2021年5月のテーマ
「意外とはまる!哲学の本」
第一回は、
「子供の哲学」
河野哲也・土屋陽介・村瀬智之・神戸和佳子 著、
毎日新聞出版社 2015年発行
です。
この本の紹介をする前に、まず、『哲学』とは何ぞや?ということについて軽く書きたいと思います。
検索して調べたところ、
人生・世界、事物の根源の在り方・原理を理性によって求めようとする学問。また、経験から作り上げた人生観。
オックスフォード辞典(Oxford Language)より
とありました。
哲学ってどういうものかな?よくわからないな?
という人が、この説明を読んでピンときた!というふうには多分ならないと思います。
今回ご紹介する本の目次を読んで、「こういう問いについて考えることだよ」と言われた方がはるかに分かりやすいと私は思います。
というわけで、今回ご紹介するこの本ですが、小学生が実際に考えた問いに対して、哲学者四人がそれぞれの意見を出し合い、子供と一緒に考えていく、という趣旨の本です。
先程ちょっと言及した目次に並んでいるのは小学生が考えた問いの数々です。
例えば、
・「ふつう」って何?
・何のために学校はあるの?
・人は死んだらどうなるの?
といった問いがずらーっと並んでいます。
その一つ一つに対して、四人のうち三人の哲学者がそれぞれ別の視点で各々の考えを述べていきます。
残り一人の哲学者がそれぞれの意見をわかりやすくまとめて、問を投げかけた子供自身に、「君はどう思うかな?」という形で締めくくります。
つまり、三人の哲学者は問題をいろんな角度から眺めるお手伝いをするけれど、どの意見が正しいかと決めることはしません。
答えは、その問いを考えた人の中で決めることだという姿勢を取っているのです。
世の中、正解がないことがたくさんあります。
誰にも正解がわからない問題もたくさんあります。
そういった問いについて、とことん考えて自分なりに何らかの答えを出そうとするのが『哲学』なのではないかと私は解釈しています。
この本に載っている問いを子供から投げかけられたとして、自分なりにこたえられるか私には自信がありません。
なんでだろう?と一緒になって首をかしげたくなる類の問いばかりです。
三人の意見をそれぞれ読んでいると、なるほどと腑に落ちる意見があったり、問題の見方によって答えが全く変わっちゃうなということに気づかされたり、自分だったらこう思うかなと第四の意見を言いたくなったり、子供でなくとも考えさせられることが多かったです。
「子供の哲学」というタイトルの通り、子供たちに"自分の頭で考える"ことの大切さや楽しさを教えてくれる本ですが、大人にだってそれは必要なことだと思います。
子供向けの本なので、優しい言葉で説明してありますし、そこそこボリュームはありますが読みやすいです。
図書館ではティーンズ向けの棚に置いてありました。
子供と一緒に"考える力"を養うために読むもよし、童心にかえって素朴な疑問について考えてみるもよし、子供たちからこういった問いがぶつけられた時のために自らを鍛えるもよし。
子供に読んでもらいたいと同時に、大人もはまれる哲学の本です。
おすすめします。(*^▽^*)