前を聞いただけでミステリー作家だと知っている方はまだまだ大勢いらっしゃると思います。

山村美紗さんは何よりも小説を書くことに打ち込んだ作家さんのようです。

電子書籍だろうと、中古本だろうと構わない。

私も含めて、活字での山村美紗作品を味わってみようではありませんか。

 

さて、来月は、

2021年6月のテーマ

「子供と一緒に読みたい児童書」

…多分第三弾です。

夏休み直前ではないですし、これまでと違って子供と一緒にページをめくって読み聞かせるという種類の本ばかりではありませんが、ご興味ありましたら覗いてください。(*^▽^*)