2021年4月のテーマ
「ちょっと深掘り」
第一回は、
「世界の神様 解剖図鑑」
平藤喜久子 著、
株式会社エクスナレッジ 2020年発行
です。
この本は、日本神話の神様を起点にして世界の様々な神話の神様の役割や能力などを紹介、比較しています。
神話学に基づいて、各神話の舞台だとか、どのようなタイプの神話なのかなど、分析してあるのも興味深いです。
似たタイプの神様が横並びで紹介されているので、広く浅くたくさんの神話について触れているなという感じです。
一見すると、今回のテーマ『ちょっと深掘り』とは逆のスタンスの本みたいですよね。
だって、一つの神話について深く掘り下げているのではなく、浅く広くたくさんの神話について触れている本なんですから。
ではなぜ、この本をこのテーマの第一回に選んだかというと、私が世界各地の神話については断片的なエピソードを知っている程度の知識しか持ち合わせていないからです。
例えば、日本神話についていえば、イザナキ、イザナミの国生みのエピソードや、死んでしまった妻イザナミを連れ戻しにイザナキが黄泉の国へと向かう話、天岩戸にアマテラスが隠れる話、スサノオのヤマタノオロチ退治の話、、、とエピソードはいくつか知っています。
でも、超有名なものだけ。
日本神話に登場する神様はもっともっと大勢いるのに、大半は名前もどんな神なのかも知りません。
それから、ギリシャ神話!
たくさん神様がいて、エピソードもたくさん知っているけど、ローマの神話と習合(ひとつにあわさった)したりしているので、訳が分からない。軍神アレスはマーズと一緒だし、マルスという名前も出てきます。美の女神はアフロディーテ、ビーナスで多分名前が違うだけで同じ神です。オリンポス12神というのが出てきたと思ったら、ティターン12神というのが出てきたり。大地の神はデメテル?ガイア?二つは別の神なのか同じ神の別名なのか?私の中ではこんがらがりまくりでした。
北欧神話に至っては、オーディン、トール、ロキくらいしか名前がわからない。
インド神話も神様の名前は知っていてもエピソードなんかはさっぱりです。ガネーシャが象の姿をしてるとか、シヴァが破壊の神だとか、その程度。
で、たまに、ちょっと興味あるな~と思っても、神話ってそもそもが歴史のように途切れなくつながっているものではないので、神話の本自体がまず逸話集になっていると思います。
始まりの時代だとか、神が人の世界を作った後の話だとか、大雑把な時間の流れが感じられる程度です。
なので、私の経験上、神話の本を一冊読んでもちっとも掘り下げられません。
「この神話はこういった基本概念で世界をとらえていて、こういう仕事をしている主な神様がいるよ」という基礎知識がないと、私の場合は新しい情報がうまく定着しませんでした。
そこで、この本の話に戻りますが、たくさんの神話について触れているがゆえに、各神話の世界観や神様の特徴の基本的な情報を簡潔に載せてくれています。神様の親子・兄弟関係や、呼び名が違うが同じ神とみなされているという情報も書いてあります。
神様の姿を描いた時の特徴なども解説してあります。
扱っている情報としては広く浅くだと思うのですが、スッキリまとめてあって、いろんな神話の神やエピソードを比較する形でまとめてあると、不思議と情報の吸収率が良く、結果として深掘りできたなーという感じなのです。
分かりやすくまとめてあった、ということなのでしょうね。
今の世の中、小説やゲーム、アニメ、ドラマなどのエンタメ作品の中には妖怪、化け物、神様、妖精…と様々な「人ではない」ものが登場します。それらの中には、神話や伝説に出てくる英雄やモンスターがベースになっているものが数多くあります。
映画「アベンジャーズ」のマイティ・ソーは北欧神話のトールそのもののキャラクターです。
神や悪魔や妖怪などを仲間にできた昔のゲーム「女神転生」ではたくさんの神話の神や怪物が登場していました。
自分が好きな作品の中で、神話がモチーフの登場人物が出てきたとき、「このキャラの原点は何かな?どっかで名前は聞いたことあるんだけどな~」なんて経験ある人多いと思います。
そこで興味がなくなれば、それまでですが、もしも興味があって掘り下げてみたいなーという気持ちになったら、まずこの本で大枠をつかんでから、個別に深掘りしていくといいんじゃないかなと思います。神様の名前から探せるように索引もついてますので。
一人一人の神様についての記述は非常に少ないです。
簡潔にまとめてあるので。
でも一人の神様に興味を持てば、その神が属する神話の世界にも多少は興味が出るのではないでしょうか。
神話の世界への入門編にして、深掘りの手助けをしてくれるのがこの本だと思っています。
おすすめします。(*^▽^*)