2020年7月のテーマ
ちょっと古典文学
第三回は、
「ハイジ(上)(下)」
ヨハンナ・シュピリ 作、上田真而子 訳
岩波少年文庫 2003年発行
です。
アニメ「アルプスの少女ハイジ」の原作です。
作者のヨハンナ・シュピリは医者の父と牧師の娘で詩人の母との間に生まれた女性で、40代になってから作家活動を始めた人だそうです。「ハイジ」は1880年、1881年に二部構成で続いて出版されました。作者が53歳、54歳のときです。
つい数年前にアニメの再放送をみてから、原作をちゃんと読んでみたいなと思って最近読んだ作品です。
まず、アニメはかなり忠実に原作のエピソードを丁寧に描いているという風に感じました。
ハイジの生き生きとした感じや、クララやロッテンマイヤーさんのキャラクターも本とアニメとで違和感がないのです。
じゃあ、本を読んで得るものって何だったかというと、アニメでは描かれていない大人たちの心情やエピソードです。
おんじがなぜ人嫌いで気難しいのか。
クララのお医者さんがアルムに来て癒されるエピソード。
大人にだって、過ちから心が傷ついてしまうこともあれば、悲しみを手放せなくて苦しむこともあります。
アニメでは子供たちの目線に立っているので、ハイジの周囲の大人たちの心情に関しては深く語られていません。
原作ではハイジによって大人たちの心が解放されていく様子が見られます。
また、原作ではキリスト教への回帰というテーマがあるというような批評を聞いたことがありますが、私が宗教心に薄いせいなのか、それほど宗教色を感じませんでした。
ハイジがクララのおばあさんからお祈りの大切さを学ぶくだりはありましたが、それを言ったら、「赤毛のアン」だってマリラにアンが同じように教えられていました。多分、キリスト教によって心が救われるというのは大人の登場人物たちのことなのでしょうが、私が読んで感じたのは、宗教によってというよりはハイジの純粋な心によって、大人たちは救われているんじゃないかな…ということです。
また、逆にアニメでは、本ではさらっと書かれているところをじっくり映像化されていることがわかりました。
アニメでヤギのユキをハイジが助けようとするエピソードは本にはありませんでしたし、ハイジがゼーゼマンさんに頼まれた水を外の水くみ場まで出向いて行って持ってきたシーンは本にはさらっとしか書かれていませんでした。
アニメと原作の違いを感じながら読んではみましたが、「ハイジ」はやはり面白い。
読んだ後、心がポカポカしてきました。
すっごく有名なお話であらすじはもう知っているという方でも、改めて読んでみると新たな発見があると思います。
おすすめです。(*^▽^*)