【訂正とお詫び】
私の記憶違いで作中に出てくる固有名詞が間違っていたので訂正させていただきました。
手元に本がなかったとはいえ、かなりあり得ない間違いだったので、反省することしきりです。
自分の情熱の発散のために細々とやっているブログですので、気楽さもありいい加減なところも多いですが、とんでもない間違いを犯さないよう気を引き締めてまいりたいと思います。
申し訳ございませんでした。
=======================================================================================
2020年4月のテーマ
初心者でも面白かったSFの本
第一回は
「銀河英雄伝説」
田中芳樹 作
創元SF文庫 2007年発行
です。
私が読んだのは徳間ノベルズの新書だったので、紹介したものとは版が違います。
また、ずいぶん昔に読んだもので、今手元にないこともあり、今回もネットで情報を補完しつつ書かせていただきます。
と、いうわけで早速検索してみたら、、、なんと4月6日(月)からNHKのEテレでアニメの放送開始!!!
なんてこったい、第一話を見逃してしまったよ…(T_T)
意図せず絶妙のタイミングでこの本をおすすめしようと思い立ったのは神の采配かもしれません。(おおげさ。)
しかし、NHKのアニメは昔私がレンタルビデオ屋さんで借りてみたものと絵が違うので、新しく作ったものなのでしょう。
昔見たアニメも小説を全編きちんとアニメ化されていて、ビデオにして60本(一本につき4話くらい収録されていたと思います。)くらいある大作でした。こちらもよかったですよ~。
余計な思い出話はさておき、本題に入ります。
移動中に本が手放せなくて、本を買いあさっていた時期がありました。
たまたまベストセラー小説として本屋さんで大々的にアピールしていた作品だったので、内容について何も知らないまま読んでみたのですが、バリバリのSF小説。そして戦争もの。たくさんの英雄たちが活躍する群像劇でした。
遠い未来、人類が宇宙進出している時代が舞台で、専制君主制国家の<帝国>と、そこから逃れて民主主義国家を発展させた<同盟>が互いの存亡をかけて戦争しているお話です。
後世の歴史家がこの戦争の意味を考えているかのような語り口調で進められていく様子が、歴史書みたいな雰囲気を出しているのも歴史小説が好きな私にとっては面白く感じられました。
たくさんの登場人物が織りなすスペースオペラ(このような表現を私はこの作品で初めて聞きました)、なんですが、主な主人公は二人いて、<帝国>側の軍人であるラインハルト・フォン・ローエングラムと<同盟>側の軍人ヤン・ウェンリーの知力を尽くした戦いが最大の魅力といえます。
しかしながら、単に二人の軍略の天才による戦いが面白い小説かというとそれだけではないのです。
<帝国>は王侯貴族が贅沢をする一方で庶民は貧困にあえいでいる状態で、完全に国家として破綻しかかっています。ラインハルトは皇帝を倒して新国家を作るという野望を持ちながら、軍人としてのし上がっていきます。
一方の<同盟>も、政治の腐敗が進み、口先ばかり耳障りのいいことを言って民衆を扇動する政治家を中心とする勢力が力を持っている状態で、ヤン・ウェンリーは民主主義国家の行く末を憂いながらも、「民主主義」の理念を守り人々の自由を守るために職務を果たします。ヤン・ウェンリーは歴史家のような視点を持っている人物で、自ら政治に参加することを嫌い、政治の外側から自分にできる役割を果たそうとします。
個人的な意見ですが、「三国志」で例えるとラインハルトは曹操、ヤン・ウェンリーは孔明という感じですかね。ちなみに私はヤン・ウェンリー派です。(^o^)/ラインハルトは美貌の若者ですので、こちらもファンが多いことと思います。
話を戻しますが、両陣営とも大きな問題を抱えており、実は戦争以前に国内の問題を何とかしないといけない状態にまでなっているのです。
ラインハルトとヤン・ウェンリーはともに自国の状況を憂い、異なる主義主張の国家の中でそれぞれに解決策を模索しながら、一方では戦争が継続中。外敵とも戦わなければならないのです。
私は歴史小説が好きなので、単に二つの陣営が戦って名勝負を繰り広げるというお話よりも、この作品のように創作世界といえども政治的背景や歴史的意義にまで踏み込んで考えさせられるお話に魅力を感じます。
アニメの「機動戦士ガンダム」を初めてちゃんと観たのは大学生の頃でしたが、その時も単なるロボットアニメではなかったことを知り、衝撃を受けたものです。
「銀河英雄伝説」は、私にとってはガンダムとは比べ物にならないほど面白かったです。
ガンダムが主にいちパイロットの視線で描かれた戦争ものだったのに対して(他のキャラクターの葛藤も描かれていますが、あくまで銀河英雄伝説との比較においてです。)、「銀河英雄伝説」は国家や政治というものを真剣に考える立場のリーダー的な主人公を主軸に、戦艦の艦長、パイロットなどの兵卒、後方支援をする事務方まで、様々な立場の登場人物の目線に切り替えて物語が進んでいったことがその理由です。
私たちはみんな一人の個人として、自分の目線で物事を見ているわけで、そういう意味では、一人の主人公の目線で語られる物語というのは、入り込みやすいと思います。
一人の主人公の目線で語られる物語が悪いというわけではなくて、それはそれで自分とは違う主人公の人生を経験することにもなるので有益ですし、私自身こういう形式の本のほうが疲れないで読めるので好きです。
しかし、一人の目線というのは、物事を一方向から見るということなので、大勢の登場人物の目線から見るということに比べれば、視野が狭いということにもなってしまうのではないかと思います。
後世の歴史家がこの戦争をどう考えるか・・・というスタイルで描かれているので、「銀河英雄伝説」は客観的な分析やたくさんの登場人物の群像劇が盛り込まれているのだと思います。
私の感じとしては、三国志や水滸伝と共通しているものがあるな・・・と思っています。
(熱烈なファンの方も大勢いらっしゃると思いますが、『意見には個人差があります(by.さだまさし)』ということでご容赦願います。)
ガンダムの『なんでこんな戦争なんかするんだ』、『なぜ分かり合えないんだ』という主人公の葛藤や苦悩は戦争に対する大多数の人間の気持ちを代弁してくれているようで、それはまたそれで深いなと思うんですけどね。
随分と長くなってしまいましたが、スペースオペラと呼ぶにふさわしいSF戦争小説のこの作品、おすすめいたします。(*^▽^*)